[文書名]　マンデラ・南アフリカ共和国大統領歓迎晩餐会における村山内閣総理大臣の挨拶

マンデラ大統領閣下並びに御臨席の皆様

　この度、南アフリカ共和国より大統領閣下並びにその御一行を我が国にお迎えすることができましたことは、私にとってこの上ない喜びであります。ここに、日本国政府及び国民を代表し、大統領閣下御一行の御来訪を心から歓迎申し上げます。

大統領閣下

　貴国が昨年、幾多の困難を乗り越えて、和解の精神と対話により民主的・平和的に「新生南アフリ力」を誕生させたことは、歴史上特筆すべき快挙でありまして、世界中の人々に大きな希望を与えました。人種差別・抑圧と闘い、民主主義の確立と平等な社会の創出をご自身のライフ・ワークとされる閣下の信念と勇気ある行動に、世界の多くの人々が勇気づけられております。現在、貴国は閣下の卓越したご指導の下、新しい国造りに励んでおられますが、引き続き対話を通じて人々の心の垣根を取り払い、人種や部族といった狭い枠組みを打ち破り、人間としての共通の視点から国民和解と国家再建を成し遂げられることを念願いたします。貴国では、「マサカネ・キャンペーン」と呼ばれる、国民の意識を啓蒙し、全国民参加による国家再建運動が実施されていると伺っておりますが、貴国民が一致団結して果敢に当面の課題に挑戦されるならば、必ずや困難を克服することができるものと確信いたします。

大統領閣下

　我が国は、貴国の新しい国造りへの努力を、可能なかぎり支援してまいりたいと考えております。そのために、昨年七月に、二年間で一三億ドルの支援策を発表したことは御承知の通りであります。貴国政府との緊密な協議を通じて、この支援策が貴国の最大の課題である国内格差の是正と経済発展に貢献することを、心より希望いたします。

　貴国がアフリ力大陸の経済発展において枢要な地位を占める国であり、貴国の安定と発展が南部アフリカ、さらにはアフリカ全体の発展に貢献することに鑑みれば、貴国と我が国との協力関係の拡大は、二国間関係の発展に資するのみならず、世界の平和と発展という両国の共通の目的にも資するものであると考えます。

大統領閣下

　昨年貴国が新たな民主国家として生まれ変わって以来、両国関係は急速に緊密なものとなっています。先に述べました日本政府の支援策の発表や、参議院における日本・南アフリカ友好議員連盟の設立、経済調査団の貴国訪問、そして今回の大統領御自身の国賓としての御来訪を始めとする両国要人の往来など、政治・経済面での協力関係が着実に発展してきていることを誠に喜ばしく思います。特に閣下を我が国にお迎えできましたことは、我が国と貴国との関係において、新たな時代の始まりを告げる象徴的な出来事と言えましょう。先程、私は閣下と有意義な意見交換をすることができましたが、今回の訪日が二国間関係発展のさらなる飛躍台となるものと確信しております。

　御挨拶を終えるにあたり、この機会に、貴国がラグビーの第三回ワールド力ップ大会において、見事初の世界王座につかれましたことを、心よりお祝い申し上げます。決勝戦での対ニュージーランド戦は、世界王座を決するにふさわしい、白熱した好ゲームでありました。多くの日本国民がテレビを通じてこのゲームを観戦し、南アフリ力・チームの奮戦に興奮したことは、あらためて申し上げるまでもありません。

御列席の皆様

　ここにマンデラ大統領閣下のご健康、南アフリカ共和国の益々の発展と繁栄を祈念し、また、我が国と南アフリ力共和国との末永き友好を願って杯を挙げたいと思います。