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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とペルー共和国との間の協定

[場所] 東京
[年月日] 1961年5月15日
[出典] 外交青書6号,37−40頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びペルー共和国政府は、両国間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化すること、両国間の通商関係を強化し、かつ、発展させること並びに両国民の生活水準を改善するため相互に有益な投資及びその他の形態の経済的協力を助長することを希望して、両国間の通商関係を公正かつ衡平な基礎の上に規律する通商に関する協定を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

日本国政府

外務大臣 小坂善太郎

ペルー共和国政府

特派特命全権大使 フェデリコ・ヒルベック・セミナリオ

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を交換し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

第一条

 すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連する規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。

第二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。

第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の現行の関係法令及び行政規則に従って当該他方の締約国の領域に入り、同領域に居住し、及び同領域内を旅行することができ、かつ、すべての事項に関して、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を受けるものとする。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受けること、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業並びに商業的及び経済的活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、特許権の取得及び保有並びに商標、営業用の名称及び営業用の標章に関する権利並びにすべての種類の工業所有権に関して、当該他方の締約国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

4 2の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは脱税の防止のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

第四条

 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためにされ、かつ、当該他方の締約国の憲法及び法律の規定に従って正当に補償される場合を除くほか、収用し、又は使用してはならない。この条で取り扱うすべての事項については、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、当該他方の締約国又は第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第五条

 一方の締約国国民又は会社と他方の締約国の国民又は会社との間に締結された仲裁による紛争の解決を規定する契約は、いずれの一方の締約国の領域内においても、仲裁手続のために指定された地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、執行することができないものと認めてはならない。その契約に従って正当にされた判断で、判断がされた地の法令に基づいて確定しており、かつ、執行することができるものは、いずれの一方の締約国の領域内においても、その判断がされた地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、無効と認め、又は執行のための有効な手段を拒否してはならない。

第六条

1 第一条及び第二条の規定は、いずれか一方の締約国が与えているか又は将来与える次の特別の利益には適用しない。

(a) 内国漁業の産品に与える利益

(b) 国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益

(c) 当該一方の締約国が加盟国であるか若しくは加盟国となる関税同盟又は構成地域であるか若しくは構成地域となる自由貿易地域の構成国に対し関税及び貿易に関する一般協定の枠内{枠にワクとルビ}で与える利益

3 第一条及び第二条の規定は、また、ペルーが関税及び貿易に関する一般協定の枠内{枠にワクとルビ}でチリ及びアルゼンティン共和国に与えているか又は将来与える利益には適用しない。

第七条

1 この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか、又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。さらに、いずれか一方の締約国がそのいずれかの協定の締約国でなくなった場合には、両締約国は、その時の事情に照らし、この協定の貿易、為替又は関税に関する規定について修正を必要とするかどうかを決定するため、直ちに協議を行なうものとすることが了解される。

2 この協定は、次の措置を執ることを妨げるものではない。

(a) 金又は銀の輸入又は輸出を規制する措置

(b) 核分裂性物質、核分裂性物質の利用若しくは加工による放射性副産物又は核分裂性物質の原料となる物質に関する措置

(c) 武器、弾薬及び軍需品の生産若しくは取引又は軍事施設に供給するため直接若しくは間接に行なわれるその他の物資の取引を規制する措置

(d) 国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し、又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置

(e) 美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために執られる措置

(f) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫および寄生物に対する動植物の保護に関する措置

第八条

 各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施に関して行なう申入れを好意をもって受け取らなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。

第九条

1 この協定は、各締約国の憲法上の手続に従って批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかにリマで行なわれるものとする。

2 この協定の有効期間は、三箇年とし、その後も同一の期間ずつ自動的に延長される。ただし、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府に対しこの協定を終了させる意思を各期間の終了前少なくとも九十日の予告をもって書面により通告した場合は、この限りでない。

 以上の証拠として、各全権委員は、この協定に署名した。

 千九百六十一年五月十五日に東京で、ひとしく正文である日本語およびスペイン語により本書二通を作成した。

日本国のために

小坂善太郎

ペルー共和国のために

F・ヒルベック