[文書名] 21世紀に向けたアフリカ開発,東京行動計画(TICAD II)
I.序文
1.アフリカは、大きな変革を遂げつつある。1993年の第1回アフリカ開発会議(TICAD I)以降、多数の国がかなりの経済成長を達成し始め、開放的且つ民主的な国家として出現している。民主的原則を浸透させ、市場本位の経済活動を容易にする健全な政治、経済改革がアフリカの再興を促している。
2.それにも拘わらず、広い範囲の貧困と不適切な政策が非常に多くの国の潜在力を阻んでいる。殆んどの場合、人口の最貧困層は全般的な経済成長がもたらす利益を未だ享受するには至っていない。貧困と不平等は政治的不安定の一因となっている。武力紛争は多くの人命を奪い、永続的平和と安全の基盤は未だに脆弱である。紛争は、国連システム、アフリカ統一機構(OAU)及びアフリカにおける地域的な機構が提供する現行の紛争管理メカニズムを使用した平和的手段によって解決されなければならな
い。
3.従って我々は、TICAD I以降の進展を踏まえてこれを更に発展させ、アフリカ開発の残された課題に取り組む決意を新たにすることを決意した。TICAD IIの参加者たる我々は、この目的に向けて本行動計画を採択するために当地東京に参集した。我々は、この計画が認定する行動に深くコミットしていることを再確認する。これらの行動は、アフリカ諸国自身の主体性(オーナーシップ)と優先順位に基づき、真のパートナーシップの精神により、アフリカ諸国がその開発パートナーの支援と援助の下にフォローアップすることになる。
II.主題と基本原則
1.主題:貧困削減と世界経済への統合
4.このアフリカ開発のための行動計画の主題は、加速された経済成長及び持続的開発による貧困削減並びにアフリカ経済の世界経済への効果的な統合である。絶対的貧困のもとに生活する人口の比率を2015年までに少なくとも半分に削減することを目標とする貧困削減の課題によって、人口の総ての層が経済活動に参画し、かつ、その利益に与かる公正な経済成長が重要であることが明らかになる。政治的、社会的安定と良い統治は、持続的開発にとって不可欠である。同様に、開発なくして平和と安定は永続しない。
5.貧困削減は、多数のセクターを視野に入れることが必要であり、総ての開発努力に目標の一つとして取り込むべきである。アフリカ諸国の実質GDPは、意味ある貧困の削減には、年々5%を相当上回る率で成長する必要があると推計される。貧困削減に資する経済成長には、財政を安定させ、国民貯蓄を増加するとともに、特に非生産的活動の縮小と優先分野への集中により公共投資を合理化して生産的投資と雇用創出に資源を動員するための健全なマクロ経済政策が必要である。所得の分布を改善するには、零細及び中小企業の発展を促し、農村経済を再活性化し、社会サービスへの政府支出の水準と質を向上させ、更に絶対的貧困層を保護する安全網(セーフティー・ネット)プログラムを提供する諸措置から成る貧困層向けの戦略と政策が必要である。関連したアジアの開発経験、特に人材開発と制度的な能力の向上に力点を置くことからも教訓が得られる。
6.1996年において全世界貿易に占めるアフリカのシェアは2%未満であり、また、開発途上国への全外国直接投資(FDI)に占めるアフリカのシェアは2%に過ぎない。高い成長率を維持し、アフリカ経済を世界経済に統合することを容易にするには、双方の比率が相当に増加する必要がある。貿易改革を促進し、民間資本の流入を増加させるには、アフリカは、必須のインフラ、法令及び優れた人的資本を含め、所要の条件を整備することが必要になる。
7.アフリカの開発パートナーは、特に適正な水準のODAを供与し、アフリカへの外国直接投資を促進し、アフリカ輸出品に市場を開放し、アフリカの対外債務負担への持続的な解決策を探求し、また、技術移転を容易にすることによりアフリカ諸国の開発努力を支援することが奨励される。
2.基本原則
8.主体性(オーナーシップ)とパートナーシップは、本行動計画の基本原則である。この原則は、アフリカの経済、社会開発のためのカイロ行動計画に体現されている。この原則は、OECD開発援助委員会(DAC)の1996年の戦略である「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献」においても支持されている。従って、TICAD IIは、多くの国際会議において支持された、アフリカのプライオリティーに基づく特定の測定可能な諸目標を達成することに努力を集中させるという、この戦略をアフリカにおいて実施することを検討する機会を提供する。
(i)主体性(オーナーシップ)
9.1995年のカイロ行動計画は、アフリカ自身が決定するアフリカのための経済、社会開発のプライオリティーを明らかにしており、TICAD IIイニシアティブはこれを支持している。主体性(オーナーシップ)が発揮されるのは、アフリカが定めた開発のプライオリティーが追求される場合である。この主体性(オーナーシップ)は、政府、民間セクター及び市民社会の間の継続的な対話に基づくべきである。
(ii)グローバル・パートナーシップ
