データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念閣僚会議:中根政務官演説

[場所] 
[年月日] 2015年4月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1 はじめに

 インドネシア共和国ルトノ・マルスディ外務大臣閣下、各国の閣僚の皆様、御列席の皆様、

今般の記念会議の開催とアジア・アフリカのパートナーシップの発展に対するインドネシアの貢献に心から感謝いたします。60年前、バンドンで、日本は、平和国家として国家発展に努める決意を表明しました。あれから60年、成長著しいアジアとアフリカは更に大きな可能性を秘めています。本年を、アジア・アフリカの連帯を一層強化する機会としたいと思います。

2 アジア・アフリカに対する日本の協力、「積極的平和主義」

(1)開発協力・経済パートナーシップ

議長、

 日本は過去60年間、アジアのパートナーと手を携えて地域の発展に取り組んできました。日本のODAは、インフラや投資環境の整備、人材育成に貢献し、民間投資を呼び込み、それが雇用の拡大、技術移転につながり、アジアの持続的成長に大いに寄与してきました。

 アフリカは、日本にとって重要なパートナーです。20年以上の歴史を有するTICADプロセスを通じ、日本は、アジアで培ってきた経験を生かしつつ、引き続きアフリカの「質の高い成長」に寄与していきます。

 中東の平和と安定の実現のため、日本は長年にわたって、パレスチナ、イラクやアフガニスタンをはじめ、国づくり、人づくりに積極的に貢献してきました。

 日本は、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、地域及び国際社会の平和と安定及び繁栄に向け、これまで以上に一層貢献していく考えです。

 これら全ての地域において、包摂性、持続可能性、強靱性を兼ね備えた「質の高い成長」の実現と、人間の安全保障の推進に貢献していきます。そのため、貿易・投資の呼び水としてのODAの活用、官民連携と質の高いインフラ投資、農業・漁業も含めた産業の育成、人材育成、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)等を推進し、重層的な協力を展開していきます。

(2)平和と安定への貢献、テロ対策等

議長、

 このような経済発展は、平和と安定がその前提です。日本は、「法の支配」の貫徹、対話・信頼醸成の促進等を実施してきました。

 アジアにおいては、カンボジア、ミャンマー、フィリピン・ミンダナオ、スリランカなどにおける平和構築と国民和解、民主化支援に取り組んできました。6月には、東京で「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベルセミナー」を開催する予定です。

 アフリカにおいても、PKO訓練センターへの支援、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)やソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動への自衛隊派遣等、平和と安定に向けた取組を継続しています。

 活力に満ち安定した中東を取り戻すため、日本は、<1>国境管理支援等のテロ対策強化、<2>人道支援の拡充を含む中東の安定と繁栄に向けた外交の強化、<3>過激主義を生み出さない社会の構築支援を3本柱として、積極的に進めていきます。

 また、日本は、「平和と繁栄の回廊」構想など、中東やアジアのパートナーと協働しつつ、中東和平の実現に向けた独自の取組を強化しています。その一環として、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)は、まさにアジアの知恵と経験をパレスチナの発展に活かすためのイニシアティブであり、バンドン精神を体現するものと言えましょう。

(3)アジア・アフリカ共通の課題

議長、

 アジア、アフリカ地域においては、引き続き共通の課題が存在し

ます。

 感染症対策については、日本は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金を通じた貢献、エボラ出血熱対策のための約1.73億ドルの支援、個人防護具の供与や専門家派遣、技術面での貢献等を実施しており、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)については、強靱な保健システムの構築支援や各国の好事例を学び合う環境づくり等を実施していきます。

 また、女性の地位向上のため、「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!)」を今後毎年開催するとともに、UNウィメン、紛争下の性的暴力担当特別代表事務所への拠出等を推進していきます。

 防災については、「仙台防災協力イニシアティブ」として、ソフト、ハード、グローバルな協力と広域協力の推進を効果的に組み合わせ、2015年から2018年の4年間で計40億ドルの協力、4万人の人材育成を実施していきます。

 1854年11月5日に日本で大津波が発生した際、多くの人を避難させ、命が救われた逸話があります。世界共通の課題である津波の脅威と対策に理解と関心を高めるため、11月5日を世界津波の日に制定することを提案いたします。

 アジア・アフリカが共通の課題に取り組むための三角協力の推進も表明いたします。知識と経験の共有が鍵であり、日本は、保健・医療、教育、農業などの分野で自らの知見を活かしつつ、南南協力の推進をサポートしていきます。

 最後に,今年はバンドン60周年であるとともに国連創設70周年でもあります。アジア・アフリカの著しい台頭を含め,現在の国際社会の現実を反映するため,安保理改革は急務です。本年に具体的な成果を得るため,御列席の各国と手を携えていきます。

3 終わりに

議長、

 バンドン精神の中核の原則は、連帯、友好そして協力です。アジ

ア・アフリカ諸国との間で、バンドン精神を踏まえ、一層相互理解を深めていきたいと考えます。

(了)

{文中の<1>はマル1、<2>はマル2、<3>はマル3}