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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 投資の促進及び保護に関する日本国とザンビア共和国との間の協定

[場所] 
[年月日] 2025年2月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

投資の促進及び保護に関する日本国とザンビア共和国との間の協定

 日本国及びザンビア共和国(以下「両締約国」という。)は、

 両締約国間の経済関係を強化するために投資を更に促進することを希望し、

 一方の締約国の投資家による他方の締約国の領域における投資を拡大するための安定した、衡平な、良好な及び透明性のある条件を更に作り出すことを意図し、

 両締約国において投資家の発意を促し、及び繁栄を促進する上で投資の漸進的な自由化を図ることが一層重要になっていることを認識し、

 一般に適用される健康上、安全上及び環境上の措置を緩和することなしに、これらの目的を達成することが可能であることを認識し、

 両締約国間の投資を促進する上で労働者と使用者との間の協調的な関係が重要であることを認識し、

 この協定が、各締約国が自国の公共政策上の目的を実現するためにその領域における投資をこの協定に適合する態様で規制することを可能とするものとして作成されていることを認識して、

 次のとおり協定した。


  第一章 投資

   第一条 定義

この協定の適用上、

(a)「投資財産」とは、投資家が直接又は間接に所有し、又は支配している全ての種類の資産をいい、次のものを含む。

 (ⅰ)企業及び企業の支店

 (ⅱ)株式、出資その他の形態の企業の持分

 (ⅲ)債券、社債、貸付金その他の債務証書

 (ⅳ)先物、オプションその他の派生商品

 (ⅴ)契約(完成後引渡し、建設、経営、生産又は利益配分に関する契約を含む。)に基づく権利

 (ⅵ)金銭債権及び金銭的価値を有する契約に基づく給付の請求権

 (ⅶ)知的財産権(著作権及び関連する権利、特許権並びに実用新案、商標、意匠、集積回路の回路配置、植物の新品種、営業用の名称、原産地表示又は地理的表示及び開示されていない情報に関する権利を含む。)

 (ⅷ)法令又は契約によって与えられる権利(例えば、特許、免許、承認、許可。天然資源の探査及び採掘のための権利を含む。)

 (ⅸ)他の全ての資産(有体であるか無体であるかを問わず、また、動産であるか不動産であるかを問わない。)及び賃借権、抵当権、先取特権、質権その他の関連する財産権

 投資財産には、投資財産から生ずる価値、特に、利益、利子、資本利得、配当、使用料及び手数料を含む。投資される資産の形態の変更は、その投資財産としての性質に影響を及ぼすものではない。

(b)「投資に関する合意」とは、一方の締約国の中央又は地方の政府又は当局と他方の締約国の投資家又はその投資財産であって当該一方の締約国の領域にある企業であるものとの間の書面合意であり、当該投資家又は当該投資財産が当該一方の締約国における投資財産の設立又は取得に当たり依拠するものをいう。

  注釈 「書面合意」とは、両当事者によって作成される書面による合意であって、当該両当事者の間に権利及び義務を創設し、かつ、第二十四条11(b)の規定に基づく準拠法により当該両当事者に対して拘束力を有するもの(単一の文書によるものであるか、複数の文書によるものであるかを問わない。)をいう。この場合において、

  (ⅰ)行政当局若しくは司法当局の一方的な行為(例えば、締約国がその規制権限のみに基づいて与える許可、免許又は承認)又は政令、命令若しくは判決のみをもって、書面合意であるとはされない。

  (ⅱ)行政上又は司法上の同意判決又は同意命令は、書面合意であるとはされない。

(c)「締約国の投資家」とは、次の者であって、他方の締約国の領域において投資を行おうとし、行っており、又は既に行ったものをいう。

 (ⅰ)一方の締約国の法令によりその国籍を有する自然人

 (ⅱ)一方の締約国の企業

(d)「企業」とは、営利目的であるかどうかを問わず、また、民間又は政府のいずれが所有し、又は支配しているかを問わず、関係法令に基づいて適正に設立され、又は組織される法人その他の事業体(社団、信託、組合、個人企業、合弁企業、団体、組織及び会社を含む。)をいう。

(e)「締約国の企業」とは、締約国の関係法令に基づいて適正に設立され、又は組織される企業をいう。

(f)「投資活動」とは、投資財産の運営、経営、維持、使用、享有及び売却その他の処分をいう。

(g)「領域」とは、それぞれの締約国について、当該締約国の領域並びに当該締約国が国際法に従い主権的権利又は管轄権を行使する排他的経済水域及び大陸棚をいう。

(h)「自由利用可能通貨」とは、国際通貨基金協定に定義する自由利用可能通貨をいう。

(i)「世界貿易機関設立協定」とは、千九百九十四年四月十五日にマラケシュで作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定をいう。

