[文書名] 「女性のためのアジア平和国民基金」発足ごあいさつ
内閣総理大臣 村山富市
平成7(1995)年7月
「女性のためのアジア平和国民基金」の発足にあたり、ごあいさつ申し上げます。
今年は、内外の多くの人々が大きな苦しみと悲しみを経験した戦争が終わってからちょうど50年になります。その間、私たちは、アジア近隣諸国等との友好関係を一歩一歩深めるよう努めてまいりましたが、その一方で、戦争の傷痕はこれらの国々に今なお深く残っています。
いわゆる従軍慰安婦の問題もそのひとつです。この問題は、旧日本軍が関与して多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけたものであり、とうてい許されるものではありません。私は、従軍慰安婦として心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対して、深くおわびを申し上げたいと思います。
このたび発足する「女性のためのアジア平和国民基金」は、政府と国民がともに協力しながら、これらの方々に対する国民的な償いや医療、福祉の事業の支援などに取り組もうというものです。呼びかけ人の方々の趣意書にも明記されているとおり、政府としても、この基金が所期の目的を達成できるよう、責任を持って最善の努力を行ってまいります。
同時に、二度とこのような問題が起こることのないよう、政府は、過去の従軍慰安婦の歴史資料も整えて、歴史の教訓としてまいります。
また、世界の各地で、今なお、数多くの女性が、いわれなき暴力や非人道的な扱いに苦しめられていますが、「女性のためのアジア平和国民基金」は、女性をめぐるこのような今日的な問題の解決にも努めるものと理解しております。政府は、この面においても積極的や役割を果たしていきたいと考えております。
私は、わが国がこれらのことを誠実に実施していくことが、わが国とアジア近隣諸国等との真の信頼関係を強化、発展させることに通じるものと確信しております。
「女性のためのアジア平和国民基金」がその目的を達成できるよう政府は最大限の協力を行う所存ですので、なにとぞ国民のみなさまお一人お一人のご理解とご協力を賜りますよう、ひとえにお願い申し上げます。