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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム (AABF V) アフリカにおける持続的観光開発及び促進のための政策提言に関する議長総括

[場所] ウガンダ(カンパラ)
[年月日] 2009年6月15-17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

アフリカ29カ国ならびにアジア及び中東6カ国の官・民及び市民社会からの参加者は、2009年6月15-17日、ウガンダ・カンパラにおいて第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF V)のために参集した。これは、第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)横浜行動計画の下、アフリカ大陸における観光産業が現在直面する課題や挑戦につき議論するとともに、うまく観光商品を計画・開発・販売し、衛生や安全を含む制約を克服する方策をパートナー国・機関の経験から学ぶためである。参加者は、TICAD IV横浜行動計画の下で次に挙げるニーズを含む特定の措置を追求すべきことに留意した。

・観光研修プログラム等を通じた治安、接客管理、観光振興へのインフラ及び環境面での制約に対処するアフリカ諸国の取組への促進・支援

・観光業者がアフリカの観光地に対する理解を増進し、アフリカ大陸及びその観光名所に関する知識を高めるための支援

・2010年FIFAワールドカップ南ア開催の機会の活用

・旅行フェア等のイベントを通じた長期的な観光促進支援

こうした考えを踏まえ、また上記活動の実施に弾みをつける努力の一環として、参加者は、包括的な官民連携に基づき、あらゆる関係者と団結・協調することの重要性を強調しつつ、以下の政策提言を行った。

1.2010年FIFAワールドカップ及びそれ以降に向け、日本を含むアジア諸国からアフリカへの観光の開発・促進が重点的に取り組まれるべきである。

2.アフリカへの旅行客の動向、客層、志向についての分析に基づき、ターゲットを定めたマーケティング戦略が特定されるべきである。

3.アフリカ諸国政府は、アフリカにおける環境保全・保護を実現しつつ、経済成長を後押しし貧困を削減する方策としての観光促進をねらいとしたプログラム・案件・活動等を実施するために、横浜行動計画下で利用可能となっている種々の資金手段、その他の協力プログラムを有効活用するよう奨励される。国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行グループ、国連工業開発機関(UNIDO)や世界観光機関(UNWTO)等の関係国際機関及びアフリカ大陸内の開発パートナーたちは、コミュニティ・目的地・国家・地域それぞれのレベルで、観光開発に関するアフリカの能力を構築するプログラムを支援する用意がある。このプログラムには、観光の各分野におけるマスタープラン調査や事前調査の実施、観光開発の専門家や語学教師の派遣、観光促進セミナーやワークショップの開催、教育及び意識向上のための教材の作成・配布、コミュニティに根ざした貧困層向け観光プログラム・案件などが含まれる。日本貿易振興機構(JETRO)とJICAによって開始された「一村一品」(OVOP)イニシアティブは、コミュニティによる地域産品開発と海外マーケティングのために、更に拡充されるべきである。UNIDOによって開発されたプログラムである「一村産業クラスター」は、OVOPの応用であり、アフリカの農村コミュニティの生産性を強化することでOVOPを補完すべきである。

4.アフリカ観光産業の民間セクターは、キャパシティ・ビルディング、ビジネス・リンケージや官民パートナーシップの強化、資金手段へのアクセスを通じて支援されるべきである。世界銀行、UNDP、JICA、国際協力銀行(JBIC)、アフリカ開発銀行及びアフリカ地域開発銀行や国営・民営銀行を含む関係機関は、アフリカにおける観光促進のためにアフリカ及びアジア両地域の民間セクターを支援するために適用可能な手段についての情報を積極的に発信するべきである。

5.アフリカの観光産業開発に関連した外国直接投資(FDI)は大いに促進されるべきである。このような投資は、国際的水準のホテルやロッジ、レストラン、航空サービス及びアフリカ産品への付加価値付与のみならず、政策、法律及び規制上の枠組みに関する環境整備に焦点があてられるべきである。日本及び他のアジア諸国の民間セクターは、特に横浜行動計画において利用可能となっている様々な資金手段を有効利用するよう奨励される。UNDPによる「持続可能なビジネス育成(GSB)」メカニズムは、観光分野におけるバリュー・チェーンに係る官民パートナーシップ案件とAABFの他の適切な機会のために利用されるべきである。UNIDOやUNWTOといった関連国際機関は、FDIを増加させて引き寄せるべく、アフリカの観光部門の能力向上のために更なる努力を払うべきである。

6.ベナンによって開始された持続可能な観光開発に関するUNWTOプログラムのような、アフリカ自身によるイニシアティブの重要性を認識しつつ、アフリカ諸国間同士の協力が更に促進されるべきである。

7.アフリカ諸国は、日本及びアジア諸国において、地域ごとのアフリカの観光資源を集合体として普及すべく、アフリカの5つの地域の地域的能力強化のため、TICAD共催者や他のパートナーの支援を得つつ、共同して取り組むべきである。

8.FIFAワールドカップによって与えられた機会を捉えるべく、アジアの空港、特に日本の空港とアフリカ間のチャーター便を含む直行国際航空便の増加が推進されるべきである。

9.観光の潜在性を引き出し、日本や他のアジア諸国の旅行者の関心を惹く新しい観光地を発掘すべく、可能であれば2010年FIFAワールドカップの前にアフリカへ更なる予備調査ミッションが企画されるべきである。

10.アジアのメディア、特にテレビ局や大衆向け雑誌は、アフリカの観光地、魅力のあるもの、ユネスコ世界遺産等を特集した放送、記事等を増加するよう奨励されるべきである。この観点から、アフリカ社会全体としてアフリカのイメージを改善し、アフリカの多数の観光的魅力の認知度を高めるために更に努力すべきである。

11.アフリカにおける旅行者の安全問題に対しては、持続可能な開発と観光促進に取り組む全ての関係者によって最大の関心が払われるべきである。AABF Vに参加する日本政府及び他のアジア諸国によって発出されるアフリカ関連渡航情報は、旅行者の安全を確保しつつ、アフリカ各国が自国において観光を促進するための努力を考慮に入れ得る。

12.TICAD共催者は、上述の活動の進捗をモニターし、TICAD閣僚級フォローアップ会合に提出される、横浜行動計画実施に関する年次進捗報告書の観光開発部分にこれを反映させる。