(j)「貿易関連知的所有権協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定をいう。

(k)「申立人」とは、一方の締約国の投資家であって、他方の締約国との間の投資紛争の当事者であるものをいう。

(l)「被申立人」とは、投資紛争の当事者である締約国をいう。

(m)「一方の紛争当事者」とは、申立人又は被申立人をいう。

(n)「紛争当事者」とは、申立人及び被申立人をいう。

(o)「非紛争締約国」とは、投資紛争の当事者でない締約国をいう。

(p)「ICSID」とは、投資紛争解決国際センターをいう。

(q)「ICSID追加的制度規則」とは、投資紛争解決国際センターの事務局が手続を実施するための追加的な制度を規律する規則をいう。

(r)「ICSID追加的制度仲裁規則」とは、ICSID追加的制度規則に従って行われる仲裁手続に適用する規則をいう。

(s)「ICSID条約」とは、千九百六十五年三月十八日にワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約をいう。

(t)「ニューヨーク条約」とは、千九百五十八年六月十日にニューヨークで作成された外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約をいう。

(u)「UNCITRAL仲裁規則」とは、国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則をいう。


   第二条 投資の促進及び許可

1 一方の締約国は、自国の領域において他方の締約国の投資家による投資が行われるための良好な条件を醸成する。

2 一方の締約国は、自国の関係法令(外国人による所有及び支配に関するものを含む。)に従って権限を行使する自国の権利を留保の上、他方の締約国の投資家による投資を許可する。


   第三条 内国民待遇

1 一方の締約国は、自国の領域において、投資活動に関し、他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、同様の状況において自国の投資家及びその投資財産に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

2 1の規定は、一方の締約国が、自国の領域における他方の締約国の投資家の投資活動に関して特別な手続を定める措置を採用し、又は維持することを妨げるものと解してはならない。ただし、当該手続は、この協定に基づく当該他方の締約国の投資家の権利を実質的に害するものであってはならない。


   第四条 最恵国待遇

1 一方の締約国は、自国の領域において、投資活動に関し、他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、同様の状況において第三国の投資家及びその投資財産に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

  注釈 この条に規定する待遇には、国際協定に規定する国際的な紛争解決のための手続又は制度を含まない。

2 一方の締約国は、自国の領域において、投資の許可に関連する事項に関し、他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、同様の状況において第三国の投資家及びその投資財産に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。

3 2の規定は、次のものについては、適用しない。

 (a)次のものに関する措置

 (ⅰ)土地の取得又は賃貸借

 (ⅱ)補助金

 (ⅲ)政府調達

 (b)締約国が相互主義に基づいて第三国の投資家及びその投資財産に与える待遇

 (c)植物の新品種の保護、航空、漁業又は海事(海難救助を含む。)に関する二国間又は多数国間の国際協定の当事国であることに伴う特恵的な待遇

 (d)法の執行及び矯正に係るサービスへの投資に関する措置並びに所得に関する保障又は保険、社会保障又は社会保険、社会福祉、公衆のための訓練、保健、保育、公営住宅等の社会事業サービスへの投資に関する措置

 (e)電信サービス、公営競技等に係るサービス、たばこの製造、締約国の中央銀行の銀行券の製造、貨幣の製造及び販売並びに郵便サービスへの投資に関する措置

 (f)締約国の領海、内水、排他的経済水域及び大陸棚における漁業への投資に関する措置


   第五条 一般的待遇

 一方の締約国は、自国の領域において、他方の締約国の投資家の投資財産に対し、国際慣習法に基づく待遇(公正かつ衡平な待遇並びに十分な保護及び保障を含む。)を与える。「公正かつ衡平な待遇」及び「十分な保護及び保障」の概念は、外国人の待遇に関する国際慣習法上の最低基準が要求する待遇以上の待遇を与えることを求めるものではなく、また、追加の実質的な権利を創設するものではない。

   第六条 裁判所の裁判を受ける権利

 一方の締約国は、自国の領域において、他方の締約国の投資家の権利の行使及び擁護のため全ての審級にわたり裁判所の裁判を受け、及び行政機関に対して申立てをする権利に関し、当該他方の締約国の投資家に対し、同様の状況において自国の投資家又は第三国の投資家に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。


   第七条 特定措置の履行要求の禁止

1 いずれの一方の締約国も、自国の領域における締約国又は第三国の投資家の投資活動に関し、次の事項の要求を課し、又は強制することができず、また、当該事項を約束し、又は履行することを強制することができない。

 (a)一定の水準又は割合の物品又はサービスを輸出すること。

 (b)当該投資家の投資財産により生産される物品又は提供されるサービスの自国の領域における販売を、輸出数量若しくは輸出価額と又は外国為替収入と何らかの形で関連付けることにより制限すること。

 (c)当該投資家と自国の領域内の自然人又は企業との間で任意に締結されるライセンス契約(既に締結されたものかどうかを問わない。)について次の事項を採用すること。ただし、当該一方の締約国が政府の権限の行使として、次の事項の要求を課し、又は次の事項を約束し、若しくは履行することを強制する場合に限る。