10.アフリカ開発は、アフリカ諸国の政府、民間セクター及び市民社会並びにドナー国、地域機関及び国際機関から成るアフリカの開発パートナーを含む総ての開発アクターが協力するための共通の枠組を作り出すグローバル・パートナーシップの原則に基づいて追求されるべきである。これらの共同の開発努力は、真のパートナーシップと相互のコミットメントの精神により、アフリカが主導すべきものである。
III.アプローチと横断的テーマ
1.アプローチ
(i)協調の強化
11.域外パートナー間の協調を強化することは、開発協力の効果を改善し、利用可能なODA資金を最大限活用するために不可欠である。域外パートナーとアフリカ各国パートナー間の、また、社会の総てのアクター間の協調を向上させることも主体性(オーナーシップ)とパートナーシップを強化するために極めて重要である。第1に、協調を改善することにより、国家開発戦略が一貫したものになり、明確な目的と目標が設定される。第2に、プログラム/プロジェクトの企画、実施の全過程を通じて、域外パートナーとアフリカ各国パートナー間で強力な協調が行われることにより、ドナー間の重複が除去され、アフリカ諸国の希少な人的資源への負担が軽減される。第3に、セクター別投資計画、援助国会合及びラウンド・テーブルを含む現行のフィールド・レヴェルでの協調の手法や仕組を改善する必要がある。アフリカ諸国が域外援助協調に指導力を発揮するためには、協調過程を主導するためのアフリカの能力を強化することが不可欠である。
(ii)地域的な協力と統合
12.1980年のラゴス行動計画採択以来、アフリカ諸国は開発を推進するための重要な手段として地域的な協力と統合を重視してきた。ますます世界の統合化が進む中で、部分的な地域及び地域のグループ化によって、世界的規模の投資家の注目度が高まり、越境貿易と投資が促進され、生産及びマーケティングのコストが減少する。アフリカ諸国と開発パートナーは、貿易取り決めを自由化し、地域的な物的なインフラ及び地域資本市場と研究機関を含む地域的な組織を発展させ、共通の環境問題に取り組み、感染症を抑制し、そして紛争を予防、管理、解決するための地域協力の重要性を認識する。地域的機関の能力を高め、強化し、また、アフリカの部分的な地域における経済グループ化計画を更に実施していくためには、域外からの支援が不可欠である。
(iii)南南協力
13.近年、特に1994年のバンドン及び1997年のバンコックにおけるアジア・アフリカ・フォーラム以来、アジアの経験をアフリカ諸国と分かちあうことにより、南南協力には大きな可能性があることが明らかとなっている。1993年以来、両地域間の貿易と投資が増加し、研究・研修機関間及び商業会議所間の組織的なネットワーク化が拡大している。他の地域の開発経験から教訓を学び、適用するアフリカの能力を強化し、また、様々な形で南南協力を促進する効果的なメカニズムを構築することによって、アジア・アフリカ間及びアフリカ域内の協力がアフリカにもたらす利益の可能性を更に現実のものとすることができる。また、先進国と国際機関を巻きこんだ三角協力によって、南南協力を一層拡大することができる。
2.横断的テーマ
(i)キャパシティ・ビルディング
14.アフリカ諸国が自国の開発戦略にかかる主体性(オーナーシップ)を強化するためには、開発政策と計画を分析、企画、実施、管理及びモニターする能力を強化しなければならない。この能力は個人、組織、機構に広く行きわたらせなければならない。この重要な関連性を更に押し進めるため、アフリカ諸国は最近、アフリカのキャパシティ・ビルディングのための世界的規模のパートナーシップに関する提案を策定したところである。能力を向上させるもう一つの手法は、アフリカ、アジア、ドナー国及び国際機関の研究・研修機関の間で効果的な協力のメカニズムを構築することである。
(ii)ジェンダーの主流化
15.女性は、経済、社会生活の総ての領域において重要な役割を果たし、家計の福祉に重要な貢献をする。しかしながら女性は、生産的資産と基礎的な社会サービスの利用手段を欠いている。従って、女性が経済、社会活動に十分かつ平等に参加し、貧困との戦いをより有利に進めるための権能を与えられるためには、ジェンダーの視点を総ての開発政策・計画の中核に据えることが不可欠である。民主主義の重要な要素であるジェンダーの平等を促進し、女性の経済的、社会的地位を向上させることができれば、経済的効率が高まることにもなろう。
(iii)環境の管理
16.高い人口増加率が引き続きアフリカの天然資源基盤に重い負荷を与えているため、環境管理は持続的開発にとり不可欠である。貧困削減の戦略は、貧困層が生存の戦いの中でますます脆弱な天然資源に依存する傾向があることを勘案すべきである。従って、アフリカ開発のための政策、計画及び意思決定過程は、砂漠化、土壌劣化、水管理、森林伐採、生物多様性及び自然災害の防止・軽減を含む緊急の環境諸問題を考慮しなければならない。
IV.行動計画
1.社会開発と貧困削減:人間開発の促進
17.持続的な人間開発は、開発の究極の目的である。他方、社会開発は、経済、社会活動に生産的に参加し、所得分配を改善するための貧困層の能力を向上させるのを助ける。貧困は、アフリカに広範に存在し、貧困層の大半が農村地域で生活している。アフリカ貧困層の約3分の2は女性であると見られており、また、貧困の女性化は、特別の注意が払われるべき問題である。東アジアでの貧困削減の経験は、持続的な期間にわたる衡平な所得分配を伴った急速な経済成長が貧困層を貧困ラインから押し上げるのに役立つことを示している。社会開発については、教育、保健及び人口並びに貧困層を支援する特別な措置といった優先分野について、サブ・セクターの目標を設定し、資金を配分しなければならない。
