[文書名] 3か国知的財産協力の10年ビジョンに関する共同声明
我々、日本、中華人民共和国及び大韓民国の首脳は、2024年5月27日、第9回日中韓サミットの機会に、大韓民国のソウルで一堂に会した。
日本特許庁(JPO)、中国国家知識産権局(CNIPA)及び韓国特許庁(KIPO)(以下、「3庁」と総称する)の3か国協力23周年に際して、3庁の長官は、2023年11月30日に大韓民国の釜山において3か国会合を開催し、3か国協力の過程を振り返り、新時代のニーズに対応する新たな方向性を示したことを想起し;
3庁は、特許審査情報の交換及び活用を促進し、特許審査実務を調和させ、国際規範を確立することを目的として、2001年に3か国の知的財産(IP)協力を立ち上げたことを想起し;
過去23年間、地理的な近接性及び文化的な類似性に基づき、3庁が継続的に相互信頼を強化し、知的財産の機械化、特許、意匠、人材育成、審判及び商標の6分野における協力を深め、特許権者が発明及び開示の対価として独占権を十分に享受できるよう、特許権保護を強化してきたことを認識し;
この20年間で、3庁が取り扱う特許出願件数は世界全体の40%から60%以上に増加、商標出願件数は世界全体の20%から50%以上に増加し、これが、北東アジアのみならず、世界の技術発展及び経済成長を促進する上で3庁が重要な役割を果たしてきたことを示すことを認識し;
今後10年間においては、異なる産業と技術間のより集中的な収斂及び科学技術の急速な発展が起こるという認識を共有し;
技術進歩及びイノベーションが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような世界的危機を克服する鍵で、知的財産がそれらを達成するための触媒的要因であることを認識し、我々は、3か国のイノベーターによる知的財産の創造及び活用を促進し、知的財産権を積極的に保護するために、引き続き相互に協力する必要がある;
世界的な知的財産格差を縮小するために、我々が蓄積してきた知的財産の経験をより多くの国と共有するよう、今こそ協調して取り組む時であることを再確認し;
我々は、次の10年間にわたって、以下に取り組むことを指示した:
1. 3庁は、急速に変化する技術に対応し、受け入れることができる知的財産制度を確立する。3か国の大学、企業及び研究機関がAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの第四次産業革命技術の分野で革新的な物品、サービス及びソリューションを開発し、発表することが期待される中、3庁は、これらの創作物に対して適切な種類の知的財産権が適時に付与され、それらが法律によって適切に保護されるよう、関連するルール、審査実務及び制度を改善するために協働する。
2. 3庁は、特許情報の公共のアクセシビリティを向上させ、民間部門による利用を奨励するために、共同で取り組む。3庁は、学術界、研究グループ及び産業界が研究開発及び投資活動の方向性を定め、市場参入戦略を策定する上で、特許情報の分析が優れた指針を提供し得ることを認識する。この精神に基づき、3庁は、特許情報を相互に交換し、共有された情報を無償で公共に開示し、民間部門が開示された特許情報を最大限に活用することを支援することにより、技術開発及びイノベーション主導の成長を達成しようとする他国の取組を支援することにコミットしている。
3. 3庁は、「三か国+X知的財産協力」を追求する中で、3庁が共に築き上げてきた価値ある成果を共有するため、知的財産協力が3か国を越え、他国や地域にも拡大するよう努める。3庁は、知的財産協力のパートナーを見つけるため、協力のニーズ若しくは相乗効果を生み出す余地がある国又は地域機関(ASEANなど)を主に検討する。3庁は、これが世界的な知的財産格差の縮小による、世界の均衡のとれた成長への第一歩になると信じる。