 (ⅰ)当該ライセンス契約の下での使用料に係る一定の率又は額

 (ⅱ)当該ライセンス契約の有効期間に係る一定の期間

  注釈 この(c)に規定する「ライセンス契約」とは、技術、製造工程その他の財産的価値を有する知識の移転に関するライセンス契約をいう。

 (d)製造工程その他の財産的価値を有する知識を自国の領域内の自然人又は企業に移転すること。

 (e)自国の領域に当該投資家の特定地域又は世界市場に向けた事業本部を設置すること。

 (f)自国の領域において一定の水準又は価額の研究開発を達成すること。

 (g)当該投資家が生産する物品又は当該投資家が提供するサービスの一又は二以上を、特定地域又は世界市場に向けて自国の領域のみから供給すること。

2 いずれの一方の締約国も、自国の領域における締約国又は第三国の投資家の投資活動に関し、利益の享受又はその継続のための条件として、当該投資家の投資財産により生産される物品又は提供されるサービスの自国の領域における販売を、輸出数量若しくは輸出価額と又は外国為替収入と何らかの形で関連付けることにより制限することができない。

3 (a)2の規定は、一方の締約国が、自国の領域における締約国又は第三国の投資家の投資活動に関し、利益の享受又はその継続のための条件として、自国の領域において、生産拠点を設け、サービスを提供し、労働者を訓練し、若しくは雇用し、特定の施設を建設し、若しくは拡張し、又は研究開発を行うことを要求し、これに従うことを求めることを妨げるものと解してはならない。

 (b)1(c)及び(d)の規定は、競争法についての申し立てられた違反に係る救済措置として司法裁判所、行政裁判所又は競争当局が1(c)若しくは(d)に規定する事項の要求を課し、又は当該事項を約束し、若しくは履行することを強制する場合には、適用しない。

 (c)1(d)の規定は、貿易関連知的所有権協定に反しない態様で行われる知的財産権の移転に関する要求である場合には、適用しない。

4 世界貿易機関設立協定附属書一A貿易に関連する投資措置に関する協定の規定は、必要な変更を加えた上で、この協定に組み込まれ、この協定の一部を成す。

5 1及び2の規定は、これらの規定に定める要求以外のいかなる要求についても、適用しない。


   第八条 透明性

1 各締約国は、自国の法令、行政上の手続、一般に適用される行政上及び司法上の決定並びに国際協定であって、この協定の実施及び運用に関連し、又は影響を及ぼすものを速やかに公表し、又は公に入手可能なものとする。

2 一方の締約国は、他方の締約国の要請があった場合には、1に規定する事項に関し、速やかに、当該他方の締約国の個別の質問に応じ、及び当該他方の締約国に対して情報を提供する。

3 1及び2の規定は、締約国に対し、秘密の情報であって、その開示が法令の実施を妨げ、若しくは公共の利益に反することとなり、又はプライバシー若しくは正当な商業上の利益を害することとなるものの開示を義務付けるものと解してはならない。


   第九条 公衆による意見提出の手続

 各締約国は、緊急の場合又は純粋に軽微な場合を除くほか、自国の法令に従い、この協定の対象となる事項に影響を及ぼす一般に適用される規制を設定し、改正し、又は廃止する前に、公衆による意見提出のための合理的な機会を与えるよう努める。


   第十条 腐敗行為の防止に関する措置

 各締約国は、自国の法令に従い、この協定の対象となる事項に関する腐敗行為を防止し、及び阻止するために、措置をとり、及び努力を払うことを確保する。


   第十一条 投資家の入国、滞在及び居住

 一方の締約国は、自国の関係法令に従い、投資活動を行うことを目的として自国の領域に入国し、及び滞在することを希望する他方の締約国の国籍を有する自然人、当該他方の締約国の企業が雇用する従業員並びに当該他方の締約国の企業の役員、理事及び取締役の入国、滞在及び居住を許可する。


   第十二条 収用及び補償

1 いずれの一方の締約国も、自国の領域にある他方の締約国の投資家の投資財産の収用若しくは国有化又はこれに対する収用若しくは国有化と同等の措置(以下「収用」という。)を実施してはならない。ただし、次の全ての要件を満たす場合は、この限りでない。

 (a)公共の目的のためのものであること。

 (b)差別的なものでないこと。

 (c)2から5までの規定に従って行われる迅速、適当かつ実効的な補償の支払を伴うものであること。

 (d)正当な法の手続に従って実施するものであること。

2 補償は、収用が公表された時又は収用が行われた時のいずれか早い方の時における収用された投資財産の公正な市場価格に相当するものでなければならない。公正な市場価格には、収用が事前に公に知られることにより生じた価格の変化を反映させてはならない。

3 補償については、遅滞なく支払うものとし、収用の日から支払の日までに発生した商業的に妥当な金利に基づく利子を含むものとし、実際に換価すること及び自由に移転することができるものとする。

4 支払が自由利用可能通貨によって行われる場合には、支払われる補償には、収用の日から支払の日までに発生した利子であって、当該自由利用可能通貨についての商業的に妥当な金利に基づくものを含める。

5 締約国が自由利用可能通貨以外の通貨によって支払うことを選択する場合には、支払われる補償は、(a)に規定する市場価格に(b)に規定する利子を加えた額を支払の日の市場における為替相場により当該自由利用可能通貨以外の通貨に換算した額を下回らないものとする。

 (a)収用の日における公正な市場価格であって、その日の市場における為替相場により自由利用可能通貨に換算したもの

 (b)収用の日から支払の日までに発生した利子であって、(a)の自由利用可能通貨についての商業的に妥当な金利に基づくもの

6 この条の規定は、貿易関連知的所有権協定に基づく知的財産権に関する強制実施許諾の付与又は知的財産権の取消し、制限若しくは創設については、当該付与又は当該取消し、制限若しくは創設が貿易関連知的所有権協定に適合する限りにおいて、適用しない。


