データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本とタンザニアの共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1981年3月20日
[出典] 外交青書25号,487−490頁.
[備考] 
[全文]

1.ジュリアス・カンバラゲ・ニエレレ=タンザニア連合共和国大統領及び同令夫人は,日本国政府の招待により,1981年3月17日から22日まで国賓として日本を訪問した。

 大統領及び同令夫人には,サリム外務大臣,ジャマール大蔵大臣,カハマ国務大臣,カドゥマ通信・運輸大臣,ハミス・ザンジバル企画大臣及びその他の高官が随行した。

2.今回の訪日中,1981年3月18日,大統領及び同令夫人は,皇居において天皇・皇后両陛下と会見した。

3.また,大統領は,鈴木総理大臣と会談した。同会談において双方は,共通の関心を有する国際問題及び日本・タンザニア間の協力問題につき意見を交換した。同会談は,相互の友好,信頼及び理解の雰囲気の中で行われた。

 さらに大統領は,日本の経済団体の指導者と会談した他,各種産業施設及び日本の伝統的文化施設を訪問した。

4.大統領及び総理大臣は,現下の様々な国際情勢に関する意見交換において,両国の外交政策が世界の平和と安全の維持及びすべての国との友好関係の発展を目指すものであるということを再確認した。

5.双方は,南部アフリカにおける政治的進展につき考慮した。この関連で双方は,ジンバブエの独立を歓迎した。

6.ナミビアについて,双方は,南アフリカの非妥協的態度によってもたらされたジュネーヴ実施前会議の決裂に特別の懸念を表明した。双方は,南アフリカによるナミビアの不法占拠を終了させるため国際的に協調的努力を行うことの重要性を強調した。この意味で,双方は,ナミビアの独立のための国連監視による自由選挙の実施に関する安全保障理事会決議435に基づく国連提案に対する支持を確認した。

7.南アフリカについて,双方は,アパルトヘイト政策が人権の基本的諸原則を全面的に否認するものであるとして同政策を非難した。双方は,アパルトヘイトの撤廃に向けて国際的努力を強化する必要性を表明した。双方は,南アフリカによるフロントライン諸国への攻撃を非難し,かつ,国際社会がかかる攻撃を終息させるため南アに最大限の圧力をかけるべきであることにつき意見の一致をみた。

8.総理大臣は,タンザニア大統領が国際社会の平和と発展のために果たしている役割を高く評価するとともに,特に同大統領がフロントライン諸国会議の議長としてジンバブエの独立に多大の貢献を行ったことに敬意を表した。双方は,ジンバブエ戦争の被害より回復し,国の再建に着手するため,同国に対し十分な支援が与えられるべきであることにつき意見の一致をみた。

 また,日本側は,南部アフリカ諸国間及び近隣諸国間の地域協力強化のために果しているタンザニアの重要な役割を歓迎し,また,南部アフリカ諸国の独立強化に向けての建設的な努力の一つである南部アフリカ開発調整会議の創設に対するタンザニアの支援についても歓迎した。日本側は,また,これらの努力が懸案となっている南部アフリカ問題の解決に重要な貢献を行うであろうとの見解を表明した。タンザニア側は,経済的独立を強化する同地域の努力への日本の積極的参加を評価し,国家間の平和と繁栄を育くむ日本の外交的努力を賞讃し,さらに日本が国際連合安全保障理事会の非常任理事国として国際の平和と安全の維持に,より一層貢献するであろうことについての確信を表明した。

9.双方は,特にアジアと中近東の平和と安定が世界の平和と安定の維持に極めて重要であることを再確認した。この関連で,双方は,包括的解決による中近東の公正かつ永続的和平に対する支持を明らかにした。

10.双方は,また,南北対話に特に言及しつつ国際経済情勢についての意見交換を行った。双方は,国連包括交渉の開始につき可及的速やかに合意が達成されるよう希望を表明した。双方は本年10月メキシコで首脳レベルで開催される協力と開発のための国際会議の提案を歓迎した。両首脳は,メキシコでの同首脳会議を成功させるため努力するとの意図を表明した。

11.タンザニア側は,日本のアフリカの経済発展に対する増大する寄与を評価し,特にアフリカ開発基金に行っている顕著な貢献に注目した。タンザニア側は,また,アフリカの開発問題についての日本の理解の増大を意味する日本のアフリカに対する近年の援助の増大に注目した。

12.総理大臣と大統領は,両国関係を検討するに際し,最近において両国間の経済協力が順調に進展してきていることに満足の念をもって注目した。

 総理大臣は,この点に関し,今後ともタンザニアの経済社会開発に重要な貢献を行うため,特に農村・農業開発及び人造りの分野でタンザニア連合共和国政府に対し,日本の援助スキームの枠内で可能な限りの経済技術協力を続けてゆく旨述べた。

 総理大臣は,一国の経済的及び社会的基盤の強化のためには,農村及び農業の開発,農民の生計の安定と経済社会開発の担い手を育成する「人造り」の推進が不可欠である旨述べた。

 この関連で総理大臣は,タンザニアの農村及び農業の開発に資するため,キリマンジャロ州における農村電化計画及び農業灌漑計画に対しプロジェクト借款として総額49億円までの円借款が,また同国の国際収支改善に資するため,商品借款として20億円までの円借款が供与されるよう所要の措置をとる意図がある旨述べた。

 日本側は,また,タンザニアの農村及び農業開発に対する協力の一環として,来年度よりキリマンジャロ州農業用水開発計画についてのフィージビリティ・スタディを開始する用意がある旨述べた。

 日本側は,ザンジバル港修築計画に対するフィージビリティ調査の要請に関し,本問題は真剣に検討されるであろう旨述べた。

13.総理大臣は,タンザニアの「人造り」に協力するため,ムワンザ技術学校の建設計画に関し,来年度早々に調査団を派遣し,右調査の結果に基づいて本件に対する無償資金協力供与の可能性を検討する旨述べた。

14.日本側は,タンザニアに対し,人道上の観点から3億円相当の医療機材を無償で供与し,また1978年3月の国連貿易開発会議第9回特別貿易開発理事会閣僚会議決議に留意して,2億1,807万3,000円の無償資金協力を行う旨述べた。

15.また,日本側は,両国の漁業分野における友好関係強化の観点から,タンザニアの漁業振興計画に関し,来年度中に調査団を派遣し,右調査の結果に基づいて本件に対する無償資金協力供与の可能性を検討する旨述べた。

16.大統領は,総理大臣の声明を歓迎するとともに,タンザニアに対する日本の経済協力に関し,感謝の意を表明した。

17.双方は,ニエレレ大統領の今回の日本訪問が両国における一層の相互理解の促進,友好協力関係の強化に大きく貢献したことを認識した。

18.大統領及び同令夫人並びに随員一行は,日本滞在中に受けた厚遇につき天皇・皇后両陛下並びに日本国政府及び日本国民に対し深い感謝の念を表明した。

19.大統領は,総理大臣かタンザニア連合共和国を訪問するよう招待した。この招待は感謝の念をもって受諾された。同訪問の時期は,外交チャネルを通じて決定される。