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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中韓共同記者会見

[場所] 済州島
[年月日] 2010年5月30日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【鳩山総理】

 まずは、韓国国民の皆様に、韓国哨戒艦沈没事件において46名の尊い命が奪われ、お悔やみ申し上げたいと思います。このような厳しい状況の中、見事に日中韓サミットをリードし、会議を開催されている李大統領に心から感謝の意を表したいと思います。さらに、天国のようなすばらしい済州島において日中韓サミットが開催され、韓国の人々に温かいおもてなしを頂き、心から御礼申し上げたいと思います。

 日中韓協力は、10を越える分野で閣僚級協議等が開催されており、三国間協力がこのように進展していることは喜ばしいことだと思います。これは、三国が相互理解を促進し、ウィンウィンの関係を構築するだけでなく、東アジア全体にとって意義のあることだと思います。

 日中韓協力については、今回の会議において、今後の協力の方向を示す「VISION2020」等の文書が発表されたこともすばらしかっと思います。また、さらに三国間協力を推進するために、常設事務局の設置に関する文書を発表することもできました。李大統領の議事采配に改めて敬意を表したいと思います。

 私が提唱している東アジア共同体構想の下では、経済連携や人の交流などの分野で具体的な取り組みを進めていく所存です。この点、中国や韓国と密接に協力し、連携していきたいと思います。

 日中韓協力について、私より、貿易・投資、大学間交流、環境などの問題に言及しました。日中韓投資協定の早期実質合意、また、2012年までの日中韓FTA産官学共同研究の着実な実施は、三国間協力のよい方向を示すものであると思います。また、大学間交流を推進し、有識者会議での単位互換等を具体的に検討し、キャンパス・アジア構想の早期実現は、誠に喜ばしいものであると思います。

 会議においては、地域・国際情勢についても議論され、朝鮮半島情勢、気候変動、軍縮不拡散や国連改革について意見交換が行われました。私が冒頭申し上げた韓国哨戒艦沈没事件については、北東アジアの平和と安定に関わる深刻な問題であると三国間で認識できたと思います。今後、日中韓で緊密に連携していくことも確認し、これから、中国の温家宝総理が訪日されることも念頭に、引き続き連携したいと思います。また、核不拡散条約(NPT)運用検討会議において最終合意に達したことも喜ばしいことだと思います。核のない世界を実現するため、引き続き三国間で協力していきたいと思います。

 来年は、日本が日中韓サミットを開催します。韓国及び中国と引き続き連携を強化し、協力を一層促進すべく準備していきたいと思います。

 最後に、改めて李大統領及び韓国の人々の指導力と温かいおもてなしに感謝の意を表したいと思います。

【温家宝国務院総理】

 まずはじめに、韓国哨戒艦沈没事件において犠牲となった方々に哀悼の意を表したいと思います。また、韓国の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 本日、済州島において、李大統領及び鳩山総理とともに日中韓サミットに出席することができ、光栄に思います。李大統領及び韓国政府には、このサミットをすばらしく実施していただき、また、温かいおもてなしに感謝申し上げたいと思います。

 日中韓協力は、10年の歩みを進めてきました。日中韓サミットのメカニズムは、日中韓協力をリードする役割を果たしてきました。二年前、日本において初めてASEAN関連会議から独立した形で日中韓サミットが単独開催されるようになり、三国間のパートナーシップが確立してきています。

 昨年は、日中韓協力10周年記念を祝い、日中韓協力の今後の方向性を示しました。本年の第3回日中韓サミットは、三国間協力が次の10年に向かう年に開催され、幅広い分野において日中韓協力を展望した4つの文書が発表されました。これら協力の実施については、東アジア共同体をともに構築していくにあたって非常に心強く思います。三国間協力の推進は、三国の幅広い共通利益に負うところが大きいと思います。また、これまで、三国が一致結束して厳しい試練に耐えてきたことにも負うところが大きいと思います。