   第十三条 損失又は損害に対する補償

1 一方の締約国は、武力紛争又は自国の領域における緊急事態(例えば、革命、暴動、国内争乱その他これらに類する事件)により、自国の領域にある投資財産に関連する損失又は損害を被った他方の締約国の投資家に対し、原状回復、損害賠償、補償その他の解決方法に関し、自国の投資家又は第三国の投資家に与える待遇のうち当該他方の締約国の投資家にとっていずれか有利なものよりも不利でない待遇を与える。

2 1の規定の適用を妨げることなく、一方の締約国の投資家が1に規定する事態において他方の締約国の領域において次に掲げる行為によって損失を被った場合には、当該他方の締約国は、当該投資家に対し、当該損失について必要に応じて原状回復、補償又はその双方を与える。

 (a)当該他方の締約国の軍隊又は当局による当該投資家の投資財産の全部又は一部の徴発

 (b)当該他方の締約国の軍隊又は当局による当該投資家の投資財産の全部又は一部の破壊であって当該事態において必要とはされなかったもの

3 1及び2に規定する解決方法の手段としての支払が行われる場合には、当該支払については、実際に換価すること、自由に移転すること及び市場における為替相場により自由利用可能通貨に自由に交換することができるものとする。

4 いずれの締約国も、第十六条2の規定に従ってとる措置を理由として、1及び2の規定に基づく義務を免除されない。


   第十四条 代位

 一方の締約国又はその指定する機関が、自国の投資家に対し、他方の締約国の領域にある当該投資家の投資財産に関する損害の塡補に係る契約、保証契約又は保険契約に基づいて支払を行う場合には、当該他方の締約国は、当該支払の原因となった当該投資家の権利又は請求権の当該一方の締約国又はその指定する機関への移転を承認する。当該他方の締約国は、前段に規定する支払が行われた場合には、当該一方の締約国又はその指定する機関が、代位により、当該投資家の当初の権利又は請求権と内容及び範囲において同じ権利又は請求権を行使する権利を有することを承認する。当該権利又は請求権の移転に基づき当該一方の締約国又はその指定する機関に対して行われる支払及び当該支払に係る資金の移転については、前二条及び次条の規定を準用する。


   第十五条 資金の移転

1 一方の締約国は、自国の領域にある他方の締約国の投資家の投資財産に関連する全ての資金の移転が、自国の領域に向け又は自国の領域から、自由に、かつ、遅滞なく行われることを確保する。この資金の移転には、特に次のものの移転を含める。

 (a)当初の資金及び投資財産を維持し、又は増大させるための追加的な資金

 (b)投資財産から生ずる収益(利益、利子、資本利得、配当、使用料及び手数料を含む。)

 (c)契約に基づいて行われる支払であって、投資財産に関連するもの(融資の返済を含む。)

 (d)投資財産の全部又は一部の売却又は清算によって得られる収入

 (e)当該一方の締約国の領域にある投資財産に関連する活動に従事する当該一方の締約国外から赴任した者が得る収入その他の報酬

 (f)第十二条及び第十三条の規定に従って行われる支払

 (g)紛争の結果として生ずる支払

2 各締約国は、更に、資金の移転が遅滞なく、かつ、自由利用可能通貨により当該資金の移転の日の市場における為替相場で行われることを確保する。

3 1及び2の規定にかかわらず、締約国は、次の事項に関する自国の法令を衡平、無差別かつ誠実に適用する場合には、資金の移転を遅らせ、又は妨げることができる。

 (a)破産、支払不能又は債権者の権利の保護

 (b)証券、先物、オプション又は派生商品の発行、交換又は取引

 (c)刑事犯罪

 (d)法執行当局又は金融規制当局を支援するために必要である場合には、通貨その他の支払手段の移転に関する報告又は記録の保存

 (e)裁決手続における命令又は判決の履行の確保

 (f)租税及び課徴金の支払の履行の確保


   第十六条 一般的例外及び安全保障のための例外

1この協定のいかなる規定も、一方の締約国が次の措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、これらの措置を、自国の領域における他方の締約国の投資家及びその投資財産に対する恣意的若しくは不当な差別の手段又は偽装した制限となることとなる態様で適用しないことを条件とする。

 (a)人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置

 (b)公衆の道徳の保護又は公の秩序の維持のために必要な措置。もっとも、公の秩序を理由とする例外は、社会の基本的な利益のうちのいずれかに対し真正かつ重大な脅威がもたらされる場合に限り、援用することができる。

 (c)この協定に反しない法令の遵守を確保するために必要な措置。この措置には、次の事項に関する措置を含む。

 (ⅰ)欺まん的若しくは詐欺的な行為の防止又は契約の不履行がもたらす結果の処理

 (ⅱ)個人の情報を処理し、及び公表することに関連するプライバシーの保護又は個人の記録及び勘定の秘密の保護

 (ⅲ)安全

 (d)美術的、歴史的又は考古学的価値のある国家的財産の保護のためにとる措置

2 第十三条4の規定に従うことを条件として、この協定のいかなる規定も、締約国が次の措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。

