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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とブラジル合衆国との間の航空運送協定(日伯航空運送協定,日・ブラジル航空運送協定)

[場所] リオデジャネイロ
[年月日] 1956年12月14日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

日本国とブラジル合衆国との間の航空運送協定


   昭和三一年一二月一四日 リオ・デ・ジャネイロ市で署名
   昭和三二年三月二六日 国会承認
   昭和三七年一〇月一六日 批准の内閣決定
   昭和三七年一〇月一六日 批准書認証
   昭和三七年一〇月一九日 東京で批准書交換
   昭和三七年一〇月一九日 公布(条約第一四号)
   昭和三七年一〇月一九日 効力発生


 日本国政府及びブラジル合衆国政府は、

 商業航空の可能性を絶えず大きくすることがますます重要となつてきていること、

 この運送手段が、迅速な連絡をもたらすその本質的な特徴により、諸国民を互に近づけるための最良の手段となること、

 航空運送の分野における国際協力の発展を考慮しつつ、国及び地域の利益を害することなく、国際定期航空業務を安全なかつ秩序ある形態に組織することが望ましいこと並びに

 両国の間に定期航空交通を確保するため協定を締結することが必要であることを認めるので、また、

 両国が千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名のために開放された国際民間航空条約の当事国であるので、

 この協定を締結するため、次のとおりその全権委員を任命した。

 日本国

   ブラジル合衆国駐在日本国特命全権大使 安東義良

 ブラジル合衆国

   外務大臣 ジョゼ・カルロス・デ・マセ-ド・ソア-レス

   航空大臣 エンリケ・フレイウス

 これらの全権委員は、その全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。

   第一条

 この協定の適用上、文脈により別に解釈される場合を除くほか、

 (a) 「航空当局」とは、日本国にあつては運輸省及び同省が現在遂行している任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいい、ブラジル合衆国にあつては航空大臣及び同大臣が現在遂行している任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいう。

 (b) 「指定航空企業」とは、第三条の規定に従い、一方の締約国が、他方の締約国に対し、通告書により、その通告書に定める路線における航空業務の運営について指定し、かつ、他方の締約国が適当な運営許可を与えた航空企業をいう。

   第二条

 両締約国は、この協定の附属書に掲げる定期航空業務(以下「協定業務」という。)を開設することができるようにするため、同附属書に定める権利を相互に許与する。

   第三条

1 各協定業務は、権利を許与された締約国の選択により、即時又は後日開始することができる。ただし、次のことが行われた後でなければならない。

 (a) 権利を許与された締約国が一又は二以上の特定路線について一又は二以上の航空企業を指定すること。

 (b) 権利を許与する締約国が当該航空企業に対し適当な運営許可を与えること。(同締約国は、2及び第七条の規定に従うことを条件として、遅滞なくこの許可を与えなければならない。)

2 権利を許与する締約国の航空当局は、他方の締約国が指定した各航空企業が、同航空当局により国際運輸に従事する航空企業の運営に通常適用される法令で定める要件を満たす者である旨を立証することを、その航空企業に要求することができる。

   第四条

 差別的な慣行を防止し、及び待遇の平等を確保するため、

1 いずれか一方の締約国が空港その他の施設の使用について他方の締約国の一又は二以上の指定航空企業に課し、又は課することを許す料金は、類似の国際業務に従事する自国の航空機が当該空港その他の施設を使用するために支払う料金よりも高額のものであつてはならない。

2 いずれか一方の締約国の領域内に他方の締約国が自己若しくはその指定航空企業の名において持ち込み、又は同領域内で当該他方の締約国が自己若しくはその指定航空企業の名において航空機に積載する燃料、潤滑油及び予備部品で、当該他方の締約国の指定航空企業の航空機によつて使用されることのみを目的とするものに対しては、当該一方の締約国が課する関税、検査手数料その他の課徴金に関し、国際航空運送業務に従事する当該一方の締約国の航空企業又は最恵国の航空企業に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えるものとする。

3 一方の締約国が協定業務において運航する航空機並びにこの航空機に積載している燃料、潤滑油、予備部品、正規の装備品及び航空機貯蔵品に対しては、それらの機用品が当該航空機により他方の締約国の領域内における飛行中に使用される場合を含めて、同領域内において、関税、検査手数料及びこれらに類似する租税又は課徴金を免除するものとする。

