データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回中日韓商工サミット昼食会での温家宝総理演説

[場所] 東京
[年月日] 2011年5月22日
[出典] 中華人民共和国駐日本国大使館
[備考] 
[全文]

尊敬する菅直人首相

尊敬する李明博大統領

在席のみなさん

私はずっと東京で皆さんと会うことを楽しみにしていた。まず改めて中国人民を代表し、大規模地震・津波災害を受けた日本人民に心からの見舞いの気持ちを表明し、また長年、3カ国の経済・貿易関係の発展促進、3カ国人民の友誼増進に積極的に貢献している商工業界の友人に崇高な敬意を表する。

今世紀最初の10年は世界の政治・経済の枠組みの大調整、大変革の10年であり、中日韓3カ国の協力が日に日に深まった10年だった。10年間にわれわれは経済のグローバル化と地域経済統合の大きな発展のチャンスをとらえ、経済・貿易協力を先導役とし、将来に目を向けた全方位協力のパートナーシップを徐々に築いてきた。われわれは手を携えて世界的金融危機と重大な自然災害の厳しい挑戦(試練)に対応し、地域のホットな問題の解決を共同ではかり、20カ国・地域グループ(G20)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)など多国間の仕組みにおける協力を全面的に強化し、難局を共に乗り越え、勇気をもって責任を負う強い決意を示した。今日、東アジアは世界で最も活力と発展の潜在力を備えた地域の一つで、アジア経済の力強い成長をけん引し、世界経済の回復を促す重要なエンジンとなっている。中国は日韓の最大の貿易相手で、昨年の中日の貿易額は3000億ドル近くに達し、中韓の貿易額は2000億ドルを超え、共に過去最高となった。日本と韓国は共に中国の主要な外資供給源で、中国に設立した企業の総数は10万社近くに達し、累計の投資額は1200億ドルを超えている。

中日韓の経済協力の発展は3カ国人民の根本的利益にかない、アジアおよび世界の繁栄と安定に有益である。

午前に菅直人首相、李明博大統領と3カ国の実務協力拡大について突っ込んだ意見交換を行い、重要な共通認識に達した。ここでいくつか具体的な意見を述べたい。

第1、3カ国間の貿易規模を一段と拡大する。中日韓は共に世界トップ10に入る貿易大国だが、3カ国間の貿易額は3カ国の貿易総額の11%前後にすぎず、貿易拡大の比較的大きな余地がある。近年、3カ国の貿易構造に新たな変化が起きつつあり、産業内貿易が急発展し、中間製品の貿易の比率が大幅に上昇しており、これは3カ国の経済連携の深化と産業の分業細分化の反映である。情勢に応じて有利に導き、市場を一層開放し、関税と非関税障壁を減らし、税関、品質監督検査検疫、輸送、人の出入国などの面の協力を全面的に推進し、地域内の貿易発展のための好ましい環境を築かなければならない。中日韓自由貿易圏の設置は3カ国の産業界の共通の願いであり、官産学共同研究が前向きの進展を収め、予定を繰り上げて年内に完了し、来年に正式交渉が始まる見通しとなっている。中国は最大の誠意でこの作業の進展をはかる用意がある。日韓との貿易で、中国は比較的大きな赤字となっているが、われわれは前向きの姿勢でこの問題に対処し、保護貿易主義をやらず、貿易を発展させる中で均衡を徐々に実現することを希望している。

第2、3カ国の投資協力を一段と深める。日本と韓国は世界の重要な対外投資国で、中国企業の対外投資も始まったが、3カ国の相互投資は3カ国の対外投資総額に占める比率が10%足らずで、協力の潜在力は非常に大きい。3カ国の投資協力の仕組みを一層整え、企業の投資に影響を与えるさまざまな障害を努力して排除することが重要かつ緊急の任務である。2005年から3カ国政府は投資協定交渉で苦しい努力をしており、これまでに12回の交渉を行い、大多数の問題で一致している。中国は最大限の努力を払い、日韓と協力し、年内に交渉を終えることを目指す。中国政府は日韓を含む各国企業の投資・起業を歓迎し、法に従って中国に設立されたすべての外資企業はすべて内国民待遇を享受し、各種企業の知的財産権と合法的権益が有効に保護されている。われわれは日韓両国政府が中国企業の投資に便宜を図ることを希望する。

第3、グリーン経済と循環型経済を一段と発展させる。中日韓3カ国は1人当たりの資源量水準が比較的低く、グリーン経済、循環型経済を発展させ、持続可能な発展を実現することが共通の目標である。中国は日韓と風力、太陽光など再生可能エネルギー分野の協力を強化することを願っている。中国は3カ国の「再生可能エネルギー産学研イノベーション連盟」を設立し、技術、生産、市場などの面の優位性による相互補完を実現することを提案する。今年、中国は3カ国の政府、企業、大学、研究機関の代表を招き、協力について話し合う、新エネルギー協力をテーマとする国際フォーラムやコンベンションを開催する。中日韓の循環型経済モデル拠点の設立は3カ国首脳の2年前の合意であり、中国政府は有効な措置をとり、年内に中国の循環型経済モデル拠点建設のスタートを目指し、また日韓のモデル拠点建設も支援する。

第4、防災減災と災害復興協力を一段と強化する。自然災害の多発は中日韓が共に直面する重大な挑戦である。3カ国政府は災害管理協力を一層強化し、情報通報、緊急救援協力の仕組みづくりを検討することで一致合意している。中国は3カ国の北東アジア地震・津波・火山共同研究を提案し、研究始動資金を提供する用意がある。中国は日本の要請に応じ、災害救援を続ける。中国は貿易投資促進代表団を日本に派遣し、日本側と震災復興協力について話し合う。

在席のみなさん:

中日韓の協力は新たな歴史的スタート地点にあり、3カ国商工業界の皆さんがチャンスをとらえ、勢いに乗じて前進し、3カ国の経済・貿易協力に積極的に参加し、3カ国の全面的関係発展を促し、人民の幸福を増進するため、一層大きく貢献することを希望する。

ありがとう。