 (a)自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める措置。この措置には、次の措置を含む。

 (ⅰ)戦時、武力紛争の時その他の自国又は国際関係における緊急時にとる措置

 (ⅱ)兵器の不拡散に係る国内政策又は国際協定の実施に関連してとる措置

 (b)国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基づく義務に従ってとる措置

3 この協定のいかなる規定も、締約国に対し、その開示が自国の安全保障上の重大な利益に反すると当該締約国が決定する情報の提供又は当該情報へのアクセスを要求するものと解してはならない。

4締約国は、2の規定に基づいてこの協定に基づく義務に適合しない措置をとる場合であっても、当該義務を回避するための手段として当該措置を用いてはならない。


   第十七条 一時的なセーフガード措置

1 いずれの締約国も、次のいずれかの場合には、国境を越える資本取引及び投資財産に関連する取引のための支払又は資金の移転(第十五条に規定する資金の移転を含む。)について制限的な措置を採用し、又は維持することができる。

 (a)国際収支及び対外支払に関して重大な困難が生じ、又は生ずるおそれがある場合

 (b)資本の移動が経済全般の運営、特に金融政策及び為替政策に重大な困難をもたらし、又はもたらすおそれがある例外的な場合

2 1に規定する制限的な措置は、次の全ての要件を満たすものとする。

 (a)他方の締約国に対し、第三国よりも不利でない待遇を与えるよう適用されるものであること。

 (b)国際通貨基金協定に適合するものであること。

 (c)1に規定する状況に対処するために必要な限度を超えないものであること。

 (d)一時的なものであり、かつ、1に規定する状況が改善するに伴い漸進的に廃止されるものであること。

 (e)他方の締約国に対して速やかに通報されるものであること。

 (f)他方の締約国の商業上、経済上又は金融上の利益に対して不必要な損害を与えることを避けるものであること。

3 一方の締約国は、1の規定に基づく措置を採用した場合において、他方の締約国の要請があったときは、自国が採用した制限の見直しのため、当該他方の締約国と協議を開始する。


   第十八条 信用秩序の維持のための措置

1 この協定の他の規定にかかわらず、締約国は、信用秩序の維持のための金融サービスに関連する措置(投資家、預金者、保険契約者若しくは信託上の義務を金融サービスを提供する企業が負う者を保護し、又は金融システムの健全性及び安定性を確保するための措置を含む。)をとることを妨げられない。

2 締約国は、1の規定に基づいてとる措置がこの協定に適合しない場合には、当該措置をこの協定に基づく当該締約国の義務を回避するための手段として用いてはならない。


   第十九条 知的財産権

1 両締約国は、知的財産権への十分かつ効果的な保護を与え、及び確保し、並びに知的財産の保護に関する制度の効率性及び透明性を促進する。この目的のため、両締約国は、いずれか一方の締約国の要請があった場合には、速やかに協議する。各締約国は、その協議の結果に基づき、他方の締約国の投資家の投資財産に悪影響を及ぼしていると認められる要因を除去するために、自国の法令に従い、適当な措置をとる。

2 この協定のいかなる規定も、知的財産権の保護に関する多数国間協定であって両締約国が当事国であるものに基づく両締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

3 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国に対し、知的財産権の保護に関する多数国間協定であって自国が当事国であるものにより第三国の投資家及びその投資財産に与えている待遇を、他方の締約国の投資家及びその投資財産に与えることを義務付けるものと解してはならない。


   第二十条 租税に係る課税措置

1 この協定のいかなる規定も、租税条約に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。この協定と当該租税条約とが抵触する場合には、その抵触の限りにおいて、当該租税条約が優先する。

 2第三条及び第四条の規定は、租税に係る課税措置については、適用しない。


 第二十一条 健康、安全及び環境に関する措置並びに労働基準

 一方の締約国は、健康、安全若しくは環境に関する自国の措置の緩和又は自国の労働基準の引下げを通じて他方の締約国及び第三国の投資家による投資を奨励することが適当でないことを認める。一方の締約国は、自国の領域における他方の締約国及び第三国の投資家による投資財産の設立、取得又は拡張を奨励する手段として当該措置又は当該基準の適用の免除その他の逸脱措置を行うべきではない。

第二十二条 利益の否認

1一方の締約国は、他方の締約国の投資家であって当該他方の締約国の企業であるものが第三国の投資家によって所有され、又は支配されており、かつ、次のいずれかの場合に該当するときは、当該他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、この協定による利益を否認することができる。

 (a)当該一方の締約国が当該第三国と外交関係を有していない場合

 (b)当該第三国に関する措置であって、当該他方の締約国の企業との取引を禁止するもの又は当該他方の締約国の企業若しくはその投資財産に対してこの協定による利益を与えることにより当該措置に違反し、若しくは当該措置を阻害することとなるものを当該一方の締約国が採用し、又は維持する場合

2一方の締約国は、他方の締約国の投資家であって当該他方の締約国の企業であるものが第三国又は自国の投資家によって所有され、又は支配されており、かつ、当該他方の締約国の企業が当該他方の締約国の領域において実質的な事業活動を行っていないときは、当該他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、この協定による利益を否認することができる。

