[文書名] 2007 日中韓三国間協力進捗報告書
2003年の第5回日中韓首脳会議において採択された「日中韓三国間協力の促進に関する共同宣言」に従って、三国外相を長とする外相三者委員会は、年次首脳会議に三国間協力の進捗報告書を提出することとされている。
外相三者委員会は、最初の進捗報告書を2004年11月の第6回首脳会議に、2回目の進捗報告書を2007年1月の第7回首脳会議に提出した。本報告書は、関係省庁の支持を受けて編集した3回目の報告書であり、本年初頭の第7回首脳会議以降の様々な分野における進捗を対象としている。
Ⅰ
1.日中韓外相会議
日中韓外相会議は、2007年6月に韓国の済州において開催された。本外相会議は、他の多国間会議とは独立して開催された初の三ヵ国外相会議であり、三国は、本会議を定期的に開催していくことで合意した。
三国外相は、実質的な三国間協力の拡大、六者会合や北東アジア情勢を含む幅広い問題につき意見交換を行った。三国外相は、貿易と投資、環境保護、気候変動、文化及び人的交流等の分野における協力の拡大と促進について合意した。
さらに、三ヵ国外相は、六者会合の2005年9月19日の共同声明及び2007年2月13日の成果文書の早期実施に向け努力していくことで合意した。また、三ヵ国外相は、相互の信頼醸成に基づいた多国間の安全保障レジーム構築の重要性につき見解が一致し、北東アジアにおける平和と安全に係わるレジームに関する今後の議論につき引き続き協力していくことで合意した。
2.日中韓外交当局間高級事務レベル協議
日中韓外交当局間高級事務レベル協議は、2007年5月に中国の北京、2007年10月に韓国のソウルにおいて開催された。日中韓の外務審議官は、三国間協力が重要であるとの点で一致し、将来の方向性につき議論を行った。また、六者会合を含む北東アジアや他の地域情勢につき意見交換を行った。
同協議は、三国が相互の外交政策について理解を向上し、信頼を構築する機会となった。三者は、2007年の南北首脳会談開催を韓国及び北朝鮮の対話の深化を象徴するものとして歓迎し、南北関係の進展及び朝鮮半島の緊張緩和の重要性につき再確認した。
3.六者会合
2007年には、2つの重要な文書が採択され、朝鮮半島の非核化に向けて意義のある進展がはかられた。2007年2月の「共同声明の実施のための初期段階の措置」(2月13日成果文書)は、経済及びエネルギー支援と引き換えに北朝鮮による寧辺の核施設の活動停止及びすべての必要な監視と検証を行うためにIAEA要員の復帰を求めることを含む、初期段階の具体的措置を示した。
2007年10月の「共同声明の実施のための第2段階の措置」(10月3日成果文書)は、2005年9月の共同声明及び2月13日の成果文書の下で放棄される対象となるすべての既存の核施設の無能力化についての北朝鮮によるコミットメントを確認するとともに、経済、エネルギー及び人道支援を含む行動と並行して北朝鮮が年末までに寧辺の3つの主要な核施設の無能力化とすべての核計画の完全かつ正確な申告を行うことを表明した。
六者会合の参加国として、日中韓は、朝鮮半島の非核化を最終的に実現するため、六者会合のプロセスをさらに進めていくことで合意した。
Ⅱ
4.FTA
中国の国務院発展研究中心(DRC)、日本の総合研究開発機構(NIRA)及び韓国の対外経済政策研究院(KIEP)は、三国の政府関係者のオブザーバー参加を得て、2007年に日中韓FTAの可能性と見通しに関する三国間共同研究を継続して行った。共同研究には、中国の急激な経済成長による北東アジアの新しい貿易関係が反映された。
三研究機関は、2007年11月に、日中韓FTAが三国の経済に肯定的な影響とともに多くの課題を提示すると分析した共同報告書を提出した。
5.日中韓投資協定
三国は、2007年3月に日本の東京、同年8月に韓国の済州において日中韓投資協定交渉会合を開催した。これら会合において各国はそれぞれ投資協定草案を提出した。
第3回投資協定交渉は11月初旬に中国にて開催された。統合条文案に基づいて、三国は協定の一般原則、内国民待遇、知的財産権、紛争解決手続等について議論した。
6.ビジネス環境の改善
