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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中韓協力10周年を記念する共同声明

[場所] 
[年月日] 2009年10月10日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

日中韓協力10周年の際に、我々中華人民共和国、日本国、大韓民国の首脳は中国・北京において2009年10月10日に会談した。我々は過去の三国間協力の方向性を振り返り、将来の発展に向けた計画を策定した。

 我々は、1999年に三国間協力が立ち上がって以来、三か国の共通利益は継続して拡大し、対話のメカニズムはさらに進展し、各分野における協力は徐々に進展し有益な結果をもたらしたとの共通理解に達した。三か国は、未来志向の包括的協力のパートナーシップの設立を通じ、政治的信頼を強化してきた。三国間経済協力及び貿易・投資は活発に発展し、三か国は互いの重要な経済パートナーとなった。文化的及び人と人の交流はダイナミックで緊密であり、互いの国民の間の理解と友好を強化した。三か国は、開放性、透明性、包含性という原則に基づき、長期的目標として東アジア共同体の発展及び地域協力に引き続きコミットし、同時に地域・国際情勢に関する三国間の意思疎通及び協調の向上を維持した。

 我々は、過去10年間に起きたことは、日中韓協力を強化することが三か国及び国民の基本的利益に合致し、地域の平和、安定及び繁栄に貢献するとの共通の認識を表明した。この文脈で、三か国は日本国福岡で開催された第1回三か国サミットにおいて発表された「三国間パートナーシップに関する共同声明」の重要性を認識した。

 我々は、今後10年間、世界が大きく変わっていく中で、日中韓協力は発展に向けた重要な機会に遭遇すると確信する。我々は、三国間協力を戦略的観点から取り扱い、協力を常により高みに持って行くよう努める。

 我々は、互いの信頼、平等、共益、開放性、透明性、多様な文化を尊重することが三国間協力の基礎であり保証するものであることを信じた。これらは将来の三国間協力においても踏まえられるべきものであり、これらの原則は将来の三国間パートナーシップにおいてもフォローされるべきである。歴史を直視し未来に向かうとの精神の下、三か国は潜在性及び協力分野を探求する。我々は、三国間関係を善隣友好、相互信頼、包括的協力、相互利益、共同発展の方向で進める。そうした協力の進展が世界平和、安定及び繁栄に資するものと考える。

 これらを念頭に、我々は以下を行うことを決定した。

1.政治的相互信頼の強化。我々はハイレベルでの接触や三か国の戦略的対話を強化し、相互理解を促進し、共通分野を拡大し強固な戦略的相互信頼を構築する。我々は互いをウィン・ウィン協力のパートナーとみなす。我々は、互いの平和的発展を支援し、相手の発展を機会ととらえる。我々は互いの主要な懸案や関心事項を尊重する。我々は機微な問題を適切に扱い対話と協議による解決を目指す。我々は安全保障対話を強化し、三か国の防衛当局者又は軍当局者の間の交流及び協力を推進する。

2.共益協力の深化。我々は高い相互補完性と三か国の経済の高い潜在性を最大限に活用し、ビジネス、貿易、金融、投資、物流、知的財産、税関、情報、科学技術、省エネ、環境保護、循環型経済等主要分野における協力を高みに持って行く。我々は、グリーン経済の発展に向けた努力を強化し、経済発展の質を向上させ、いかなる形の貿易保護主義にも反対し、公平、自由で開放された国際貿易投資システムを支持する。我々は、モダリティーに関するものも含むこれまでの進展を基礎として、マンデートと整合的に2010年のドーハ開発ラウンド交渉において野心的でバランスのとれた結論を探求することを決意する。ASEAN+3、EAS、APEC、G20を含む既存のフォーラムを最大限活用し、我々はアジアと世界経済の回復と安定した発展に新鮮な活気を与え続ける。

3.人と人の交流の拡大。我々は三か国すべての分野における交流、特に友好的青少年交流や大学間交流を引き続き行う。我々は青少年及びメディア交流に関する長期的メカニズムを立ち上げることを検討し、学術機関や地方自治体を奨励し、防災、保健、観光、人材、教育、スポーツをはじめとする分野におけるより緊密な三国間協力を推進する。我々は平和と友好の精神を前に進め、互いの文化を尊重しつつ三か国国民の親近性を高め、三国間関係の安定的で健全な発展への支持を拡大する。

4.アジアの平和、安定、繁栄の推進。我々はASEAN統合や共同体構築、ASEAN+3、東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム、APECをはじめとする様々な地域的及びサブ地域的協力メカニズムを強化する。我々は、対話と協議にコミットし、引き続き平和的手段により朝鮮半島の非核化を追求する。我々は六者会合の早期再開に向け他の関係者と共同で取り組むとともに、北東アジアの平和と安定を維持するよう努力し、平和、調和的、開放的及び繁栄したアジアを構築する。

5.地球規模課題への積極的対応。我々は気候変動、金融危機、エネルギー安全保障、公衆衛生、自然災害、テロ、軍備管理、軍縮、不拡散、及び国連改革をはじめとする地域・国際問題に関する意思疎通と協議を強化する。我々は国際的な政治、経済、金融分野における改革に積極的に参加し、世界的平和、発展、繁栄に向けた他の国際社会に加わり不断に努力する。

 今後10年を見据え、我々は三国間パートナーシップと包括的協力の強化に向け絶対の自信と希望を持っている。我々は時節の呼びかけと三か国の発展に応じ、日中韓協力は三か国だけでなく世界に利益をもたらすという一層明るい未来を有していることを確信する。