3この条の規定の適用上、

 (a)企業が投資家によって「所有」されるとは、当該投資家が当該企業の五十パーセントを超える持分を受益者として所有する場合をいう。

 (b)企業が投資家によって「支配」されるとは、当該投資家が当該企業の役員の過半数を指名し、又は当該企業の活動につき法的に指示する権限を有する場合をいう。


  第二章 紛争解決

   第二十三条 両締約国間の紛争の解決

1 一方の締約国は、この協定の実施に影響を及ぼす問題に関して他方の締約国が行う申入れに対し好意的な考慮を払うものとし、かつ、当該申入れに関する協議のための適当な機会を与える。

2 この協定の解釈及び適用に関する両締約国間の紛争であって、外交交渉によっても満足な調整に至らなかったものは、仲裁委員会に決定のため付託する。仲裁委員会は、紛争ごとに次の方法によって構成する。各締約国は、いずれか一方の締約国が他方の締約国から当該紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から六十日以内に、各一人の仲裁委員を任命する。このようにして任命された二人の仲裁委員は、両締約国の承認により仲裁委員長となる者として任命される第三の仲裁委員を選定する。ただし、当該第三の仲裁委員は、いずれの締約国の国民であってもならない。仲裁委員長は、他の二人の仲裁委員の任命の日から六十日以内に任命される。

3 2に定める必要な任命が2に規定する期間内に行われなかった場合には、いずれの締約国も、別段の合意がある場合を除くほか、ハーグの常設仲裁裁判所事務総長に対し当該任命を行うよう要請することができる。

4 仲裁委員会は、両締約国との協議の後、自己の手続規則を定める。仲裁委員会は、この協定並びに対象となる事項に適用可能な国際法の規則及び原則に従って紛争について決定を行う。仲裁委員会は、合理的な期間内に投票の過半数による議決で決定を行う。当該決定は、最終的なものであり、かつ、拘束力を有する。

5 各締約国は、自国が選定した仲裁委員に係る費用及び自国が仲裁に参加する費用を負担する。仲裁委員長がその職務を遂行するための費用及び仲裁委員会の残余の費用は、両締約国が均等に負担する。


   第二十四条 一方の締約国と他方の締約国の投資家との間の投資紛争の解決

1 申立人と被申立人との間に投資紛争が生ずる場合には、両者は、まず、協議及び交渉(拘束力を有しない第三者による手続の利用を含めることができる。)を通じて当該投資紛争を解決するよう努めるべきである。

2 一方の紛争当事者が、協議及び交渉によって投資紛争が解決されないと認める場合には、申立人は、次のことを行うことができる。

 (a)自己のために、次の事項から成る請求をこの条の規定による仲裁に付託すること。

 (ⅰ)被申立人が次のいずれかに違反したこと。

   (A)前章の規定に基づく義務

   (B)当該申立人が当事者である投資に関する合意

 (ⅱ)(ⅰ)に規定する違反を理由とする又はその違反から生ずる損失又は損害を当該申立人が被ったこと。

 (b)当該申立人が直接又は間接に所有し、又は支配している法人である被申立人の企業のために、次の事項から成る請求をこの条の規定による仲裁に付託すること。

 (ⅰ)被申立人が次のいずれかに違反したこと。

   (A)前章の規定に基づく義務

   (B)当該企業が当事者である投資に関する合意

 (ⅱ)(ⅰ)に規定する違反を理由とする又はその違反から生ずる損失又は損害を当該企業が被ったこと。

3 申立人は、被申立人に対し、この条の規定による仲裁に請求を付託する少なくとも九十日前に、そのような付託の意図の書面による通知(以下「付託の意図の通知」という。)を送付する。付託の意図の通知には、次の事項を明記する。

 (a)当該申立人の氏名又は名称及び住所並びに2(b)の規定によって付託する請求の場合には2(b)に規定する企業の名称、住所及び設立場所

 (b)各請求について、違反があったとされる前章の条項又は投資に関する合意の条項その他関連する条項

 (c)各請求に関する法的根拠及び事実に係る根拠

 (d)当該申立人が求める救済手段及び損害賠償請求額の概算

4 申立人は、請求を生じさせる事態の発生から六箇月が経過したことを条件として、2に規定する請求を次のいずれかの仲裁に付託することができる。

 (a)ICSID条約による仲裁。ただし、両締約国がICSID条約の当事国である場合に限る。

 (b)ICSID追加的制度規則による仲裁。ただし、次のいずれかの場合に限る。

 (ⅰ)いずれの締約国もICSID条約の当事国でない場合

 (ⅱ)いずれか一方の締約国のみがICSID条約の当事国である場合

 (c)UNCITRAL仲裁規則による仲裁

 (d)紛争当事者が合意する場合には、他の仲裁機関又は仲裁規則による仲裁

5 この条の規定による仲裁については、請求は、次のいずれかの時に付託されたものとみなす。

 (a)申立人による仲裁の請求であって、ICSID条約第三十六条1に規定するものをICSID事務局長が受領した時

 (b)申立人による仲裁の請求であって、ICSID追加的制度仲裁規則第二規則に規定するものをICSID事務局長が受領した時

 (c)申立人による仲裁に関する通知であって、UNCITRAL仲裁規則第三条に規定するものを、UNCITRAL仲裁規則第二十条に規定する請求の陳述書とともに被申立人が受領した時

