データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] カウンダ・ザンビア共和国大統領歓迎午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 東京(首相官邸)
[年月日] 1980年9月19日
[出典] 鈴木演説集,242−244頁.
[備考] 
[全文]

 ケネス・デイヴィッド・カウンダ大統領閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 本日、ここにザンビア共和国のカウンダ大統領閣下御夫妻をお迎えして、歓迎の宴を催すことができますことは、私ども夫妻の心からの慶びとするところであります。

 九月は、日本でも最も美しい季節に数えられる月でありますが、このような時期に、閣下御夫妻の御訪日が実現しましたことは、誠に喜ばしく、私はここに、日本国政府及び日本国民を代表して、心よりの歓迎の意を表明したいと思います。

 大統領閣下

 今日世界は、極めて不安定かつ流動的な情勢の中にあります。しかも、いかなる国といえども世界の平和と安定なくして、自国の安全と繁栄はありえません。

 この中で、貴国は閣下の優れた指導の下、一貫して安定した、そして、着実な国づくりを進められ、またそれを背景として国際社会において、世界の平和と安定の達成のために多大の貢献をなされてきました。殊に、本年四月南部アフリカにおいてジンバブエが平和理に独立しましたが、同国の独立のため、閣下が示されました熱意と指導力は正に称賛に値するものであります。閣下の御尽力なくして、ジンバブエの平和の達成はありえなかったのであります。

 大統領閣下

 閣下の政治理念は、”ヒューマニズム”

にあると伺っております。閣下は「人間に対する高い評価及び人間の尊厳に対する敬意は、ザンビアの伝統的遺産であり、これは新しいアフリカにおいて失ってはならないものである。」と述べられるとともに、「社会を人間中心のものとして維持するため、あらゆる努力を払う決意である。」と述べられています。

 私は、わが国の施政にあたって[[undef12]]和[[undef12]]の精神を重視することを明らかにいたしました。和の精神は、古来わが国民が涵養してきた民族的英知の真髄であり、調和と統一をはかる理念でありますが、その根本は人間性の尊重であります。即ち、閣下の国づくりの基本理念は、わが国の目指す理念と根源において一致するものであります。

 大統領閣下

 ご記憶でございましょうか。一九六四年十月、わが国では、歴史的な東京オリンピックが開催されました。世界九十四カ国の参加国代表は、おのおの自国の国旗を先頭に晴れやかな行進を行いました。その時、一人新しい国旗をかかげ誇らかに行進する代表がありました。それは、独立したばかりのお国の代表でありました。日本国民は「ザンビア」の国名とともに、その感動的な光景をいまもなお鮮明に記憶いたしております。それ以来十六年、立派な国づくりのみちを着実に歩まれ、いま、大統領閣下ご夫妻をここにお迎えいたすことは、まことに感無量なるものがあります。私は、あの東京オリンピックの舞台にはじまった貴国とわが国との友好を大切にし、これが末永く発展していくことを心から願うものであります。

 我々は、この度の大統領閣下御夫妻の御訪日を機に、日本とザンビアの関係、ひいては日本とアフリカの関係が一層深まることを念願いたしますとともに、わが国としても、貴国の国づくりに対し、できるかぎりのご協力を惜むものではありません。

 大統領閣下

 閣下御夫妻が今回御滞在中に訪問される京都は、わが国の古い都であり、我々の文化が培われた地であります。千二百年前に造られた都を訪れられ、そこに息づく我々の伝統を身をもって感じて頂くことにより、日本をより深く理解して頂ければ幸いです。御多忙な御日程ではありますが、古来めでられてきた日本の秋をお楽しみになるよう願っております。

 御挨拶を終えるに当たり大統領閣下御夫妻御一行の御滞在が快適なものであることを願いつつ、併せて、大統領閣下御夫妻の御健康と、日本・ザンビア関係の一層の発展を祈念して、ここに杯をあげたいと存じます。