 アジア経済の状況が厳しく、また、地域の情勢が複雑な中、日中韓は、新たな挑戦に直面していると思います。そのような困難な問題に直面している中、三国国民の利益を実現するために三国がより一層意思疎通をはかり、北東アジアにおける敏感な問題に対処していきたいと思います。また、日中韓協力については、東アジアの平和と安定のために、これまで成し遂げられた協力の進展の基礎に、我々が新たな努力を積み上げるということが前提とされていなければ、三国間協力はさらに発展することもなく、これまでの成果も台無しとなるでしょう。当面、チョナン号の事件に適切に対処をしなければなりません。緊張を緩和し、武力衝突を防がなければなりません。安定と平和及び日中韓の共通利益に資する日中韓協力を進展させたいと思います。

 日中韓は、生産大国及び貿易大国であり、その産業構造も発展をみせています。グリーン成長や循環型経済、技術イノベーションを強化し、さらなる発展を遂げていきたいと思います。我々は、力を合わし、共通の問題を解決し、成長の早い経済を実現し、人的及び文化的交流を強化し、三国各々の利益を増進させたいと考えています。日中韓協力のさらなる進展のためには、三国間協力が国民の力や知恵、また社会によって実現されていることを念頭に置いておかなければならず、友愛、包容、調和の理念で実現していかなければならないと思います。私は、韓国において開催されたこの第3回日中韓サミットに、平和、友好、協力の信念で臨みました。そしてこれから、鳩山総理のお招きにより訪日もします。三国間で、常にウィンウィンの関係を構築するという精神と互恵関係を築くとの理念によるこの唯一の正しい道の下、確固たる気持ちで、日中韓協力を進展させていきたいと思います。

【李明博大統領】

 まず、私は3国が合意した報告書を発表します。報告の前に少し簡単に話をします。

 私は、今回非常に忙しい中、鳩山総理が大田を訪問下さり、また、済州島会議に出席して下さったことを非常にありがたく思います。

 また、温家宝総理も非常に忙しい中、おそらく初めて3国会議に2泊3日で韓国を訪問して下さいました。そのため、2国間会談で日本と中国は、十分な意見を提示することができました。

 また、お二方が共に天安艦事態について慰労下さり、激励下さったことについて、私は非常にありがたく思います。

 今や、この天安艦事態は、国際社会で非常に重要な一つの課題となっています。この問題において、朝鮮半島の繁栄と平和という窮極的な目標を達成するためにも、今回の問題は、我々が扱わなければならない確実な手順を踏まなければならない、このように私は考えており、こうした課題においても、根本的に日本と中国、両国首脳も意を同じくしていると、私は考えています。

 また、中国や日本は、国際社会で非常に責任ある国家として、この問題の処理において非常に賢い協力があるものと期待し、また、そうすることにより、我々は歴史の困難な過程を踏み、朝鮮半島の平和と平和的な統一をもたらさなければならないという目標を持っています。

 お二方が積極的な理解と協力を約束して下さったことについて、私は非常にありがたく考えています。

 今回の会議では、与えられた主題についても、互いに満場一致で合意しました。また、主題が決まっていたもの以外の事項も、中国や日本から良い議題を多く提起して下さいました。こうした問題も今後、実務的にさらに検討をしていく考えを持っています。

 特に、今後10年の「VISION2020計画」を我々が樹立しました。こうした過程で、我々が核の問題、核のない世の中を作るという目標について、鳩山総理が提案されました。特に、NPT運用検討会議での合意を契機に提案されました。

 また、今回の機会に、初めて中国温家宝総理が、核を保有する国家として対外核政策を非常にはっきりとお話下さいました。我々は非常に参考になり、助けになったと申し上げ、感謝申し上げます。

 続けて、報告をいたします。去る1999年、我々3国はASEAN+3首脳会議を契機に、3国首脳会議を開催しました。それから10年がたち、新たな10年の時代が今年始まりました。我々はこれまでの成果を評価し、今後の協力方向をより深く議論しようと、初めて1日の会議であったものを1泊2日に延長し、会議を進行することにしました。