 (d)4(d)の規定により他の仲裁機関又は仲裁規則による仲裁が選択された場合には、申立人による当該仲裁に関する通知を被申立人が受領した時。ただし、当該仲裁機関又は当該仲裁規則において別段の定めがある場合は、この限りでない。

 (a)及び(b)に規定する仲裁の請求並びに(c)及び(d)に規定する仲裁に関する通知は、以下この条において「仲裁の通知」という。

6 各締約国は、この協定の規定に従ってこの条の規定による仲裁に請求を付託することに同意する。2(a)(ⅰ)(B)又は(b)(ⅰ)(B)の規定に従って請求が付託される場合において、投資に関する合意が紛争解決の場を指定する規定を定めるときは、当該規定は、当該投資に関する合意の違反を主張する請求について前段に規定する同意の取消し又は排除と解してはならない。

7 6の規定にかかわらず、この条の規定による仲裁への請求の付託は、申立人が2の規定によって申し立てられる違反が発生したこと及び2(a)の規定によって付託する請求の場合には申立人、2(b)の規定によって付託する請求の場合には2(b)に規定する企業が損失又は損害を被ったことを知った又は知るべきであった最初の日から三年が経過した場合には、行うことができない。

8 この条の規定による仲裁への請求の付託は、次のいずれかの場合に該当するときを除くほか、行うことができない。

 (a)2(a)の規定によって付託する請求については、次の条件を満たす場合

 (ⅰ)申立人が、この条に定める手続による仲裁に書面により同意すること。

 (ⅱ)申立人が、いずれかの締約国の法律の下にある行政裁判所若しくは司法裁判所又は他の紛争解決手続において、2(a)(ⅰ)に規定する違反を構成するとされる措置に関する手続を開始し、又は継続する権利を書面により放棄すること。

 (b)2(b)の規定によって付託する請求については、次の条件を満たす場合

 (ⅰ)申立人及び2(b)に規定する企業の双方が、この条に定める手続による仲裁に書面により同意すること。

 (ⅱ)申立人及び2(b)に規定する企業の双方が、いずれかの締約国の法律の下にある行政裁判所若しくは司法裁判所又は他の紛争解決手続において、2(b)(ⅰ)に規定する違反を構成するとされる措置に関する手続を開始し、又は継続する権利を書面により放棄すること。

9 8(a)(ⅰ)又は(b)(ⅱ)の規定に従って行われる放棄は、仲裁廷が3、4、7若しくは8に規定する要件が満たされないこと又は他の手続上の若しくは管轄権に関する根拠に基づいて請求を却下する場合には、その効力を失う。

10 8(a)(ⅱ)及び(b)(ⅱ)の規定にかかわらず、申立人又は2(b) に規定する企業は、被申立人の法律の下にある行政裁判所又は司法裁判所において、暫定的な差止めによる救済(損害賠償の支払を伴わないものに限る。)の申立てを行い、又は当該申立てに係る手続を継続することができる。

11 (a)仲裁廷は、2(a)(ⅰ)(A)又は(b)(ⅰ)(A)の規定により請求が付託される場合には、この協定及び関係する国際法の規則に従って、係争中の事案について決定する。

 (b)仲裁廷は、2(a)(ⅰ)(B)又は(b)(ⅰ)(B)の規定により請求が付託される場合には、次のものを適用する。

 (ⅱ)関連する投資に関する合意に規定する法規その他紛争当事者が合意する法規

 (ⅱ)法規が規定されていない場合その他紛争当事者により合意されていない場合には、被申立人の法令

 (法の抵触に関する規則を含む。)

12 被申立人は、非紛争締約国に次のものを送付する。

 (a)仲裁の通知(仲裁の請求が付託された日の後三十日以内に送付する。)

 (b)仲裁において提出された全ての主張書面の写し

13 非紛争締約国は、紛争当事者への書面による通知を行った上で、この協定の解釈に関する問題につき仲裁廷に対して意見を提出することができる。

14 被申立人は、この条の規定による仲裁において、抗弁、反対請求若しくは相殺として、又はその他の目的のために、申立人が申し立てられた損害の全部又は一部に対する塡補その他の補償を保険契約又は保証契約に基づいて既に受領したこと又は将来受領することを主張してはならない。

15 仲裁廷は、次の事項についてのみ裁定を下すことができる。

 (a)被申立人が、申立人及びその投資財産に関し、前章の規定に基づく義務又は2(a)(ⅰ)(B)若しくは(b)(ⅰ)(B)に規定する投資に関する合意に基づく義務に違反したかどうか。