   第五条

 一方の締約国が発給し、又は有効と認めた耐空証明書、技能証明書及び免状でなお効力を有するものは、協定業務の運営に関しては、他方の締約国も、これを有効と認めなければならない。もつとも、各締約国は、自国の額域{前2文字ママ}の上空の飛行に関しては、自国民に対して他方の締約国又は他のいずれかの国が与えた技能証明書及び免状を有効と認めることを拒否する権利を留保する。

   第六条

1 一方の締約国の法令で、国際航空に従事する航空機の当該一方の締約国の領域への入国若しくは同領域からの出国又は同領域内にある間の当該航空機の運航及び航行に関するものは、他方の締約国の一又は二以上の指定航空企業の航空機に対し適用されるものとする。

2 一方の締約国の法令で、航空機の旅客、乗組員又は貨物の当該一方の締約国の領域への入国又は同領域からの出国に関するもの(たとえば、入国、出国、移民、旅券、税関及び検疫に関する法令)は、他方の締約国の一又は二以上の指定航空企業の航空機の旅客、乗組員及び貨物に対し、それらが当該一方の締約国の領域内にある間、適用されるものとする。

   第七条

 各締約国は、他方の締約国が指定した航空企業の実質的な所有及び実効的な支配が当該他方の締約国の国民に属していないと認めた場合、当該指定航空企業が、前条に掲げる法令に違反し、若しくは許与される権利に関する条件をこの協定及びその附属書に従つて履行しなかつた場合又は運航される航空機の乗組員が、訓練中の期間を除き、当該他方の締約国の国民でない場合には、当該他方の締約国の指定した航空企業がこの協定の附属書に定める権利を行使することを拒否し、停止し、又は取り消す権利を留保する。

 いずれの一方の締約国も、前記の権利を行使するに先だつて、両締約国の航空当局の間で協議を行うことを要請することができる。この協議は、その要請の日から六十日以内に開始するものとする。

   第八条

 いずれの一方の締約国も、この協定の附属書の条項を修正することが望ましいと認めたときはいつでも、このため他方の締約国との協議を要請することができる。この協議は、要請があつた日から六十日以内に両締約国の航空当局の間で開始するものとする。附属書の修正に関して合意が成立したときは、その修正は、外交上の経路を通じて公文の交換により確認された後に効力を生ずるものとする。

   第九条

1 この協定の解釈又は適用に関して両締約国間に紛争が生じた場合には、両締約国は、まず、両国の間の交渉によつてその紛争を解決するように努めなければならない。

2 両締約国が交渉によつてその紛争を解決することができなかつた場合には、

 (a) 両締約国は、勧告的報告を求めるため、両国の合意により任命する仲裁裁判所又は他の者若しくは機関にその紛争を付託することを合意することができる。

 (b) 仲裁裁判所にその紛争を付託する合意が成立しなかつたとき、又はその合意が成立した場合において当該裁判所の構成に関して合意が成立しなかつたときは、いずれの一方の締約国も、勧告的報告を求めるため、国際民間航空機関理事会にその紛争を付託することができる。

 (c) 両締約国は、前記の勧告的報告に表明された意見を実行するため、その行使することができる権限の範囲内で、最善の努力を尽すものとする。

   第十条

 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し、この協定を廃棄する意思をいつでも通告することができる。その通告は、国際民間航空機関に対して同時に送付するものとする。その通告があつたときは、この協定は、当該他方の締約国がその通告を受領した日の後九箇月で終了する。ただし、両締約国間の合意により当該廃棄通告が前記の九箇月の期間が経過する前に取り消された場合は、この限りでない。当該他方の締約国が廃棄通告の受領を確認しなかつたときは、国際民間航空機関が当該通告を受領した日の後十四日を経過した時に通告が受領されたものとみなす。

   第十一条

 両締約国が受諾する一般的な多数国間の航空運送条約が効力を生じたときは、この協定は、その条約の規定に適合するように改正しなければならない。

   第十二条

 この協定及び第八条の規定に従つて交換される公文は、国際民間航空機関に登録しなければならない。

   第十三条

 この協定は、各締約国の憲法上の要件に従つて批准されなければならない。この協定は、批准書が交換された日に効力を生ずるものとする。批准書の交換は、できる限りすみやかに東京で行われなければならない。

   第十四条

 この協定は、日本語、ポルトガル語及び英語で作成される。解釈の相違がある場合には、英語の本文による。

 以上の証拠として、各全権委員は、この協定に署名調印した。

 千九百五十六年十二月十四日にリオ・デ・ジャネイロ市で本書二通を作成した。

 日本国のために

   安東義良

 ブラジル合衆国のために

   ジョゼ・カルロス・デ・マセ-ド・ソアーレス

   エンリケ・フレイウス


附属書

   第一項

 ブラジル合衆国政府は、日本国政府に対し、日本国政府が指定した一又は二以上の航空企業にこの附属書の附表第一に定める路線において国際航空業務を運営させる権利を許与する。