2004年以降、ビジネス環境改善協議の方途は9回にわたり議論されてきている。これら協議を通して、三国は法律と規則の透明性、知的財産権の保護、紛争解決手続きメカニズムについて定めるアクション・アジェンダを改善する必要性につきコンセンサスに至った。第8回協議の直後、三国は査証発行手続簡易化の協議のため、査証専門家会合を開催した。
第9回ビジネス環境改善協議は、11月初旬に中国において開催された。三者は、アクション・アジェンダの草案に査証専門家会合結果及び税務調査手続きの改善を追加し、同案の改訂を行った。
7.航空
2007年4月、中国と日本は、羽田(東京)-虹橋(上海)間の旅客チャーター便の開設に合意した。同月、中国と韓国は虹橋-金浦(ソウル)間の旅客チャーター便開設に合意した。羽田-虹橋間のチャーター便は9月29日に開始され、虹橋-金浦間のチャーター便は10月28日に開始した。
このようなチャーター便の開設は、各地間のフライト時間を短縮させることでそれが旅客にとっての利益となるだけでなく、関係国間の人的交流の増加及び財の貿易に寄与することとなる。さらに、チャーター便は各国を同一の日付で結ぶことを可能にした。
8.物流
2006年9月、三国は日中韓物流大臣会合において共同声明を採択した。2007年5月と3月に、三国間の局長及び課長級会合をそれぞれ開催した。会合では、三国は共同声明の実施及び安全かつ低廉で、シームレスな物流システムの構築を北東アジアにおいて推進していく方途につき議論を行った。
さらに、三国は、第2回日中韓物流大臣会合を2008年5月に日本の岡山にて開催することで合意した。
9.環境保護
第8回日中韓三ヵ国環境大臣会合の共同コミュニケに基づき、第1回及び第2回の日中韓三ヵ国黄砂局長会合が2007年3月に韓国のウルサン市において、2007年9月に日本の東京においてそれぞれ開催された。
これら2回の会合において、日中韓三ヵ国の局長は、黄砂共同研究に関する運営委員会の設置につき合意した。三ヵ国の局長は、2008年1月に日本の東京にて開催が予定されている三ヵ国環境大臣会合後の事務レベル会合の機会を捉えて、第1回運営委員会を開催することにつき合意した。
第8回日中韓三ヵ国環境大臣会合の共同コミュニケに基づき、三ヵ国の閣僚は、有害廃棄物の不法越境移動に対し、共同して取り組む努力をすることで合意した。2007年6月29日-30日、中国の北京において、日中韓三ヵ国E-wasteの輸出入管理に関するワークショップが開催され、E-wasteの不法越境移動取り締まりにつき三ヵ国間で協力を強化していくことについて合意した。
10.気候変動
第1回日中韓気候変動局長級政策協議は、2007年8月に韓国の済州にて開催された。三者は、国際的な気候変動レジームへの各国の立場につき意見交換し、気候変動問題への国内政策につき説明を行った。政策協議の有用性を認識し、本件協議を持ち回りで定期的に開催していくことで一致した。
さらに、三国は、シドニーにおけるAPEC首脳会議、国連気候変動に関するハイレベル会合、米の提唱によるエネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国会合を含む最近の、また今後の国際的な会合が2013年以降の気候変動レジームの将来の交渉に大きな影響を与えるであろうという点で一致した。
11.海洋ゴミ
海洋環境にとって大きな問題の一つである海洋ゴミ問題に対処するため、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の参加国である日中韓及びロシアは、2007年3月に日本の富山市にて開催された海洋ゴミに関するワークショップ及び6月に中国の日照市にて、9月に韓国の釜山市にて開催されたNOWPAP国際海岸クリーンアップキャンペーン(ICC)に参加した。各国は、海洋ゴミ問題に関する各国の政府と市民との協力事例について知見を共有した。日中韓は、海洋ゴミのモニタリングに関する協力を強化し、各国の経験や調査結果を共有すべきであるとの点で合意した。
日中韓の専門家は、2007年11月14-15日にソウルにて開催された「海洋政策フォーラム2007」の際に、海洋ゴミの管理問題につき意見交換を行った。