 (b)違反があった場合には、次の救済措置のいずれか一方又は双方

 (ⅰ)損害賠償及び適当な利子

 (ⅱ)原状回復。この場合の裁定においては、被申立人が原状回復に代えて損害賠償及び適当な利子を支払うことができることを定めるものとする。

 仲裁廷は、仲裁に係る費用及び代理人の報酬についても、適用される仲裁規則に従って裁定を下すことができる。

16 15の規定に従うことを条件として、2(b)の規定によって付託する請求の場合には、

 (a)損害賠償及び適当な利子の支払を命ずる裁定においては、支払が2 に規定する企業に対して行われることを定めるものとする。

 (b)原状回復を命ずる裁定においては、原状回復が2 に規定する企業に対して行われることを定めるものとする。

 (c)裁定においては、自然人又は企業が救済につき関係法令に基づいて有するいかなる権利にも当該裁定が影響を及ぼすものではないことを定めるものとする。

17 被申立人は、次に掲げる情報を除くほか、4の規定により設置される仲裁廷に提出され、又は当該仲裁廷が発する全ての文書(裁定を含む。)を時宜を失することなく公に入手可能なものとすることができる。

 (a)業務上の秘密の情報

 (b)いずれかの締約国の法令により、特に秘密とされ、又は他の方法により開示から保護される情報

 (c)関連する仲裁規則に従って不開示としなければならない情報

18 紛争当事者は、関係する仲裁規則による仲裁の法律上の場所について合意することができる。紛争当事者が合意に達しない場合には、仲裁廷は、関係する仲裁規則に従って当該場所(ニューヨーク条約の当事国の領域内に限る。)を決定する。

 19仲裁廷の裁定は、最終的なものであり、かつ、紛争当事者を拘束する。当該裁定は、執行が求められている国における有効な裁定の執行に関する関係法令及び関連する国際法(ICSID条約及びニューヨーク条約を含む。)に従って執行される。


   第二十五条 紛争解決の適用除外

 外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。その改正を含む。)に基づく日本国の決定であって、同法に基づく事前届出を要する投資に関するもの(投資の内容の変更又は投資に係る手続の中止の命令を含む。)は、この章の紛争解決の規定の対象とならない。

   第二十六条 文書の送達

1 この章の規定による仲裁に関する通知その他の文書は、次の送達先への交付により締約国に送達する。

 (a)日本国については、外務省国際法局

 (b)ザンビア共和国については、外務国際協力省

2 一方の締約国は、1に規定する当局の名称の変更を速やかに公に入手可能なものとし、他方の締約国に通報する。

3 各締約国は、1及び2に規定する自国の当局の住所を公に入手可能なものとする。


  第三章 合同委員会

   第二十七条 合同委員会

1 両締約国は、この協定の目的を達成するため、次のことを任務とする合同委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

 (a)この協定の実施及び運用について討議し、及び見直しを行うこと。

 (b)この協定の範囲内の投資に関連する事項であって投資環境の整備に関係するものについて情報を交換し、及び討議すること。

 (c)投資に関連するその他の事項であってこの協定に関係するものについて討議すること。

2 委員会は、必要に応じ、この協定の機能を強化し、又はこの協定の目的を達成するため、コンセンサス方式による決定により、両締約国に対して適当な勧告を行うことができる。

3 委員会は、両締約国の代表者から成る。委員会は、両締約国の同意が得られる場合には、両締約国政府以外の関係団体の代表者であって、討議する問題に関連する必要な専門知識を有するものを招請すること及び民間部門との共同会合を開催することができる。

4 委員会は、任務を遂行するため自己の手続規則を定める。

5 委員会は、小委員会を設置し、当該小委員会に対して特定の作業を委任することができる。

6 委員会は、いずれかの締約国の要請があった場合には、会合する。


  第四章 最終規定

   第二十八条 見出し

 この協定中の章及び条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。


   第二十九条 協定の適用範囲

1 この協定は、一方の締約国の投資家の投資財産であって、この協定の効力発生の前に他方の締約国の領域において当該他方の締約国の法令に従って取得されたものについても適用する。

2 この協定の終了の日の前に取得された投資財産に関しては、この協定の規定は、この協定の終了の日から更に十年の期間引き続き効力を有する。

3 この協定は、この協定の効力発生の前に生じた事態に起因する請求については、適用しない。


   第三十条 見直し

 両締約国は、いずれか一方の締約国の要請があった場合には、両締約国間の投資を更に促進し、及び漸進的に自由化することを目的として、この協定の見直しを行う。


   第三十一条 効力発生

 両締約国は、この協定の効力発生のために必要とされるそれぞれの国内手続の完了を外交上の経路を通じて相互に通告する。この協定は、双方の通告が受領された日のうちいずれか遅い方の日の後三十日目の日に効力を生ずる。


   第三十二条 有効期間及び終了

1 この協定は、この協定の効力発生の後十年の期間効力を有するものとし、その後は、2に定めるところに従って終了する時まで引き続き効力を有する。

2 いずれの一方の締約国も、一年前に他方の締約国に対して書面による通告を行うことにより、最初の十年の期間の終わりに、又はその後いつでも、この協定を終了させることができる。


   第三十三条 改正

 この協定は、両締約国の書面による合意により改正することができる。改正は、第三十一条に規定するところにより効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。


 二千二十五年二月六日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。



     日本国のために
       竹内一之

     ザンビア共和国のために
       チポカ・ムレンガ