[文書名] 第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABFV) 開会式における橋本副大臣スピーチ
アフリカ及びアジアからご出席の皆様、
本日、第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムが、ここウガンダのカンパラにて、観光促進をテーマに開催されることを嬉しく思います。ウガンダは、「アフリカの真珠」と呼ばれるにふさわしい美しい自然に恵まれ、マウンテンゴリラやチンパンジー等の珍しい動物を見ることができる地であり、初めてこの地を訪れた自分としても、まさに観光を議論するのに相応しい地であることを実感しているところです。ビクトリア湖畔のすばらしい施設を提供下さったホスト国ウガンダに心より感謝申し上げるとともに、共催者を代表して一言ご挨拶申し上げます。
今から1年前、我が国は第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)において2012年までの対アフリカODA倍増や、対アフリカ民間投資の倍増支援など、多くの支援策を打ち出しました。それ以来、我が国はその約束を一つ一つ着実に実行するよう取り組んでいます。一年前には予想されなかった世界金融・経済危機の問題についても、3月にボツワナで開催したTICAD閣僚級フォローアップ会合において対応策を議論し、4月のロンドン・サミットでは、麻生総理からアフリカ支援強化の重要性を訴えました。我が国はこのようにして、何よりもアフリカ諸国の声を尊重しながら、TICAD IVのフォローアップを実施してきています。
今回のフォーラムのテーマである観光振興は、TICAD Ⅳの成果文書である「横浜行動計画」の「成長の加速化」の柱の中で、その重要性が強調されています。観光は、アフリカにとって、今後大いに成長が見込まれる分野であり、金融・経済危機による影響を克服するためにも、重点的に促進していくべき分野であると考えます。
折しも、明年は南アでワールドカップが開催される予定であり、今月6日のウズベキスタン戦において、日本チームは勝利し、出場権を手にしました。ワールドカップはアフリカの観光が世界的に脚光を浴びる好機であり、日本の観光業界もまさにこれからアフリカ向け観光の振興に本腰をいれようとしているところです。今回のフォーラムが「観光」に焦点をあてたことは、誠に時宜を得ており、関係者には本機会を最大限に活用頂ければ幸いです。
ご列席の皆様、
人類発祥の地とされるアフリカは、大自然、多様な動植物、伝統文化の宝庫であり、ユネスコ世界遺産も、全世界878件中、114件がアフリカに存在します。私自身、今回のフォーラムに先立つ事前調査の一環としてルワンダを訪れ、豊富な自然の美しさのみならず、開発に努める人々とその自然との共生のあり方に深い感動を覚え、観光分野における大きな潜在力を確認しました。一方、アフリカではまだまだその潜在力をフルに活用できているとは言い難い面も多々あるのも事実でしょう。
TICAD IIの成果として生み出されたアフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムは、これまで4度開催され、両地域から参加した多分野にわたる民間企業の間で、多くの覚書が結ばれ、民間ベースのパートナーシップ形成に大きく貢献してきました。5回目にあたる今回は、これまでのフォーラムと異なり、観光に特化し、政府関係者も参加して、官民一体となって持続可能な観光開発・促進に取り組むための政策対話を行います。
これから1日半にわたり、アフリカの観光業界が直面している課題と潜在性、アジアの旅行者のニーズに合った観光商品のあり方とその開発の方途、政府関係者が如何にして民間のニーズをうまく取り込み、開発戦略の中に位置づけ、またこれをドナーからの支援に結びつけていけるのか、アフリカにとって極めて重要な財産である自然・文化遺産を維持、保存しつつも、如何にして貧困削減、成長の起爆剤にするか、等につき議論していきます。これまでの成功例に学び、活用可能な資金、技術協力についての知見を深め、より効果的な官民の連携のあり方を見つけるきっかけとなることを期待しています。
JICAでは、観光セクター開発に関し、マスタープラン作り、観光行政の機能・能力強化、観光関連制度の整備、地域住民参加による持続可能な観光の体制作り、観光マーケティング・プロモーション能力の強化等への協力について検討することができます。また、JICA及びJETROによる「一村一品運動」による現地産品の改良は、地元産業の発展とともに観光促進に繋がる重要な事業です。TICAD共催者であるUNDP、世銀、またフォーラムに協力しているUNIDO、UNWTO等も観光促進にかかる各種支援メニューを用意しています。さらに、一般的に観光阻害要因として指摘される水・衛生、電気、道路等の基礎インフラの整備の遅れ等については、開発戦略の文脈で対処できるものがあります。先般ボツワナにおいて開催されたTICADフォローアップ閣僚級会合において、我が国は、当面20億ドルの無償資金・技術協力をできる限り早期に実施することを目指すことを表明し、現在案件発掘を急いでいるところです。アフリカ諸国におかれては、TICAD IVにおけるコミットメントの中で活用可能となっている各種資金ファシリティや技術協力を有効に活用し、効果的に観光促進していただきたいと思います。
ご列席の皆様、
一般的に旅行者が一番重視する点は、安全と衛生であります。これらの点に関しては、すべての関係者が最大限の努力を払う必要があります。他方、アジアにとって依然としてアフリカは遠く、アフリカの情報や知識の不足により、必要以上に、不安定な治安情勢、病気の蔓延といった悪いイメージが先行している場合もあると思われます。このため、アフリカの多様で、素晴らしい観光資源、そして近年目覚ましい発展を遂げているアフリカの実情について、もっと周知される必要があり、アフリカに対するイメージ戦略や関係者の知識向上に、より一層傾注すべきと考えます。日本でも、アフリカの音楽、文化、服飾、ダンス等を紹介するアフリカン・フェスタ、ビジット・ワールド・キャンペーンによる外国観光地の広報、世界旅行博をはじめ、様々なアフリカ広報事業が実施されていますが、アフリカの魅力についてメディア・カバレッジをあげる努力も含め、より一層の取組みが必要と考えます。
本日からのフォーラムにおいては、このような課題について、活発な議論が行われ、観光分野におけるアフリカ・アジア間の相互協力関係が一層強化されることを期待します。そして一人でも多くの人がアフリカを訪れ、アフリカの魅力とバイタリティに触れられることを心より願っております。最後に、フォーラムの成功と参加される皆様の御健勝を心よりお祈りし、私の発言といたします。