データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] モザンビーク国際平和協力隊帰国に際しての村山内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1995年1月9日
[出典] 村山演説集,417−418頁.
[備考] 
[全文]

 ザイール、モザンビークという日本から遠く離れた不慣れな土地での厳しい勤務、本当にご苦労様でした。人道救援と国連平和維持活動の各々の分野において立派に任務を果たされ、全員つつがなくご帰国されたことを心より慶ばしく思います。

 ルワンダ難民に対する救援活動は、国際平和協力法制定後、我が国にとっては初めての人道救援となりましたが、実際にこの活動に従事された皆様は、準備段階の宿営地の設営から、現地での業務の実施、撤収に至るまで数多くの困難に遭遇されたことと思います。そうした困難を見事乗り越えられ、皆様は、医療、防疫、給水、空輸それぞれの業務で大きな成果を挙げられました。

 皆様の活動には、ルワンダ難民や地元住民はもとより、皆様と共に活動に当たった国際機関や主要各国、NGOの関係者からも数多くの感謝の声が寄せられております。私は、昨年の暮れ、国連難民高等弁務官の緒方さんにお会いいたしましたが、緒方さんは、我が国の自衛隊が残した業績とその規律正しい仕事振りは国際社会においても大変高く評価されていると言っておられました。

 モザンビークの国連平和維持活動に対する協力については、我が国としては、一昨年の五月以来行なってまいりましたが、輸送調整部隊の皆様は、三次にわたり派遣された部隊の殿(しんがり)という重要な役目を務められました。また、他国の部隊に給食等を依存するというご苦労もあったと聴いております。

 皆様が担当された輸送調整の仕事は、現地において要員、物資の展開を進めるもので、国連の活動を円滑に進めていく上で不可欠なものでありました。皆様は、モザンビークの和平プロセスの締めくくりとも言うべき大統領選挙等が行われるに際し、国連の活動が活発化するとともに、現地情勢が緊張する中、整斉と任務を遂行されました。

 皆様のご尽力の甲斐あって、選挙は、ご承知のとおり、有権者の九十パーセントに及ぶ人々が参加して成功裡に終了し、先日新政権が発足した次第であります。

 今回のルワンダ難民救援とモザンビークでの活動を通じて、未曾有の人道問題と平和な国づくりという国際社会が当面する二つの大きな課題について、我が国を代表する皆様が他の国々の志を同じくする人々と共に汗を流し、また、現地において様々なレベルで交流と相互理解を深めることができたことを、私は大変誇らしく思います。

 政府としては、今後とも我が国の国際社会に占める地位に相応しい責任を果たしていくため、人的な貢献を積極的に進めてまいる所存でありますが、皆様に残していただいた実績と経験を貴重な財産として今後の派遣に生かし、大きく育てていきたいと思います。

 皆様も、この意義深い事業に参加されたという誇りと得難い経験を、今後の人生においての大いなる糧としていただきたいと思います。

 ここに、改めて隊員の皆様に対し、心より敬意と謝意を表するとともに、派遣中の留守を立派に守られたご家族の方々に、この場を借りて厚くお礼を申し上げ、私のあいさつとさせていただきます。