データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] メキシコ議会における田中内閣総理大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 1974年9月13日
[出典] 田中内閣総理大臣演説集,500ー501頁.
[備考] 
[全文]

 上院常設委員長、下院常設委員長、御列席の皆様

 只今上、下両院代表より丁重な歓迎の御言葉をいただき、また、かくも盛大な歓迎に接し、厚く御礼申し上げます。

 私は、これまで日墨間に存在している長い友好関係を基礎にして、今後の両国協力関係を一層増進することを念願して、このたびメキシコ合衆国を訪問いたしました。私は貴国が確固たる民主主義体制の下に高度に安定した社会と経済的発展を達成されていることに深い感銘を覚えた次第であります。

 私はかねてより、今世紀初頭におけるメキシコの国家的革命は、国民の権利と福祉の増進のための新しい民主政治のパターンを広く全世界に示したものとしてその世界史的意義を教えられておりましたが、本日、このメキシコ民主主義の殿堂たる議会を訪問して、改めてその感を深くしました。

 我が国も、平和主義と民主主義を基調とする憲法を制定し、国会を国権の最高機関として民主政治の確立に国民的努力を重ねて参りました。私自身も一国会議員として、従来より諸外国の議会人との国際交流の促進を計ることが世界の平和に通ずる道であると確信しておりますが、幸い両国国会の交流は、近年頓に盛んなものがあり御同慶の至りであります。特に、昨年八月、バルベレーナ上院議員を団長とするメキシコ国会議員団が、初めてわが国を公式訪問されたことは誠に有意義でありました。

 上院常設委員長、下院常設委員長並びに御列席の皆様。私は、メキシコ議会政治のこの殿堂に刻まれております「他人の権利の尊重こそ平和」なるファーレス大統領の言葉を銘記して、日墨友好関係、並びに人類平和と繁栄のためあらゆる努力を重ねてまいる所存であります。

 皆様の御健康、メキシコ合衆国議会の御発展、並びにメキシコ国民の繁栄を衷心から祈念して御挨拶といたします。