[文書名] ニエレレ・タンザニア連合共和国大統領歓迎午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶
ジュリアス・カンバラゲ・ニエレレ大統領閣下、令夫人並びに御列席の皆様
本日、ここにタンザニア連合共和国のニエレレ大統領閣下御夫妻をお迎えして、歓迎の宴を催すことができますことは、私ども夫妻の心からの慶びとするところであります。
私はここに日本国政府及び日本国民を代表して、心よりの歓迎の意を表明する次第であります。
大統領閣下
閣下は、独立以来一貫して、その指導力をもって、着実かつ安定した貴国の国づくりを進めてこられました。閣下は、「アフリカ人のアフリカ」という基本的認識に基づき、アフリカ古来の伝統の中の相互扶助の精神に根ざす考え方を自ら政治理念の中心とされていると聞き及んでおります。また、閣下は、「最も重要な存在は、貧困、疾病と無知から解放された人間である。」とのお考えから、わけても教育に力を注いでおられると承知致しております。
貴国民の閣下に対する「ムワリム」−「先生」−との呼び掛けは、閣下に対する国民の親しみと尊敬と愛を示すもので、私も政治にあたるものとして、常々、かくありたいと思っている次第であります。
大統領閣下
閣下はまた、非同盟諸国会議、アフリカ統一機構等の場でも、アフリカ、ひいては世界の平和と安定のために指導的役割を果してこられました。
ナミビア、南アフリカ等の南部アフリカ問題の解決は、国際社会が抱える大きな懸案の一つでありますが、特にこの問題の解決のため閣下が中心となって「フロントランイ諸国会議」を創設し、その議長として活躍されておりますことは、我が国でも良く知られております。昨年のジンバブエの独立は、こうした閣下の長年にわたる熱意と努力の輝かしい結晶の一つであり、我々はかかる閣下の業績に対し深い敬意を払うものであります。
閣下に捧げられた「アフリカの良心」との賛辞こそ、正に、閣下にふさわしいものといえましょう。
大統領閣下
貴国と我が国との関係が幅広い分野で、近年益々緊密化しつつあることは、誠に喜ばしいことであります。
十一年前、大阪で開催された万国博に、タンザニアの参加を得ましたことは、我が国民が貴国に初めて身近に親しむ貴重な機会を得たという意味で、誠に意義深いことでありました。
貴国より遥々運ばれたタンザニアの素晴らしい木材で作られたこのタンザニア館は、日本において、いまも我々の憩いの場となっていることをお伝えしたいと思います。
大統領閣下
我々は、このたびの大統領閣下御夫妻の訪日が両国関係の新たな跳躍台となることを確信するとともに、日本とタンザニアの関係、ひいては日本とアフリカの関係が益々発展していくことを念願致しております。
また、我々は、閣下の指導の下、貴国民が一丸となって取り組んでおられる貴国の国づくりに対し、出来る限りの協力を惜しむものではありません。
大統領閣下
閣下御夫妻は、明日より関西へ向かわれる御予定となっておりますが、中でも、千数百年の歴史を持つ京都、奈良は、我々の文化を育んでまいった地であり、これらの古い都を御覧頂いて、我が国の歴史、文化をより深く理解して頂くよう願っております。
御挨拶を終えるに当たり、大統領閣下御夫妻御一行の滞在が快適なものであることを願いつつ、併せて大統領閣下御夫妻の御健康と日本・タンザニア関係の一層の発展を祈念して、ここに杯をあげたいと存じます。