 また、3国各国合同の民俗音楽公演もあり、子供らに提案させた手紙を集めるタイムカプセル行事も行いました。

 また、本日3国の主要経済人が集まり、相互にフォーラムを行い、また、本日3国首脳と共に会うことになっています。

 また、前回の北京会議で論議された青年科学者ワークショップも済州島で開かれています。多様な行事を通じ、3国間に実質的な協力を増進する上で、今回の会議が契機になったと思います。

 済州で開かれた今回の会議が、我々3国の協力と発展のための堅固な土台になったと、私は申し上げることができます。

 我々3国に対する協力と共同体に関する話も出ました。共同体に進むまでには非常に時間がかかり、難しいことではあります。しかし、この目標に向かって我々がたゆまず努力するならば、我々もいつかはこれを、次の世代になったとしても、必ず成し遂げられると考えているため、この問題はたゆまず首脳間で論議されなければならないと考えています。

 我々3首脳は、2008年12月の福岡、2009年10月の北京に続き、今回済州で3回目の首脳会議として、3国の首脳会議が定例化されたと思い、これは非常に意味があると思います。

 今回の首脳会議を通じて、我々3国首脳は、3国間協力発展方策と最近の北東アジア情勢、G20サミットなどの地域及び国際イシューについて、極めて深く、建設的な意見を交換しました。

 我々3首脳は、今回の会議が、3国間協力の新しい10年を始める年に開催されたことに対し、より意義深いものがあり、3国間協力の継続的な発展が、韓日中3国の繁栄はもちろん、地域及び世界の平和、安定及び共同繁栄のためにも重要であるということで認識が一致しました。

 こうした認識の下で、我々3首脳は、これまでの成果を土台に、3国間協力の今後10年の未来像とビジョンを示す「3国協力ビジョン2020」を採択しました。さらに、3国協力をより効果的かつシステマチックに支援するために、3国協力常設事務局を2011年に韓国に設置することに合意しました。

 我々はまた、技術障壁を除去し標準協力を図るための「標準協力に関する共同声明」と、科学技術分野の協力を強化するための「科学イノベーション協力の強化に関する共同声明」も採択しました。

 我々はまた、今年5月に発足した3国のFTA産官学共同研究を評価し、3国間の協力関係の強化はもちろん、地域経済統合促進のために、2012年の完了を目標に、共同研究が円滑に行えるよう、協力していくことにしました。我々はまた、3国間投資協定を早期に妥結するために数ヶ月以内に実質的合意を導出するための最大限の努力を行うことで合意しました。

 我々3首脳は、3月26日に発生した韓国哨戒艦「天安」沈没事態について意見交換をしました。日本と中国の首脳は、天安艦沈没犠牲者に対する哀悼と遺族及び韓国国民に対する慰労の意を表しました。日本と中国の首脳は、韓国と国際合同調査団により行われた共同調査と各国の反応を非常に重要視し、3国首脳は、域内の平和と安定を維持するために持続的に協議し、同問題を適正に対処していくことにしました。

 我々は、非核化した朝鮮半島が、北東アジアの持続的な平和、安保、経済繁栄に大きく寄与するだろうという認識をしました。そのために、我々は2005年9月の六者会合共同声明に明示された目標を実現するために長期的に六者会合のプロセスを通じて共同の努力を続けていくことにしました。

 我々は、世界経済の持続可能なバランスのとれた成長のために、今年11月にソウルでG20サミット及び横浜で開催されるAPEC首脳会議の成功を保証するために、緊密に協力することにしました。

 我々3国の首脳は、本日の会議が新しい10年を迎える3国間協力の実質的な発展のための礎石となることを希望し、来年の第4回首脳会議の際に日本で再会することにしました。

 以上、本日の3国首脳会議で合意した内容を申し上げました。改めて、韓国、またこの美しい済州島を訪問してくださった鳩山総理と温家宝総理、また両国の使節団のすべの皆様に大韓民国の意として、感謝申し上げます。良い記憶を持って、お帰り下さい。

 今後も引き続き、3国の繁栄、ひいてはアジアの繁栄、平和のために心を合わせていければと願っています。ありがとうございました。