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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] いわゆる従軍慰安婦問題についての第一次報告

[場所] 
[年月日] 1994年12月7日
[出典] 「慰安婦」問題とアジア女性基金,58−59頁.
[備考] 
[全文]

与党戦後50年問題プロジェクト

従軍慰安婦問題等小委員会

平成6(1994)年12月7日

1.いわゆる従軍慰安婦問題への取組み

 政府は、いわゆる従軍慰安婦問題に対する調査の結果、かつて数多くの慰安婦が存在したことを認めることとなった。

 その実態は、慰安所が当時の軍当局の要請により設置されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接に関与したものである。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等本人の意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下で非常に痛ましいものがあり、いずれにしても、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけることとなったわけである。

 したがって、政府及び与党としては、戦後50年を機会に、改めて、数々の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた女性に対し、この際、心からお詫びと反省の気持ちを表す必要がある。

 私たちは、こうした我が国及び国民の過去の歴史を直視し、道義を重んずる国としての責任を果たすことによって、今後こうした行為がなくなるようにしたい。

2.なぜ、幅広い国民参加の道を求めるのか

 いわゆる従軍慰安婦問題を含め、先の大戦にかかわる賠償、財産・請求権の問題については、日本政府としては、サン・フランシスコ平和条約、二国間の平和条約及びその他の関連する条約等に従って、国際法上も外交上も誠実に対応してきている。

 しかし、本問題は、戦後50年を機会に、今日までの経緯と現実にかんがみ、我が国としては、道義的立場から、その責任を果たさなければならない。そのため、こうした気持ちを国民ひとりひとりにも、ご理解いただき、分かち合っていただくために幅広い国民参加の道を求めていこうということなのである。

3.国民参加の道について

(1)目的・事業

 いわゆる従軍慰安婦の問題について、これら元慰安婦の人たちに対してお詫びと反省の気持ちから国民的な償いをあらわすことは、元慰安婦の人たちの傷つけられた名誉を回復するだけではなく、女性を尊重する強い意思を国の内外に表すことに通じる重要な行為である。

 また、女性の名誉と尊厳にかかわる問題は今日でも世界各地において存在している。私たち国民としては、このような問題に関心を持って、これらの問題が世界中からなくなることに努力することが、大切なことである。

 以上の考え方に基づき、以下の措置を探るものとする。

(1){(1)は原文ではマル1}上記目的のために、国民参加のもとでの「基金」について検討する。

(2){(2)は原文ではマル2}上記の「基金」は、元従軍慰安婦として、耐え難い辛酸をなめた女性を対象とした措置を行う。

(3){(3)は原文ではマル3}同じく、女性の名誉と尊厳に関わる問題の解決に向けた活動への支援など諸事業も行う。

(2)組織・運営

 関係者等の意見の反映などにも配慮するものとする。

(3)実施方法

 関係国及び関係者の理解と協力を求め、かつ、プライバシー保護の見地等を踏まえるものとする。

(4)その他

 「基金」は、公益性の高い既存の組織に協力を求めるなど早急にその具体化を図る。

4.政府の役割

 政府としては、先の総理談話等によって明らかにされた本問題への姿勢を示す意味において、「基金」に対し、拠出を含め可能な限り協力を行うべきものとする。

 なお、国として深いお詫びと反省の気持ちをいかに表すべきかについて、検討するものとする。