[文書名] 将来のパンデミックの予防・備え・対応に関する共同声明
我々、日本、中華人民共和国及び大韓民国の首脳は、2024年5月27日、第9回日中韓サミットの機会に、大韓民国のソウルで一堂に会し、以下のとおり決定した:
国連の持続可能な開発目標(UNSDGs)、国際保健規則(IHR)及び世界保健機関(WHO)の総合事業計画(GPW)を通じ、将来のパンデミックの予防、備え、対応(PPR)への我々のコミットメントを再確認し;
感染症の予防及び制御のための世界戦略と行動計画に関する世界保健総会(WHA)決議74.7(2021年)は、感染症の流行に対処するための取組の主導における国家の役割の重要性を強調するものであることを想起し;
感染症の流行に共同対処するための協力と交流によって達成された成果及び2008年に採択され、2016年に改訂された当初の共同行動計画に基づき、2021年12月に開催された第14回日中韓三国保健大臣会合で採択された「共通の課題であるパンデミック及び重大な影響が考えられる感染症対策における3か国共同行動計画」へのコミットメントを認識し;
2020年に開催された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するASEAN+3(日中韓)特別首脳テレビ会議、新型コロナウイルス感染症に関する日中韓外相テレビ会議及び新型コロナウイルス感染症対策に関する日中韓三国特別保健大臣会合を通じて、世界的なパンデミックに対応するための国際協力体制を確立するための取組を認識し;
将来のパンデミックの効果的な予防、備え、対応を促進するため、3か国が設立したプラットフォームを通じて、各国の政策、戦略、経験、ベストプラクティス及び教訓を共有することから生じる利益を認識し;
新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC, Public Health Emergency of International Concern)の終了が公式に発表されたにもかかわらず、新たな懸念される変異株の出現の可能性を含め、依然として根強い脅威であり、新興・再興感染症の流行など、新たな健康危機が経済的・社会的発展に及ぼす悪影響に効果的に対応する必要性に留意し;
日本、中華人民共和国及び大韓民国は、関連の国家戦略の実施と国際協力を強化するための活動を通じて、将来のパンデミックと公衆衛生危機に積極的に対処する必要があることを強調し;
1. 我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成が国際保健の体制を強化するための我々の取組において不可欠であるとのコミットメントに基づき、国家戦略の一環として、将来のパンデミックの予防、備え、対応を優先する。また、関連する政府の政策や行動計画、例えば、中長期的な国家経済発展、公衆衛生、保健医療サービスのデリバリーシステム及び医療制度改革などが、将来のパンデミックの予防、備え、対応を盛り込んだものとなることを奨励し、支援する。
2. 我々は、世界健康安全保障を強化する観点から、必要不可欠な保健医療資源への公平なアクセスの重要性を再確認し、公衆衛生上のリスクとニーズに基づく、ワクチン、診断薬及び治療薬を含む感染症危機対応医薬品等(MCM)へのアクセスの公平性を向上させる。これに関して、我々はまた、優先順位付け、研究開発、薬事承認及び製造からラスト・マイルのデリバリー及び国際的な協働まで、MCMに対するエンド・ツー・エンドのアプローチの重要性を認識し、各国間及び各国内の感染症対応能力の格差を縮小するため、医療従事者の能力強化に努める。また、国際機関や関連する資金拠出を通じてグローバルな取組に参加することにより、感染症から世界をより安全にすることに貢献する。
3. 我々は、パンデミックの予防、備え、対応に関連する対策を実施する際に、各セクターの目標と責任を明確にする必要性を強調し、感染症の流行への対応において多分野にわたるアプローチを強化する重要性を強調する。
4. 我々は、ヒト、動物及び生態系の健康のバランスをとり、最適化することを目的とした統合的かつ統一的なアプローチであるワンヘルス・アプローチが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな懸念される変異株の出現を含む病原体による新興・再興感染症及び薬剤耐性など、将来のパンデミックや公衆衛生危機を予防し、備え、対応する上で重要な概念であることに留意する。我々は、国、地域及び世界の健康安全保障を強化するために、ワンヘルス・アプローチを通じて、多分野にわたる積極的な参加を奨励する。
5. 我々は、地域の平和と繁栄を促進するため、健康安全保障分野における戦略的協力を追求する。この目的のため、我々は、二国間及び多国間のイニシアティブ及び3か国が加盟する国際機関とのパートナーシップを通じて、地域の健康安全保障を強化するために協力し、関連する共同研究、政策対話及び経験の共有を奨励し、日中韓感染症対策フォーラム及び臨床専門家のシンポジウムなどを通じた、3か国の疾病管理のための国家公衆衛生機関間の協力強化によるものを含め、長期的な協力メカニズムの構築を目指す。我々はまた、健康危機に共同で対処するための成功モデルを構築するために協力し、ベストプラクティスの共有を含む様々な活動を通じて国際的及び地域協力を促進する。