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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア女性基金事業に関する日本政府の法的立場

[場所] 
[年月日] 1996年10月
[出典] デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金
[備考] 
[全文]

1996(平成8)年10月

財団法人女性のためのアジア平和国民基金

(アジア女性基金)

理事長 原文兵衛

 基金の事業と日本政府の法的立場との関係について、以下のとおり政府の見解を得ましたので、お伝えいたします。

 この見解を踏まえ、今後、私どもアジア女性基金へのご理解とご協力を賜わりますようお願いいたします。

(1) 元「慰安婦」の方が、アジア女性基金が示す一定の手続きにより基金の償い金を受け取る際に、「訴訟を取り下げること」あるいは「あらたに訴訟を提起しないこと」などの条件をつけることはないか、ということについての政府見解はつぎのとおり。

  【政府見解】

基金が償い金を元従軍慰安婦の方にお渡しするに際して、日本政府が元従軍慰安婦の方に条件を求めることは当然ない。

(2) 個人補償請求裁判についての政府見解はつぎのとおり。

 

  【政府見解】

1.アジア女性基金からお渡しされる償い金は、アジア女性基金が従軍慰安婦問題について、道義的な責任を果たすという観点から、国民の啓発と理解を求める活動を行い、募金活動を行った結果、広く国民各層から募られた償いの気持ちの表れである。

2.したがって、日本政府としては、アジア女性基金からの償い金は、法的な問題とは次元を異にするものであり、償い金を受け取ることが、個人がこの問題について日本の裁判所に訴訟を提起し、その判断を求めることを妨げるようなものではないと考えている。

3.この問題についての日本政府の法的立場は、従来のとおりであり、変更はない。

4.なお、平成8年8月14日、フィリピンにおいて、マリア・ロサ・ルナ・ヘンソン氏に対し、総理の手紙と原理事長の手紙等をお渡しした伝達式において、ヘンソン氏は、「総理の手紙を受け取って幸せである。内容にも満足している。」と述べるとともに、東京地方裁判所に係属中の自己の訴訟に触れ、「自分は、既に日本を許している。私が日本を許さなければ、神様が私をお許しにならない。訴訟は継続するが、今後の活動は弁護士を通じて行う。」とコメントしていることを付言する。

 日本政府としては、ヘンソン氏が、日本政府及びアジア女性基金の行っている各施策の意義を十分に承知された上で、総理の手紙及び国民からの償い金等を受け入れて、他方、訴訟は続行するという対応をされていると承知している。