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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第19回AU閣僚執行理事会における高橋副大臣メッセージ

[場所] 
[年月日] 2011年6月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

イグナシオ・ミラム・タング赤道ギニア首相,

パストール・ミチャ・オンド・ビレAU閣僚執行理事会議長,

ジャン・ピンAU委員会委員長,

AU加盟国大臣・代表団長の皆様,

1.冒頭

第19回AU閣僚執行理事会の開催に当たり,心からのお祝いを申し上げます。

2.震災後のアフリカ諸国からの支援に対する謝意表明と日本のアフリカ支援の決意

ご承知のとおり,3月11日に我が国は未曾有の大震災に襲われました。これにより,多くの人々が尊い命を失い,また,行方不明となっています。津波で被害を受けた福島第一原子力発電所では,事態の収束に向けた取組が日夜続いております。

そのような中,アフリカ諸国から我が国に対し数多くのお見舞いやご支援が寄せられました。私は,大震災を契機として,我が国とアフリカは地理的には離れていながらも,信頼という名の強い絆によって結ばれていることを改めて思い起こしました。日本政府及び国民を代表して,アフリカ諸国を代表する皆様に対し,深甚なる感謝の意を重ねて表明いたします。

5月にダカールで開催されたTICAD閣僚級フォローアップ会合にて松本大臣や私自身から表明しましたとおり,我が国は,震災の苦難を乗り越えて,TICADIVの公約を引き続き誠実に実現していく決意です。そして,アフリカとの連帯を大切にしながら,①平和と安定への貢献,②開発支援と貿易投資の拡大,③グローバルな課題への対応を3つの柱とする対アフリカ外交を力強く進めていきたいと考えております。

3.我が国の対アフリカ外交の3本柱

我が国のアフリカ外交は3本の柱から成ります。

(1)平和と安定への貢献

第1の柱は,「平和と安定への貢献」です。

我が国は,アフリカにおいて,民主化や政治的安定に向けた取組が進展していることを歓迎します。特に,コートジボワールでは,ウワタラ大統領の下で,平和への回帰と国民の和解に向けた取組が進められています。また,スーダンでは,住民投票を通じた南部住民の意思を尊重する形で,7月9日に南スーダンが独立を遂げようとしています。

一方,リビアにおける暴力は直ちに停止されなければなりません。国連,AU等による調整された調停・仲介の取組を重視しています。チュニジア及びエジプトについては,民主的な政治体制への早期移行を期待します。

我が国としてはTICADの下で支援を進め,アフリカにおける平和と安定や民主主義の定着に今後とも貢献していきたいと考えています。平和維持・構築の分野で,選挙支援やPKO訓練センター支援といった貢献を行う考えです。

(2)開発支援と貿易投資の拡大

第2の柱は,「開発支援と貿易投資の拡大」です。

先述のとおり,我が国は,様々な取組を包含するTICADIVの公約を引き続き誠実に実現していく決意です。特に,MDGsとの関連では,「菅コミットメント」として約束した保健・教育分野の支援をはじめとした開発支援を着実に実施していきます。そして,我が国としては,6月初めに東京で開催したMDGsフォローアップ会合の成果の上に立って現行MDGs及び2015年以後の国際目標に関し,アフリカ諸国とも連携しながら,国際社会の議論を引き続き主導していきます。この関連で,2013年に次期MDGsフォローアップ会合を南部アフリカで開催するとの南アからの提案を心から歓迎いたします。

経済に目を転ずれば,アフリカは,前向きで着実な成長を実現しつつあります。我が国は,アフリカの自律的な成長に向けて,援助だけではなく,民間投資の促進を含む一体的な取組を官民連携して進めていく考えです。

(3)グローバルな課題への対応

第3の柱は,「グローバルな課題への対応」です。アフリカは,我が国が様々なグローバルな課題への取組を進めるにあたり,不可欠のパ ートナーとなっています。

特に,気候変動分野では,11月の南アでのCOP17を控え,アフリカ諸国の動向が大きな鍵を握っています。我が国は,すべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際的枠組みを構築する新しい 1つの包括的な法的文書の速やかな採択を目指し,アフリカ諸国との連携を強化したいと考えています。また,我が国としては,アフリカの気候変動対策を引き続き支援しながら,先のTICAD閣僚級フォローアップ会合においてアフリカ諸国と策定することとされた「アフリカ低炭素成長・持続可能な開発戦略」の具体化に向けて,アフリカ諸国と協力していきます。

国連安保理改革の早期実現は,我が国とアフリカ諸国の一致した願いです。創設以来65年以上が経過したにもかかわらず,基本的な構成を変えていない安保理を改革し,21世紀の国際社会の現実を反映するものにしなくてはなりません。

安保理の議題の半分以上はアフリカに関連するものです。安保理において,アフリカの代表性は常任理事国という形で確保されるべきです。

我が国は,こうした状況を速やかに改善すべく,改革志向の国々とともに,改革を前に進めるための動きを推進しています。改革の気運が大きく高まりつつある中,改革の早期実現に向けて,アフリカ諸国とともに取り組んでいきたいと考えています。

4.日AU関係の深化

最後に,AUとの関係について述べたいと思います。

AUは,平和・安全保障,開発の双方の分野において,益々重要な役割を果たすようになっています。これを背景として,先般のTICAD閣僚級フォローアップ会合では,AU委員会は,はじめて共催者として準備・開催プロセスに参画したところです。

我が国としては,昨年8月のピン委員長の訪日に発出された共同コミュニケに基づいて,今後とも日AU関係を着実に進展させるとともに,AUをパートナーとして,今後のTICADプロセスを推進させていきたいと考えています。

5.結語

アフリカには,貧困,紛争,ガバナンスといった様々な課題が残されていますが,アフリカは「希望と機会の大陸」として国際社会の注目を集めています。我が国としては,大震災を契機に再確認されたアフリカとの連帯を深めながら,アフリカとともに歩みを進めていく考えであることを述べ,結びとさせて頂きます。

(了)