   第二項

 日本国政府は、ブラジル合衆国政府に対し、ブラジル合衆国政府が指定した一又は二以上の航空企業にこの附属書の附表第二に定める路線において国際航空業務を運営させる権利を許与する。

   第三項

 各締約国が本協定及びこの附属書で定める条件に基いて指定する航空企業は、他方の締約国の領域内において、通過する権利、国際運輸のために指定されたすべての空港において運輸以外の目的で着陸する権利並びにこの附属書の附表に掲げる地点で国際運輸の対象たる旅客、貨物及び郵便物を積み込み及び積み卸す権利を享有するものとする。

   第四項

(a) 両締約国の指定航空企業が供給する航空輸送力は、運輸需要量と密接な関係を有しなければならない。

(b) 両締約国の指定航空企業は、附表に定める路線における業務に関し公平なかつ均等な機会を有するものとする。

(c) 両締約国の指定航空企業は、路線上の共通の部分において業務を行うときは、相互の利益を考慮して、それぞれの業務に不当な影響を及ぼさないようにしなければならない。

(d) 指定航空企業が本協定及びこの附属書に基いて行う業務は、当該航空企業を指定した国と運輸の最終目的地たる国との間の運輸需要量に適合する輸送力を供給することを第一の目的としなければならない。

(e) 各締約国の指定航空企業が第三国へ向け、又は第三国から来る国際運輸の対象たる貨客を附表に掲げる一又は二以上の地点で積み込み又は積み卸す権利は、両締約国が賛同する秩序ある発展の諸原則に従つて行使されなければならず、また、輸送力が次のものに関連すべきであるという原則に従わなければならない。

 (1) 運輸の出発地たる国と運輸の目的地たる国との間の運輸需要量

 (2) 直通航空業務運営上の要求

 (3) 当該航空企業の路線が経由する地域の地方的業務を考慮した上での当該地域の運輸需要量

   第五項

 両締約国の航空当局は、そのいずれか一方の要請により、両締約国が指定した航空企業が前項に掲げる原則をどの程度守つているかを検討し、本協定又はこの附属書に定めるいずれかの原則の濫用により、運輸量がいずれかの指定航空企業から妥当な限度をこえて横取りされることを防止するために、協議するものとする。もつとも、この協議は、前記の防止の目的のためいずれか一方の締約国が執ることがあるいかなる措置をも停止させる効果を有するものではない。

   第六項

 いずれか一方の締約国の航空当局は、他方の締約国の航空当局の要請があつたときは、当該一方の締約国の指定航空企業が協定業務において供給する輸送力の検討のために合理的に必要とされる定期の又はその他の統計表を他方の締約国の航空当局に提供しなければならない。その統計表は、前記の指定航空企業が協定業務において運送する貨客の総計を知るために必要なすべての情報を含むものでなければならない。

   第七項

 一方の締約国の一又は二以上の指定航空企業が第四項(b)の規定を一時活用できない理由となつている障害を他方の締約国の力で除くことができるときは、両締約国は、当該指定航空企業が同項(b)に定める協定業務に参加する公平なかつ均等な機会を十分に活用することを援助する目的で、事態を検討するものとする。

   第八項

(a) いずれの協定業務に対する運賃も、運営の経費、合理的な利潤、提供する役務の特性(たとえば、速力及び設備の程度)及び特定路線のいずれかの部分についての他の航空企業の運賃を含むすべての関係要素に十分な考慮を払い、合理的な水準に定めなければならない。これらの運賃は、この項の規定に従つて定めるものとする。

(b) 運賃に関する合意は、可能なときはいつでも、関係指定航空企業が国際航空運送協会の運賃決定機関を通じて行うものとする。それが不可能なときは、各特定路線及びその各部分に関する運賃は、関係指定航空企業の間で合意しなければならない。いずれの場合にも、合意された運賃は、両締約国の航空当局の認可を受けなければならない。

(c) 各締約国の一又は二以上の指定航空企業は、他方の締約国の航空当局の法令又は指示に従つて、当該航空当局に対し、(b)の規定に基いて決定される運賃で当該航空企業が実施しようとするものを、当該運賃が実施される日の少くとも三十日前に提出しなければならない。ただし、両締約国の航空当局は、特別の事由がある場合には、この三十日の期間を合意により変更することができる。