12.エネルギー
2007年1月の第7回首脳会議において三国首脳は、三ヵ国のエネルギー安全保障対話をさらに推進していくことで合意した。エネルギー分野における地域協力強化の必要性は2007年6月の三ヵ国外相会議において再確認された。
2回の会合における合意に基づいて、三国は、エネルギー安全保障対話の作業部会レベルにおける具体的実施方法につき外交ルートを通じて検討を行ってきている。
13.科学技術
第1回日中韓科学技術協力担当大臣会合は2007年1月に韓国において開催された。三大臣は三ヵ国間の科学技術協力に関する実質的な対話を行い、将来の三ヵ国間の科学技術協力についての基本的見解、三ヵ国間の専門家会合の開催、三ヵ国間の共同研究の発展と拡大を含む三ヵ国間協力の共同声明を採択した。
さらに、日中韓環黄海経済・技術交流会議は、2001年の開催以来、三国間の協力の推進に積極的な役割を果たしてきている。2007年11月末に第7回会議が日本で開催される。
14.情報通信
2007年に、日中韓情報通信大臣会合の合意に基づいて、第3世代及び次世代移動通信、次世代インターネット、RFID/センサーネットワーク、情報ネットワークセキュリティ、国際協力、オープンソース・ソフトウェア及び電気通信サービス政策の分野での局長級ワーキンググループ会合を開催した。
15.金融
2007年5月、第7回日中韓財務大臣会議が日本の京都において開催された。参加閣僚は、三国のマクロ経済情勢につき意見交換を行い、緊密な地域金融協力継続へのコミットメントにつき再確認した。また、参加閣僚は、域内における流動性支援の仕組みとしてより前進した枠組み(CMIのマルチ化あるいはポストCMI)に向けた検討に進捗があったことを歓迎し、CMIのマルチ化に向けた方法につき共同して探求する努力を強化していくことについて合意した。
参加閣僚は、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)を協力して更に進展させることで一致、ASEAN+3財務大臣プロセスにおける他の協力案件を促進し、域内の金融分野での結束をさらに向上させてより高いレベルに強化していくことに合意した。
三国からのあらゆるレベルの財務担当官が活発に交流し、緊密に協力した。
16.税関
第1回日中韓三ヵ国税関長会議が2007年4月に日本の東京で開催された。同会議において、三者は貿易安全保障及び円滑化の保護、地域的な経済成長の促進及び民間部門への品質サービスにおける税関の役割につき突っ込んだ議論を行った。また、特に執行及び知的財産保護の分野における三国間協力メカニズムの構築及び将来の協力強化につき合意に至った。
合意に基づき、三ヵ国の税関当局は知的財産の保護に関する第1回三ヵ国作業部会を2007年10月に日本において開催し、情報交換の促進及び権利者との協力を含むアクション・プランをまとめた。
17.治安
第1回日中韓治安関係高級実務者会合が、2007年6月にシンガポールにて開催された。
同会合は、第7回日中韓首脳会議において「三国間協力を要する犯罪分野での対応策に関する緊密な協力」の強化について合意されたこと等を踏まえ、治安当局の実務者間で緊密な意見交換を行うために開催した。
三国は、薬物犯罪やマネー・ローンダリング等の犯罪事象に関する情勢、施策、今後の取組み等について協議を行い、高級実務者会合を定期的に開催すること及びより高いレベルの会合の定期的開催に関する協議を継続することについて合意した。
18.保健
2007年4月、第1回日中韓保健大臣会合が韓国にて開催された。三国大臣は、「日中韓新型インフルエンザへの共同対応に関する覚書」に署名した。
参加閣僚は、臨床研究、伝統薬及び災害管理を含む緊急事態への準備と対応等の保健及び薬分野における協力を共同して促進するため「第1回日中韓保健大臣会合の共同声明」を発表した。
Ⅲ
19.文化シャトル事業
2007年6月、韓国の済州において、三国外相は、日中韓文化シャトル事業の推進に合意した。事業の推進は、2007年9月に中国の南通市にて開催された三ヵ国文化大臣会合の際に議論された。参加閣僚はまた、2008年の様々な分野における文化協力の今後の方向性につき議論を行った。
