[文書名] 日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の移住協定
日本国政府およびアルゼンティン共和国政府は、
移住に関する両国の関係を恒久的な基礎の上に確認することが適当であると信じ、
移住者に繁栄の機会を与えることが日本国の利益であること並びにアルゼンティン共和国の経済開発に必要な産業上の技術及び資材の導入を伴うすぐれた労働力を受け入れることが同国の利益であることを考慮し、
次の規定を協定した。
第一条
アルゼンティン共和国への日本人の移住は、この協定及び両国の現行法令の規定に従って行なわれる。
第二条
両政府は、日本国の産業及び技術がアルゼンティン共和国の経済開発のために農業、漁業及び工業の専門的分野でもたらすことができる寄与を考慮し、両政府の合意により作成される具体的な計画に基づいてアルゼンティン共和国へ渡航する日本人の移住を特に促進する。以下、これらの日本人を「計画移住者」という。
第三条
1 日本人移住者は、アルゼンティン共和国への入国に関して、いかなる第三国からの移住者に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
2 アルゼンティン共和国政府は、アルゼンティン共和国へ渡航する日本人移住者の同国への入国の許可に関する手続を簡易化するよう努力する。
第四条
日本国政府又はその指定する団体は、計画移住者の予備選考を行ない、及び日本国からアルゼンティン共和国の上陸港までの輸送について計画移住者に対しできるかぎりの便宜を与える。アルゼンティン共和国政府は、計画移住者の最終選考を行なう。
第五条
1 計画移住者は、自用品、組立家屋、原動機付車両一般を含む車両、トラクター、農業機械及び農産加工用資材(新品であると既使用品であるとを問わない。)並びに種子、肥料及び家畜を持ち込む場合に、各家族ごとに一万合衆国ドル又はこれに相当する価額の範囲内の品目につき、統計税、関税及び為替課徴金を免除される。これらの財産は、各家族の日本国出発前三十日以内又は出発後百五十日以内に船積みするものとする。
2 アルゼンティン共和国政府は、移住及び植民に関する日本国の団体で日本国政府が認めるものが申請し、かつ、それぞれの場合について移住及び植民に関するアルゼンティン共和国の当局が許可するときは、入植地の建設に必要な機械(トラクター、グレーダー、ブルドーザー、トラック及び小型トラックを含む。)について前記の統計税、関税及び為替課徴金を免除する。
第六条
日本人移住者は、アルゼンティン共和国において、第三国の移住者が移住法及びその施行令の定めるところに従って与えられているか又は将来与えられることがあるすべての権利、特権及び利益を与えられる。
第七条{改行なしママ}アルゼンティン共和国における日本人移住者は、同国の憲法の定めるところに従いアルゼンティン人と全く平等に扱われ、したがって、報酬、労働条件及び社会保障に関しアルゼンティン人と同等の権利を与えられる。
第八条
アルゼンティン共和国政府は、計画移住者のアルゼンティン共和国における定住のためできる限りの技術上及び行政上の援助を与える。
第九条
1 日本国政府は、日本人移住者のアルゼンティン共和国における農業、漁業、工業その他の経済活動を容易にするため、同移住者が日本国の金融機関による融資を受けられるようにできる限りの便宜を与える。
2 日本人移住者は、アルゼンティン共和国において、公的金融機関から農業融資、漁業融資又は工業融資を受けることにつきアルゼンティン人と同一の条件を享受する。
第十条
日本国政府は、移住者がアルゼンティン共和国への出発前に又は同国への旅行中に同国の言語、地理、歴史及び社会条件一般についての基礎的な準備教育を受けるようにできる限りの措置を執る。また、日本国政府は、移住者がアルゼンティン共和国の社会環境にすみやかに適応するように直接及び間接にできる限りの指導を行なう。
第十一条
この協定の適用を容易にするため、合同協議会をブエノス・アイレス市に設置する。この協議会は、各政府が三人ずつ任命する六人の委員で構成される。
第十二条
この協定は、日本国及びアルゼンティン共和国の国内法上の手続に従って承認されるものとし、その承認を通知する公文が交換された日に効力を生ずる。また、この協定は、両国のいずれか一方が一年の予告をもって廃棄するまで効力を有する。
以上の証拠として、このため正当に委任された両政府の代表者は、この協定に署名した。
千九百六十一年十二月二十日に東京で、ひとしく正文である日本語及びスペイン語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
アルゼンティン共和国政府のために