(d) 関係指定航空企業が運賃に関し(b)の規定に従つて合意することができなかつた場合又はいずれか一方の締約国の航空当局が提出された運賃を(b)の規定に従つて認可しなかつた場合には、両締約国の航空当局は、適当な運賃について合意が成立するように努めなければならない。

(e) (d)の規定に基く合意が成立しなかつた場合には、その紛争は、本協定第九条の規定に従つて解決しなければならない。

(f) 新たな運賃は、いずれか一方の締約国の航空当局が当該運賃について満足しない場合には、実施してはならない。ただし、本協定第九条2(c)の規定に基く場合は、この限りでない。この項の規定に従つて運賃が決定されるまでの間は、すでに実施されている運賃が適用されるものとする。

   第九項

 いずれか一方の締約国が行う附表に定める路線上の地点の入替え又は追加による変更は、他方の締約国の領域内の地点に関する変更の場合を除くほか、この附属書の修正と認めてはならない。よつて、いずれの一方の締約国の航空当局も、一方的に前記の変更を行うことができる。ただし、他方の締約国の航空当局に対し遅滞なくその変更を通告しなければならない。

 前記の変更の結果、当該他方の締約国の航空当局が第四項に掲げる原則を考慮した上で自国の一又は二以上の指定航空企業の利益が前記の変更によつて害されると認めた場合であつて、その変更が当該一方の締約国の一又は二以上の指定航空企業による当該他方の締約国の領域内の地点と第三国の領域内の新たな地点との間の貨客の運送に関連するときは、両締約国の航空当局は、満足すべき合意が成立するように協議しなければならない。

第十項

 両締約国の航空当局は、本協定が効力を有する間、附表に定める路線又はそのいずれかの部分において運営するそれぞれの指定航空企業に与えた許可の内容に関しすみやかに情報を交換するものとする。この情報の交換は、特に、与えた許可及び随時行われるその修正の写を含むものとする。

 日本国のために

   安東義良

 ブラジル合衆国のために

   ジョゼ・カルロス・デ・マセード・ソアーレス

   エンリケ・フレイウス


附表第一

 日本国の一又は二以上の指定航空企業が運営する路線

I 両方向に、日本国内の地点-北太平洋における地点-カナダの西海岸における地点及び(又は)アメリカ合衆国の西海岸における地点-メキシコ・シティ又はハヴァナ-パナマ-ボゴタ及び(又は)カラカス-マナウス-ゴイアニア-リオ・デ・ジャネイロ及び(又は)サン・パウロ

II 両方向に、日本国内の地点-中部太平洋における地点-アメリカ合衆国の西海岸における地点-メキシコ・シティ又はハヴァナ-パナマ-ボゴタ及び(又は)カラカス-マナウス-ゴイアニア-リオ・デ・ジャネイロ及び(又は)サン・パウロ

 日本国の一又は二以上の指定航空企業が前記の路線において行う協定業務は、日本国の領域内の一地点を起点とするものでなければならない。ただし、当該路線上の他の地点は、いずれか又はすべての飛行に当つて、当該指定航空企業の選択により省略することができる。

注 マナウス-ゴイアニア-リオ・デ・ジャネイロ及び(又は)サン・パウロの路線は、同路線について国際運営のための準備ができるまで、一時的に次のとおり変更する。

   両方向に、ベレム-バレイラス-リオ・デ・ジャネイロ及び(又は)サン・パウロ


附表第二

 ブラジル合衆国の一又は二以上の指定航空企業が運営する路線

I 両方向に、ブラジル合衆国内の地点-カラカス及び(又は)ボゴタ-パナマ-ハヴァナ又はメキシコ・シティ-アメリカ合衆国の西海岸における地点及び(又は)カナダの西海岸における地点-北太平洋における地点-東京及び(又は)大阪

II 両方向に、ブラジル合衆国内の地点-カラカス及び(又は)ボゴタ-パナマ-ハヴァナ又はメキシコ・シティ-アメリカ合衆国の西海岸における地点-中部太平洋における地点-大阪及び(又は)東京

 ブラジル合衆国の一又は二以上の指定航空企業が前記の路線において行う協定業務は、ブラジル合衆国の領域内の一地点を起点とするものでなければならない。ただし、前記の路線上の他の地点は、いずれか又はすべての飛行に当つて、指定航空企業の選択により省略することができる。

注 大阪空港は、同空港が国際航空業務に提供される準備ができたときに使用される。