1.1教育
18.教育は、人的能力構築の中核を成し、この能力構築が東アジア経済における加速的な成長及び持続可能な貧困削減の鍵であった。ますます統合されつつある、知識本位の世界経済に効果的に参加することを目指すアフリカ諸国にとって、人的資源の強化は不可欠である。教育の課題は膨大である。幾つかのアフリカ諸国では、児童の半数以下しか就学しておらず、また、アフリカ女性の半数以上は非識字者である。公的資金の制約、既存資源の不効率な使用及び引き続き高い人口増加率により、教育における大幅な改善は達成が困難になっている。脆弱な人的資源基盤によって引き起こされる開発の悪循環を打破するためには、教育に対する資金手当と管理の方法、並びに教育プログラム実施のプライオリティー、規模及び速度についての抜本的な変革を図る教育開発を大幅に加速する必要がある。
19.アフリカ諸国においては、教育の達成状況が国毎に大きく異なるため、それぞれ優先的な行動を異にする次の三つの分類に従って考えるべきである。紛争後の諸国においては、教育の早期再開及び教育施設の復旧に行動の焦点を当てるべきである。低い就学率及び識字率に直面する諸国は、参加を加速すべきである。最後に、より高度の教育システムを達成した諸国は、教育改革を持続させ、また、質的、量的な拡大及び制度的発展を促進することが必要である。
(a)目標及び目的
(i)2005年までに少なくとも80%の児童が初等教育を修了するよう確保するとともに、2015年までに全ての児童が初等教育を受けられるようにする。
(ii)女性の識字率の改善を強調しつつ、2005年までに成人非識字率を1990年の水準の半分に低下させる。
(iii)2005年までに初等及び中等教育におけるジェンダー格差をなくす。
(iv)教育の質を改善し、また、教育と雇用の連関を強化する。
(v)科学・技術分野において国及び地方の能力を向上させる。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)教育に配分される資金全体の割合を増加させ、基礎教育プログラムに対して教育支出のより多くの割合を配分し、民間セクターを含む地域社会及び非政府資金源から資金を動員することにより資金源を拡大し、また、資金の効率的、効果的な活用を確保する。
(ii)現地語による識字プログラムを含め、女性及び人口の最貧困層に焦点を当てた成人教育及び技能開発プログラムを強化する。
(iii)教員訓練の強化、改善された学校カリキュラム及び教育機材の提供並びに所要の施設建設により、教育の質及び効果を改善する。
(iv)労働生産性の改善及び雇用機会の増加を目的とする技術・職業訓練を促進する。
(v)遠隔教育及び地域社会による学校経営のような非伝統的な手法を開発し、また、遠隔地における教育へのアクセス改善を図るためNGOとの一層の連携を構築する。
開発パートナーは、
(i)アフリカ諸国政府による広範な教育プログラムにおけるアフリカ諸国の教育上のプライオリティー、特に基礎教育を支援するために資金的及び技術的支援を行う。
(ii)教育へのアクセスを拡大する情報技術を導入するための、国、地域及び部分的な地域の活動を支援する。
(iii)教育政策の分析及びプログラムの実施のための国及び地方の能力開発を支援する。
(iv)経験の共有を促す多国間協力プログラムを支援する。
1.2 保健及び人口
20.アフリカにおいては、高い人口増加率と蔓延する貧困を背景に大部分の国で保健のサービスと施設が不十分且つ悪化の状況にあるのみならず、都市部に偏在し、また、予防よりむしろ治療に偏る傾向がある。アフリカは、妊産婦及び乳児の死亡率、妊娠率、家族計画のニーズの未充足において世界で最も高い部類に属し、避妊普及率において最低の水準にある。人間開発及び貧困削減の改善には、基礎保健及び性と生殖にかかる保健サービスへの貧困層のアクセス改善、疾病の負担軽減のための地方保健サービスの改善、女性の地位の向上、並びに男性を含めた性と生殖にかかる保健及び人口プログラムが必要である。
21.疾病の負担は膨大であり、特に、マラリア、結核、ポリオ及びエイズのような感染症及び寄生虫症の負担が大きい。とりわけエイズは、人間の苦痛、死及び生産性の損失において多大な損害をもたらしている。現在、全世界のエイズ感染の成人及び子供31百万人のうち、21百万人がアフリカで生活している。エイズ感染の全女性の80%はアフリカにいる。エイズ感染の結果として、寿命は短縮し、乳幼児死亡率は上昇し、また、個人の生産性と経済開発が脅かされている。エイズの潜在的な効果は、経済、社会活動の総ての領域に幅広く影響を与えている。
(a)目標及び目的
(i)2005年までに妊産婦死亡率を1990年の水準の半分に低下させ、2015年までに更に半減させる。
(ii)2015年までに5歳未満幼児の死亡率を1990年の水準の3分の1に低下させる。
(iii)2015年までに適齢期の総ての者に性と生殖にかかる保健サービスへのアクセスを提供する。
