[文書名] 日系人による総理歓迎会における田中内閣総理大臣挨拶
本日かくも盛大な歓迎会を準備して下さった、延満ブラジル・日本文化協会長始め関係者の皆様方、また、遠路わざわざ馳せ参じていただいた皆様方に厚く御礼申し上げます。ブラジルは、私にとって少年時代からのあこがれの国でありましたが、かねてからの念願がかないこのたびブラジルを訪問できました。
首都ブラジリアではガイゼル大統領と二度にわたり会談し、植木大臣等政府首脳、上下両院議長、最高裁長官等にもお目にかかり、ウジミナス製鉄所やリオのイシプラス造船所も視察して参りました。短い見聞を通じてではありますが、私は今更の如くブラジルの国土の雄大さと、国民の気宇壮大さに感銘を覚えました。
わが国とブラジルとは、今世紀初頭以来伝統的に友好関係を維持発展させて参りました。活力に富むブラジル国民と無限とまでいわれる経済的潜在力により輝しい発展の約束されているブラジルと、世界経済の責任の一端を担っております日本とが一層協力し合うならば、それは単に日伯両国の利益に止まらず、広く世界人類のために大きく貢献することとなり、私は、今次訪問が日伯関係新時代の幕開けであるとの確信を深めたのであります。
私は、この国の良き市民として、国の発展に力を尽くして来られ、他のブラジル国民からも高く評価されている皆様方の存在こそ、新時代への何よりの仲立ちであり、両国を結ぶ大きな絆であると信じております。皆様方が移住者として自らの運命を切り開かれた開拓精神は次代を担う者にも受け継がれるべきであります。
近年の急速な経済成長に伴い、わが国の一部には他人に甘えるいわゆる過保護の風潮がみられます。私は、皆様に接し、改めて感得した皆様のたくましい開拓の精神と不倒不屈の活力こそ、わが日本に持ち帰えれる最良の御土産であると確信しました。
この素晴らしいブラジルの国造りに邁進されている皆様の一段の御健闘、御健康、御繁栄をお祈りして御挨拶をおわります。
御静聴ありがとうございました。