データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ボンゴ・ガボン共和国大統領の訪日に際しての日本とガボン共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1984年9月20日
[出典] 外交青書29号,480−482頁.
[備考] 
[全文]

1.エル・アジ・オマール・ボンゴ=ガボン共和国大統領及び同令夫人は,日本国政府の招待により,1984年9月18日から21日まで国賓として日本国を訪問した。

 大統領及び同令夫人はマルタン・ボンゴ閣下・国務大臣・外務協力大臣,エティエンヌ・ムシル国務大臣・工業大臣,ジャン−フランソワ・ヌトゥトゥメ・エマンヌ国務大臣・貿易大臣,ジャン−ピエール・レンブンバーレパンドゥ経済・大蔵大臣,マルタン・ンズエ・ンコゲ駐日特命全権大使,ジャン・ピン大統領府官房長,マルセル・キキ=ガボン民主党事務局長,ジョセフ・クンバ・ムイティ大統領特別顧問・儀典長,エマヌエル・オクオヨ大統領侍医,ジャック・オヴォノ・メズイ=アフリカ及び国際問題担当大統領顧問,シルベストル・ラタンガ外務協力省次官のほか,ガボン共和国政府の多数の高官が随行した。

2.今回の訪日中,1984年9月18日,ボンゴ大統領及び同令夫人は,皇居において天皇陛下と会見した。

3.ボンゴ大統領と中曽根総理大臣は,9月19日,国際問題及びアジア,アフリカ地域の諸問題並びに二国間関係について広範な意見交換を行った。

4.大統領は,日本の経済団体の指導者と会談し,また,各種産業施設を訪問した。

5.両首脳は,極めて親密な雰囲気の中で行われた首脳会談が両国の相互理解の増進に大きく寄与したことに満足の意を表明した。

 首脳会談においては,両国の外交政策が,世界の平和と安定の維持を基本目的とすることで共通していることが確認された。

6.両首脳は,世界の平和と繁栄のためには特に中東及びアジアにおける平和と安定が不可欠であることにつき意見の一致をみた。この関連で両首脳は,中東における公正で永続的かつ包括的な和平の早期達成が不可欠であることを再確認し,またイラン・イラク紛争の継続を深く憂慮するとともに,本紛争が早期に平和的手段により解決されることを希望する旨表明した。また,両首脳は,アフガニスタン及びカンボディア問題解決に関し,すべての外国軍隊の両国からの即時無条件撤退並びにアフガニスタン及びカンボディア両国民の自決権の尊重が不可欠であるとの点で意見の一致をみた。

7.両首脳は,南部アフリカ情勢につき討議を行い,南アフリカのアパルトヘイト政策は,国連憲章の目的の一つである人権平等及び基本的自由の尊重を踏みにじるものであり,かかる政策は可及的速やかに廃止されるべきであるとの認識で一致した。また,ナミビア問題に関し,国連憲章の原則及び特に国連安全保障理事会決議385及び435に基づき,早急に国連監視下の自由選挙が行われ,住民の意思に基づくナミビアの独立が達成されるべきことにつき意見の一致をみた。

8.両首脳は,西サハラ問題,チャド問題などのアフリカの地域紛争が統一を妨げ,アフリカの経済社会発展の大きな障害になっていることにつき懸念を表明するとともに,これら地域紛争がアフリカ統一機構を中心としたアフリカ諸国の努力により早急に平和的手段により解決されるべきことを強調した。

9.総理大臣は,ボンゴ大統領がアフリカ統一機構内においてチャド問題等の解決に多大の努力を払うなど,アフリカ地域のみならず,世界の平和と安定のために大きく寄与していることに対し敬意を表した。また,総理大臣は,同大統領が中部アフリカ諸国経済共同体及びバンツー文化保存のための機関(CICIBA)の創設など中部アフリカ諸国の安定と繁栄及び同地域諸国民の相互理解のために卓越した指導力を発揮していることを歓迎した。

10.大統領は,日本が,アフリカの社会経済開発のために行っている寄与を評価し,特に近年日本のアフリカ諸国に対する政府開発援助が着実に増大していること,並びにアフリカ開発銀行及びアフリカ開発基金に対する日本の顕著な貢献に注目した。また,大統領は,日本国内におけるアフリカに対する関心の増進及び日本・アフリカ関係の促進並びにアフリカの食糧危機救済のための民間の募金活動の慫慂,支援を目的とした「アフリカ月間」の実施を歓迎した。この関連において大統領は,今後,日本とアフリカの相互理解と友好協力関係が,広範な分野において増進されることを期待する旨表明した。

11.両首脳は,相互依存関係が深まっていく今日の国際社会において,先進国と開発途上国が共通の基盤に立ち,南北問題の解決に向けて実りある関係を構築することの重要性を強調した。この関連で,両首脳は,特に,旱魃による深刻な食糧不足,低成長,債務累積など,現在アフリカが直面している経済困難につき深い憂慮の念を表明した。さらに,両首脳は,食糧の自給自足を達成するためアフリカ諸国により合意された努力の重要性を強調するとともに,先進各国,関係国際機関が,食糧援助等短期的な措置にとどまらず,アフリカ諸国のかかる努力に対する支援を強化する必要性があることにつき意見の一致をみた。

12.両首脳は,日本・ガボン間の友好関係が近年着実に発展しつつあることに満足の意を表明した。さらに,両首脳は,経済,文化,人物交流その他あらゆる分野における両国の関係を一層増進していくために両国政府が今後とも出来る限りの努力を払うことに合意した。

13.技術協力の問題に関し,中曽根総理は,ガボン共和国政府が自国の経済社会開発政策を推進する上で人材養成に努力をしていることに対し,我国の経済協力政策と合致するとして支持するとともに,今後,二国間の技術協力を強化することにつき,ガボン共和国大統領と意見が一致した。

14.中曽根総理は,技術協力の枠内で1985年度にガボン共和国の保健衛生施設の改善に協力することにつき基本的に同意した。

15.中曽根総理は,ガボン共和国の好意により,日本放送協会が本年4月より「アフリカNo.1」のモヤビ送信所を賃借して国際放送を開始し,その受信状況が大幅に改善されたことを評価し,また,今後ラジオ放送,テレビ,通信の分野においてガボン共和国との人物交流及び技術協力を強化する方途を探求したい旨表明した。

16.さらに,中曽根総理は,日本政府がガボン文化の存続,保存,統合,普及センターに対する機材供与の実施の可能性につき前向きに検討している旨表明した。

17.ボンゴ大統領は,今後,日本とガボン共和国との間の特に産業,金融面を中心とした経済分野における全ての適当な形態での協力を強化する必要性を強調した。中曽根総理は,日本国政府が新たな視野に立ってこのような二国間の経済関係の推進に尽力する意向を有する旨表明した。

18.これに関連して,両首脳は,特に資金協力に関し,ガボン共和国における日本の直接投資及びガボン共和国による日本製品の輸入に対する日本の融資制度の活用を図っていくことについての意見の一致をみた。

19.両首脳は,ボンゴ大統領の今回の日本訪問が日本・ガボン間並びに日本・アフリカ間の相互理解及び友好関係の増進に大きく貢献することに深い満足の意を表明した。

20.大統領は,日本訪問中に大統領及び同令夫人並びに随員一行がが受けた厚遇につき天皇陛下並びに日本国政府及び日本国民に対し,深い感謝の念を表明した。

21.大統領は,日本国総理大臣に対し,ガボンを訪問するよう招請した。この招請は,感謝の念をもって受諾された。訪問の具体的な時期は,外交チャンネルを通じて決定される。