(iv)エイズ、性感染症(STD)、マラリア、結核及びポリオを含む感染症及び寄生虫症を削減する予防措置を強化する。
(v)2005年までに少なくとも人口の80%に対して安全な水の供給及び衛生へのアクセスを与える。
(vi)2015年までに栄養不良にある人々の数を半減する。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)出産前・後の看護施設、栄養教育及び主要な小児疾病の予防接種率を改善する。
(ii)基礎医療提供者のための研修プログラムの拡大、地区レベルの管理能力の構築、並びに地域社会レベルの保健サービスへの女性及び草の根組織の参加拡大により、地区保健インフラへの投資を行う。
(iii)出産間隔、避妊を含む自由且つ自発的な家族計画の方途を可能とする法的及び文化的環境をつくり、また、エイズ予防のための現地語による情報、教育及びコミュニケーション活動の改善を通じ慣習行動を変化させる。
(iv)性と生殖に関する健康にかかる医学的及び科学的情報に青少年がアクセスする権利を普及させ、また、性器割礼のような有害な伝統的行為の予防及び停止を目的とする教育、情報及びサービスを青少年を中心に提供する。
(v)安全な水の供給箇所を増加し、コミュニティーによる給水施設の維持能力を強化し、また、廃棄物処理及び衛生施設の改善により、特に人口過密な都市部の保健環境を改善する。
(vi)一般薬品の使用の増加及び医療保険の漸進的導入により、保健医療の経費を削減する。
開発パートナーは、
(i)特に農村地域において基礎保健医療施設の改善を図るアフリカ諸国の努力を支援するために資金的及び技術的援助を供与する。
(ii)分野横断的なエイズ戦略の統合を含め、人口政策・プログラム、性と生殖に関する健康及びエイズへのアプローチを相互に調整するためのドナー間の協力を確保する。
(iii)マラリアを含む感染症及び寄生虫症の予防及び治療のための支援を強化する。
1.3 貧困層支援のための他の措置
22.貧困削減は、TICAD IIで扱われる全てのセクターにかかわる目標であり、ここでは貧困層を直接支援する措置に焦点を当てる。
(a)目標及び目的
(i)2015年までに現在貧困下で生活する女性の数を少なくとも3分の2に削減する。
(ii)土地及び信用といった生産的資産並びに商品及びサービス市場に対する貧困層のアクセスの増大により、貧困層のための雇用の機会を創出し、収入源を多様化させる。
(iii)最も脆弱な者の生存能力を向上させ、また、社会的惨禍及び自然災害により影響を被った人々に援助を供与する。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)期限を定めた目標と戦略、並びに年毎の達成基準と社会指標を設けた貧困削減戦略を策定し、特に地方レベルにおいて、目標を適切に定めた貧困削減プログラムを実施するための組織の能力を強化する。
(ii)貧困層、特に女性の小規模金融へのアクセス及び革新的な所得創出プログラムを通じた雇用機会のアクセスを増大させる。
(iii)労働集約的な公共事業スキームを含め補完的な所得を提供することにより、最も脆弱な者のための安全網(セーフティー・ネット)措置を講ずる。
(iv)貧困削減プログラムの立案及び実施へのNGO、民間セクター及び地方の地域社会組織の参加を慫慂し、促進する。
開発パートナーは、
(i)アフリカ諸国政府と共同で、貧困削減プログラムの進捗を積極的にモニターし、適切な政策調整を慫慂する。
(ii)国際金融機関(IFIs)が構造調整プログラムの貧困層に与える影響について一層の考慮を払うよう慫慂する。
(iii)開発活動の計画及び管理にかかる地域社会の能力を向上させる研修プログラムを強化するよう支援する。
IV.行動計画
2.経済開発:民間セクターの育成
23.アフリカ諸国にとって主要な課題は、経済成長率を更に引き上げ、維持するとともに、効果的な貧困削減のために雇用を創出し、収入を増加させることである。同時に、グローバリゼーションはアフリカ諸国に更なる課題と新たな機会を与える。その結果、アフリカ諸国は、技術や生産性を向上させ、必須サービスをより効率的に提供するために、労働集約的な技術を含む適正技術の適用を拡大することにより、交易可能な商品とサービスの国際競争力を強化することを目指した国家開発戦略を策定しなければならない。開発パートナーは、アフリカ諸国のこうした努力を支援することが奨励される。
2.1 民間セクター開発
24.アフリカ諸国は、インフォーマル・セクターの零細企業から製造業セクターの中小企業に至る広
範な活動を含む民間企業を、成長の主たる原動力及び富と雇用の創出源としてのみならず、経済・社会開発の鍵を握るものとして支援する考えである。公的セクターは、それに最も適した活動、特に必須の公共サービスの効率的な提供に集中すべきであり、民間セクターがより良く機能することができる活動からは手を引くべきである。民間セクターの成長を促す潜在力が十分に発揮できるように、政府は、アフリカの企業家の創造的才能を奨励するようビジネス活動における現実の、又は予想される制約を除去すべきである。同時に、近代的な市場経済が機能するために不可欠な公的機関の能力が強化される必要がある。増加しつつある都市の貧困層の大部分が雇用されているインフォーマル・セクターの近代化への支援は、貧困削減のために不可欠な要素である。
