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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ムガベ・ジンバブエ首相歓迎午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 東京(首相官邸)
[年月日] 1981年5月19日
[出典] 鈴木演説集,256−257頁.
[備考] 
[全文]

 ロバート・ガブリエル・ムガベ首相閣下並びに御列席の皆様

 本日、ここにジンバブエのムガベ首相閣下をお迎えして歓迎の宴を催すことができますことは、私の心からの慶びとするところであります。私はここに日本国政府及び日本国民を代表して、歓迎の意を表明する次第であります。特に閣下御夫妻の御訪日が、貴国の建国一周年直後このような早い時期に実現いたしましたことは、我が国にとり一層の喜びであります。

 首相閣下

 閣下が貴国の指導者となられるまでには、波乱に満ちた永い苦しい年月があったと承知しております。また、閣下は少年の頃より教職を志され、ガーナにおいてその独立を目のあたりにし、自らの使命を強く自覚されたと聞いております。ジンバブエ独立のため、民族解放闘争において閣下が果たされてきた偉大な役割、世界の閣下に対する高い評価についてはここで改めて申すまでもありません。

 私は、とくに、獄中生活においても絶えず勉学にはげまれた閣下の高い志と、辛苦の時代における閣下に対するサリー夫人の献身的な支えに対し、深い敬意を払うものであります。

 更に、ここで私が特に強調いたしたいのは、閣下の一貫して示してこられた調和と寛容の精神であります。閣下が独立以来、和解の精神に則り、民主的で平等なる国家建設のため、極めて適切かつ着実な政策を推進してこられたことが、その何よりの証左であります。”和”の精神を政治哲学とする私は、閣下の考え方に心よりの共鳴を覚えるものであります。

 貴国は南部アフリカの中心に位置し、我が国とほぼ同じ広さの国土の中に、豊かな資源を有しておられます。現在、貴国は、長年の戦争の荒廃からの復興と、農村開発の課題に取り組んでおられます。我が国も戦争の荒廃から立ち直り、復興した経験を有しており、貴国の真摯な国づくりにかける情熱を十分理解しているものであります。

 首相閣下

 私は閣下のすぐれた指導の下、貴国が今後南部アフリカにおける中心的な国家として、目覚しい発展を遂げられることを期待すると共に、貴国の発展が南部アフリカのみならず、アフリカひいては世界の平和と安定に大きく寄与することを確信するものであります。わが国は、貴国の発展のため出来るかぎりの協力を惜しむものではありません。

 貴国とわが国との関係は、ここに出席の山中特使の独立式典参列からはじまりました。独立式典の感動的な情況は同特使より常々聞き及んでいるところであります。その後昨年六月には外交関係が結ばれ、次いでムゼンダ副首相の訪日、また本年五月二日にはわが国の大使館がソールズベリーに開設される等、両国関係は緒についたばかりではありますが、急速に友好の絆が強化されてきております。

 首相閣下

 我々はこのたびの閣下御夫妻の訪日が両国間の絆を飛躍的に強いものとすることを確信するとともに、日本とジンバブエの関係、ひいては日本とアフリカの関係の一層の発展をもたらすことを念願致しております。

 閣下御夫妻の我が国における御滞在は残念ながら短いものであります。

 しかし、この短い期間において出来る限り我が国に対する御理解を深めて頂くよう希望いたします。それでは最後に、首相閣下御夫妻の御健康と日本・ジンバブエ関係の一層の発展を祈念してここに杯をあげたいと存じます。