「日中韓映画祭」が文化シャトル事業として初のイベントとなった。三ヵ国の共同あるいは協力によって作成された映画が2007年10月の釜山国際映画祭にて上映された。
更に、今年10月、文化シャトル事業を記念し、第3回「日中韓文化交流フォーラム」が東京で開催された。
20.スポーツ
2007年には三国間で活発なスポーツ交流が行われた。中国にて2007年6月に日中韓A3サッカー・チャンピオンズカップが、2007年8月に第15回日中韓ジュニア交流競技会が開催された。
21.教育
第2回日中韓三国教育当局間局長級会合は、2007年4月に中国の北京において開催された。参加局長は、各国における教育の現状につき紹介し、三国間協力プログラムの進展につき意見交換を行った。さらに、三国間の教育協力強化のため第1回教育大臣会合の開催につき議論を行った。
22.人的交流
第5回日中韓次世代リーダーフォーラムは、政府、政治、ビジネス、学術、メディア、青少年団体等各界からの代表が参加し、慶州、大連、広島にて開催された。三国からの次世代リーダーは、三国間の発展及び協力の方途と将来のアジアのビジョンにつき紹介した。
23.外交・安保研究所間交流
2007年6月に、三国閣僚は中国の国際問題研究所(CIIS)、日本の国際問題研究所(JIIA)及び韓国の外交安保研究院(IFANS)の研究所間のフォーラム開催につき合意した。次回フォーラムは2008年5月あるいは6月に韓国のソウルにて開催されることが予定されている。
24.人事行政
2007年7月に中国の北京にて第3回日中韓人事行政機関長会合が開催された。三国は、人事制度改革の経験につき紹介し、協力のための10個の提案につき議論、一致した。本会合は、三ヵ国人事行政機関局長級会合における実施計画の策定を認定した。
Ⅳ
25.アジア地域協力
東アジア協力の重要な参加国として、日中韓は、ASEAN+3と東アジア首脳会議における十分な協調を維持してきた。三国はASEAN諸国と共に、ASEAN+3協力10周年を記念し、第11回ASEAN+3首脳会議に向けて東アジア協力に関する第2共同声明及び作業計画を作成するため共同して取り組んだ。
2007年1月にフィリピンのセブ島にて開催された第10回ASEAN+3首脳会議において、三国首脳は、ASEAN諸国と共に東アジア自由貿易地域(EAFTA)の詳細なセクター別分析を含むフェーズ2研究を開始することにつき合意した。
フェーズ2研究の第1回及び2回専門家会合は、2007年5月及び11月にそれぞれ開催された。これら会合では、財及びサービスの市場アクセス、投資、原産地規則、貿易と投資の円滑化及び開発協力につき議論が行われた。
2007年1月にフィリピンのセブ島にて開催された第2回東アジア首脳会議において、三国首脳は東アジア包括的経済連携(CEPEA)民間専門家研究会の開催に合意した。同研究会はこれまでに3回開催しており、2008年8月の報告書作成までに数回開催することを予定している。
地域協力強化の一環として、三国はASEAN諸国、オーストラリア、インド及びニュージーランドと共に第3回東アジア首脳会議に向けて気候変動、エネルギー及び環境に関するシンガポール宣言を作成するため積極的な役割を果たした。
東アジア協力を強化する重要な手段として、三国はASEAN+1プロセスにおける協力を継続して維持し、ASEAN諸国との関係をさらに発展させた。
三国はアジア太平洋経済協力(APEC)やASEAN地域フォーラム(ARF)を含む他の地域機構に積極的に参加し、また、地域における多国間主義の進展に寄与してきた。
Ⅴ
結論
三国は、三国首脳による2007年1月、第7回首脳会議の際の経済、貿易、航空、環境保護及び文化交流分野における合意を実施するため、最大限の努力を協調して行ってきた。2007年の三ヵ国高級実務者会合及び外相会議を通して、三国は、主要な国際問題につき相互の外交政策の理解を深め、信頼を醸成する機会を捉えてきた。
これら三国の努力は、三国間の協力の拡大及び深化に肯定的な役割を果たしてきており、三国が現在の協力の勢いを維持し、北東アジアの安定と発展の強化及び東アジアの平和と繁栄の確保のために協調して努力していくことが望ましいと考えられる。