(a)目標及び目的
(i)特に国内企業の発展に重点をおいて、民間セクターの発展と活動の拡大のための健全で良好な環境を確保する。
(ii)特に輸出を強調しつつ、外国直接投資及び貿易を振興し、大幅に増加させる。
(iii)インフォーマル・セクターを含め、零細、中小企業の発展を図る。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、アフリカ諸国は、
(i)健全なマクロ経済政策の枠組を確立、維持し、また、経済改革の継続と強化、為替、貿易システムと投資レジームの自由化、制度・法的システムの強化、透明性、説明責任性、能力及び職業意識をもって運営される国家組織の改革、及び法の支配に基礎を置く開放経済を確立し、維持する。
(ii)規制改革、民営化及び基幹インフラ(道路・鉄道輸送、電信電話、電力、港湾、船舶及び中継施設を含む)への追加的な投資を通じ効率的な物的インフラを確保し、近代的な情報・通信技術を活用し、そしてインフラの資金手当と運営に民間セクターの参画を奨励する。
(iii)金融仲介システムが規制緩和されながらも適切な監督下におかれるとの条件の下に企業の投資と運転資金の需要を満たす貯蓄の動員を容易にするため、金融セクターの成長、多様化及び強化を奨励し、促進する。
(iv)課税と投資コードの共通化を含め、国境を越えた貿易及び投資の障害を除去し、又は貿易、投資を容易にするための地域統合を促進する。
(v)民間セクターの企業家の、経営上の、及び技術上の能力を向上させる措置を取る。
(vi)ビジネス機会に関する情報を頒布し、見込みのある投資家及び輸出市場を特定して狙いを定め、投資家へサービスを提供し、輸出信用や保険スキームを提供することによって、国及び部分的な地域の投資・貿易促進メカニズムを強化する。
(vii)輸出と投資を促進するために、商工会議所、貿易及び職能組合、並びにこれらの組織の会員に市場情報を提供し、また、研修を行う地域的ネットワークを強化する。
(viii)経済開発戦略に関する共通のビジョンを策定し、民間セクター開発にかかる制約を除去するため、政府と民間セクターの対話を組織する。
(ix)サービス機関及び市民社会の適切な技術支援により零細、中小企業の成長を強化、奨励し、また、女性の企業家に特に留意して小規模金融スキームの強化により企業の資本へのアクセスを改善する。
(x)技術取得、生産改善、研修及び技能開発を支援することにより企業の技術及び経営能力を改善するための支援を行う。
開発パートナーは、
(i)世界市場におけるアフリカ産品の市場アクセスを容易にする。
(ii)投資機会の公表、適当な場合には国別リスク分析に基づく投資家リスク軽減のための保証その他の追加的措置の提供、出資に応じた株式の取得や長期融資の提供、並びに触媒としての譲許的融資の活用を通じてアフリカへの海外直接投資を奨励する。
(iii)民間セクターの能力を構築し、国及び小地域の貿易交渉能力を強化し、世界貿易機構(WTO)に関係する法令を実施し、変化しつつある多国間貿易システムから産まれる新しい貿易機会を捕らえ、これを活用することを支援する。
(iv)企業経営などに関する経験の交流並びにジョイント・ベンチャー、投資及び貿易を促進する協力関係を通じ、TICAD IIの主要な貢献たり得る南南協力とアジア・アフリカ協力の拡大を促す。
(v)小規模金融スキームの設置又は強化を支援する。
2.2 工業開発
25.工業開発は、アフリカ経済が所得と雇用を増大し、輸出を多様化するために必要な構造的変革を成し遂げる上で基本的に重要である。アフリカ諸国においては、「アフリカの工業化のための同盟(AAI)」プログラムに反映されているように加速化された経済的変革は工業開発と農業開発の相乗作用に依存するとの考え方についてコンセンサスが広がりつつある。
(a)目標及び目的
国内の民間セクター、特に輸出と雇用創出の潜在力を有する農業加工業、鉱業及び製造業サブ・セクターの生産、競争力及び多様性を高める。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)工業開発政策と農業開発政策間の連関を強化し、関係政府機関の活動を調和させる。
(ii)農業に基盤を置く工業及びエネルギーと鉱物資源に基盤を置く工業を含め、アフリカが比較優位を有する新規の工業を開発し、又は既存の工業の質を向上させる。
(iii)新興工業国の経験を基礎に工業開発に関するアフリカ・アジアの対話を奨励する。
開発パートナーは、
(i)アジアとアフリカの企業間の情報の共有並びにジョイント・ベンチャー及び下請契約の成立を図るための合同企業協議会のようなメカニズムの構築を通じたパートナーシップを助長する。
(ii)特にアジアのパートナーとのネットワーク化の促進を通じて、工業開発のためのアフリカの研修機関の強化を支援する。
(iii)アフリカ諸国への技術移転を促進する。
2.3 農業開発
26.アフリカの経済パフォーマンス及び貧困削減は、漁業、畜産及び林業の開発を含む農業開発に強く結びついている。農業セクターは、アフリカ大陸のGDPの約35%、輸出の40%及び雇用の70%を占めている。短期・中期的にアフリカが持続的で裾野の広い成長と開発を達成する能力を備えるには、農村経済の再活性化が必要である。そのため、小自作農セクターと女性農民の役割に一層の注意が払われなければならない。地方の生産者と都市の市場との連結を強化することも戦略の重要な一部を成す。
27.近年、より適切な政策、新しい技術、幾つかの商品の交易条件の改善及び幾つかの穀物の収穫高の増加により、アフリカの農業生産は増加し、輸出が増大している。こうした進展にも拘わらず、アフリカの食糧及び換金作物の農業生産及び生産性は依然として低い。特に、多くのアフリカ諸国では、食糧生産が人口増加に追いついていない。脆弱な輸出及び原材料の価格変動のため、アフリカが農業及び工業に必要な機材及び投入財の輸入代金を支払う能力が脅かされている。更に、急速な人口増加による耕作地需要の増大の結果として、土壌流出、土壌の肥沃度の低下、水質の劣化及び森林伐採を含む顕著な環境破壊が生じている。農村人口の都市部への急速な人口移動が見られる中で、農村経済は魅力ある収入獲得の機会を提供することが必要である。
(a)目標及び目的
(i)小農及び女性農民に特に配慮して農業の生産性を改善する。
(ii)総ての人に食糧安全保障を確保し、また、貧困層の十分な食糧と栄養へのアクセスを拡大する。
(iii)天然資源の劣化を防止する対策を促進し、また、環境上持続可能な生産方法を奨励する。
(iv)農村の貧困層を市場経済に統合し、この貧困層に生産資機材及び生産物市場へのより良いアクセスを提供する。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)農場の効率性と収益性を改善するため、生産者価格と消費者価格、生産資機材と生産物の市場、農産品の貿易及び公営農業組織の再編について農業セクター改革を推進する。
(ii)農村インフラの建設及び再建への農民参加を増大し、また、農村における運輸、マーケティング、加工及び貯蔵の分野における民間セクターの発展を支援する。
(iii)農業研究への公共投資を増大し、その研究が小農民及び女性農民のニーズを考慮するよう確保し、キャパシティ・ビルディングのためのアジアとアフリカの研究機関のより緊密な連携を構築し、また、普及サービスの改善を通じて、近代的な技術と生産方法へのアクセスを促進する。
(iv)小規模灌漑施設の建設、地方の水管理の改善並びにアジアとアフリカ間の情報及び技術要員の交流の増大を通じ、農業用水供給の保障を向上させる。
(v)伝統的又は近代的土地所有形態のもとで土地所有の保障を改善する。
(vi)干魃や作物生産をモニターする早期警戒システムの構築、並びに、貧困層のニーズに特に配慮した食糧作物、家畜及び漁獲物の生産、輸送、貯蔵及びマーケティングの拡大を通じ、地域、部分的な地域、国及び家計レヴェルの食糧安全保障を向上させる。
(vii)国連砂漠化対処条約を実施するための域内及びアジア・アフリカ間の協力を強化し、また、適正な土壌と作物耕作技術による土壌肥沃度の向上を図る。
(viii)アジアの農業金融官吏、協同組合及び農民グループとの協力活動を利用して農業信用・融資スキームを向上させ、また、小農民及び女性農民の信用アクセスを改善する。
(ix)農民組織及び協同組合の能力を強化する。
開発パートナーは、
(i)アフリカの食糧その他の農業産品、特に加工品の国際市場へのアクセスを奨励する。
(ii)農業技術、ノウハウ、普及サービス及び農村インフラの分野において、開発パートナー、特にアジアのパートナーとアフリカの間のネットワーク構築を支援する。
(iii)高収穫作物、持続的保存及び貯蔵の分野における研究に対する投資を支援する。
(iv)食品衛生その他の農業貿易規則を含む多国間貿易交渉のための国及び地域レベルの能力向上を支援する。
2.4 対外債務
28.国際社会は、多国間機関の譲許的金融支援、譲許的債務繰延、債務免除及び二国間の譲許的新規融資を含む、低所得国の対外債務負担に対応する一連の措置を実施してきた。更に、IMF及び世銀により策定された重債務貧困国(HIPC)イニシアティブが1996年9月に採択された。HIPCイニシアティブは、強力な調整・改革プログラムの実施に努めている重債務貧困国の債務負担を持続可能な水準まで低減させることを目的としている。アフリカ開発銀行は、1997年にこのイニシアティブへの拠出を承認した。アフリカ7カ国を含む9カ国が債務救済のための決定段階(ディシジョン・ポイント)に達し、アフリカ5カ国を含む7カ国がHIPC支援の適格国と認められてきた。まもなく、その他の幾つかのアフリカ諸国が決定段階に達すると見込まれている。IMF及び世銀は、最近のHIPCイニシアティブの再検討において、両機関が支援する調整プログラムを重債務貧困国が導入することによりHIPCイニシアティブに参加できる最終期限を2000年末まで延長することに合意した。これにより一群のアフリカ諸国(その多くが紛争を終えて間もない国)は、HIPCイニシアティブのもとで要求される良好な政策パフォーマンスの実績記録(トラック・レコード)の積み上げを開始する機会が延長されることになる。更に、IMF及び世銀は、IMFの紛争終了後緊急援助によって支援されたプログラムを個々のケースに応じHIPCイニシアティブの実績記録(トラック・レコード)に加算できることに合意した。これにより幾つかのアフリカ諸国への援助を前倒し供与することが潜在的には可能となる。
(a)目標及び目的
主たる目的は、適当な場合には、債務免除及び債務救済を含む、アフリカ諸国の対外債務問題の持続的な解決を達成することであるべきである。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)ブレトン・ウッズ機関及びアフリカ開発銀行が支援する経済及び構造改革プログラムに合意し、且つこれを実施し、二国間の譲許的債務ストック繰延及び/又はHIPCイニシアティブに基づく支援が検討されるために必要な右プログラムにかかる実績記録(トラック・レコード)を樹立する。
(ii)貧困を削減する観点から、社会的プログラム及びその実施を強化し、また、債務救済から得られた余剰資金を社会セクターに向ける。
(iii)国の会計システムを強化し、債務管理の人材育成を行う。
(iv)持続的な解決を探求するためドナー国・機関との調整を改善する。
(v)利用可能なあらゆる債務救済メカニズムを探求する。
開発パートナーは、
(i)HIPCイニシアティブのための十分な財源を確保し、HIPCイニシアティブの下でコスト負担すべき割当て分を完全に手当てできないおそれのある多国間機関、特にアフリカ開発銀行に対し資金的な支援を行う。
(ii)1998年4月13日付の安全保障理事会に対する国連事務総長のアフリカに関する報告書(S/1998/318)の提案に留意して、HIPCイニシアティブの条件に従い債務救済をより多くの国に拡大することを断固として早急に進める。
(iii)紛争終了国、特に多国間機関に延滞債務を抱える国の債務問題解決のための手法を、適当な場合にはHIPCイニシアティブの枠内を含めて探求する。
(iv)国連事務総長による提案及び1998年5月のバーミンガム・サミットにおけるG8指導者による勧告に留意して、既存のメカニズムでの債務救済の供与を継続し、また、二国間債権者による残存するODA債務の免除又は免除に匹敵する措置を含め、債務繰延を越える、拡大された措置を促進する。
(v)アフリカ諸国の債務プロファイルの改善を支援するため、無償資金供与を含む適切な譲許的資金提供を継続する。
(vi)経済、社会インフラの再建のための債務スワップ・オプションを含む、創造的な新しい解決策を探求する。
(vii)健全なマクロ経済政策及び債務管理の実施にかかるキャパシティ・ビルディングのためのアフリカ諸国の努力を支援する。
3.開発の基盤
29.民主主義及び良い統治は、平和及び安全とともに、アフリカの社会・経済開発にとって不可欠である。民主主義及び良い統治の基本的諸原則は広く受容されているが、アフリカの文脈においてこれを適用するには、それぞれの社会の特殊性、歴史的事情及び文化的現実を考慮に入れるべきである。多くの国における暴力的紛争は、アフリカにおける持続的開発の大きな障害となっており、経済発展を逆行させ、将来の開発を阻んでいる。
3.1 良い統治
30.近年、多くのアフリカ諸国は民主化への著しい進展を遂げた。この前向きな傾向を定着させ、社会・経済開発の更なる進展を持続的に達成するために、アフリカ諸国は、それぞれの文化的及び政治的事情を考慮に入れて良い統治を一層強化する努力を強化する必要がある。
(a)目標及び目的
(i)憲法に基づく正統性並びに行政権、立法権及び司法権の分立の原則に基づいた民主制度を強化する。
(ii)良い統治及び民主主義の基本的な構成要素となる機関を強化する。
(iii)人権の尊重及び法の支配を促進する。
(iv)行政における説明責任、透明性及び効率性を向上させる。
(v)寛容の文化を促進し、意思決定過程への広範な参加、特に女性及び市民社会の参加を促進する。
(vi)異なるエスニック集団と地理的範囲にわたる衡平な開発を奨励することにより、社会正義を促進する。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、
アフリカ諸国は、
(i)複数政党制による民主的選挙が真に自由且つ公正であるよう確保し、また、適切な機関を強化する、
(ii)公正且つ実効的な法の執行を確保するため、独立且つ不偏で、適切な財政基盤にある司法機関を構築する。
(iii)立法機関の人的及び組織的能力を強化し、政策の策定及び予算の立案に関する監督機能を強化する。
(iv)汚職防止対策への制度的支援とともに、無駄の少ない、能力のある、透明性と説明責任を有する、能力主義に基づいた公務員制度の構築を図る。
(v)地方レベルにおいても行政の能力を強化し、また、地方分権化の進行を容易にする。
(vi)地域社会に拠点を置く組織及び女性団体を含め、強力な市民社会の発展を容易にし、また、社会・経済開発に関与する市民社会組織と政府機関の間の真のパートナーシップを強化する。
(vii)独立の人権及びオンブズマン機関を設置し、また、特に人権教育に焦点を当てた市民教育を促進する。
開発パートナーは、
(i)政府の立法、司法及び行政部門の人的及び組織的能力を強化するためのアフリカ諸国の努力を支援する。
(ii)公共サービスの効果的提供のための指標の創設を含め、統治にかかる「最善の慣行」について部分的な地域間或いは地域間で経験の交流を行うよう支援する。
3.2 紛争予防及び紛争後の開発
31.アフリカでは過去何年かにわたり多くの戦争が勃発し、そのため安定と持続的開発を求めるアフリカの努力が阻害されてきた。近年、アフリカでは紛争の予防、管理及び解決において進展が見られる。右に関連し、OAUメカニズムの創設は意義ある前進である。紛争の再発を防ぎ、被災国における紛争後の復興及び再建を開始し、強化するためのOAU及び部分的な地域機関の努力を支援し、且つこれを強化する必要がある。国連事務総長は「アフリカにおける紛争の要因並びに恒久的平和及び持続可能な開発の促進」(S/1998/318)と題する報告を発表したが、これは紛争の潜在的可能性を減少させる行動を具体的に記述している。
(a)目標及び目的
(i)紛争の予防、管理及び解決のためのアフリカの機構及び能力を強化する。
(ii)予防戦略の一環として国、地域及び部分的な地域レベルの有効な信頼醸成措置を発展させ、実施する。
(iii)紛争状況下における緊急援助から復興及び再建を経て紛争後の開発に至る早期に円滑な移行を行う。
(iv)難民及び国内避難民の安全を確保する。
(b)行動のためのガイドライン
上記目標を達成するために、アフリカ諸国は、
(i)小火器及び軽兵器にかかる情報の交換、並びにその非合法取引及び蓄積のモニタリング及び規制によって地域及び小地域の協力を強化する。これらの目的に向けてアフリカ諸国は、小火器の不法な所持及び移転に関する条約を作成する可能性を追求するためのOAU内部の協力を強化することを含めて、国連及び地域メカニズムの枠内において小火器及び軽兵器の取引を登録するための適切な措置について研究する可能性を検討することができる。
(ii)元兵士、動員を解除された兵士及び難民に対する職業訓練を提供し、また、蓄積された武器、特に小火器の効果的な管理及び最終的な破壊のためのプログラムを作成する。
(iii)1997年の対人地雷に関するオタワ条約への加入及び同条約の早期発効を必要に応じて慫慂するよう努力し、また、犠牲者のリハビリを支援するとともに、地雷除去の技術向上のためのプログラムを強化する。
(iv)国連及びOAUの難民関連条約で規定されているような国際的な人道上の諸原則に従って難民の保護及び自発的帰還を確保し、また、受け入れ国政府による難民キャンプ及び定住地の安全及び中立性の維持を支援する国際的メカニズムの設置に向けた作業を行う。
(v)平和構築及び紛争予防への、女性NGO及び女性団体を含む市民社会の積極的参加及び関与を促進する。
開発パートナーは、
(i)警察及び国内治安部隊のキャパシティ・ビルディング並びに国境警備の強化を含む治安と開発の統合的アプローチを支援する。
(ii)紛争の予防、管理及び解決のためのOAU及び部分的な地域機関の能力の強化、並びに紛争予防及び平和維持にかかるアフリカの研修センターの能力強化のために資金的及び技術的支援を継続する。
(iii)通信及びデータ・バンク・システムを通じた所要の情報の収集、分析及び頒布の能力を強化することにより国連及びOAUが早期警戒及び対応システムを開発する努力を支援する。
(iv)被災地区の地雷除去並びに兵士の動員解除及び市民生活への再統合に対し必要な支援を行い、また、地雷除去の経験及び技術についてアジア・アフリカ間の情報交換を拡大する。
(v)潜在的紛争地域に対する小火器の輸出を監視し、予防するために必要な行動をとる。
(vi)緊急援助から開発援助への移行を容易にするため、長期的戦略の枠組の下で資金を動員し、努力を調整することを通じて緊急援助及び紛争後の救済支援、復興、再建並びに開発を支援する。
(vii)児童の軍隊への徴用防止を確保するための支援を行い、また、家族への支援、並びに健全な教育、保養及び雇用機会の提供を通じて、動員解除された少年兵の生産的な社会再統合を行う。
(viii)難民受入れ国による、難民の移動及び定住過程で破壊された社会、経済インフラの復旧を支援する。
V.フォローアップ
32.本行動計画の真の成功如何は、参加者が、TICAD IIプロセスで策定された行動計画をそれぞれの国、地域及び地域間レベルの開発プログラムに統合することにより、如何に効果的に自らのコミットメントを具体的な行動に結びつけることができるかにかかっている。主としてこの行動計画の国、地域及び地域間への統合によってTICAD IIのフォローアップを推進すべきである。この目的に向け、TICAD IIの付加価値的側面、即ち開発協力の一つのあり方としての南南協力、特に民間セクターの協力に力点を置いたアジア・アフリカ諸国間の協力を念頭に具体的な措置が執られるべきである。行動計画に含まれる目標と目的の達成に向けて進展を測定するため、国連、ブレトン・ウッズ機関及びOECDにおいて進行中の作業を考慮に入れて適切な指標が使用されるべきである。目標と目的の達成について評価するために一連のレヴュー会合が開催されるであろう。
33.フォローアップ過程における進展についての情報の共有を一層容易にするために、参加者間のTICAD IIコンタクト・ポイント及び社会の各層に亘って広く情報を提供するインターネット・ホームページが設置されることになる。かかる努力の調整については、共催者が共同で責任をもつこととなろう。