[文書名] 日本ブラジル修好百周年記念式典における村山内閣総理大臣の挨拶
日本ブラジル修好百年記念祭名誉総裁として皇太子殿下並びに同妃殿下の御臨席を賜り、また、百周年名誉総裁としてブラジル政府を代表し訪日されたマシエル副大統領御夫妻をお迎えし、両国の多数の関係者とともに、ここに記念式典を盛大に挙行できますことを、心より慶びたいと思います。
我が国とブラジルは、丁度百年前に修好通商航海条約を締結し国交を開いて以来、地理的な距離を乗り越えて友好的な協力関係を育んで参りました。特に、ブラジルにおきましては、一九〇八年に「笠戸丸」で七九一名の日本人が初めて移住して以来、先人の方々のご努力とブラジル国民の友情により、今や約百三十万人という海外最大の日系社会が根付いております。また、戦後の我が国経済の復興期に、いち早く、日伯官民の協力により我が国最初の海外大型合弁事業として鉄鋼プロジュクトがスタートし、その後パルプ、アルミ、造船、農業開発等多数の協力事業が次々と生まれ、今日の両国間の緊密な経済関係の基礎が作られたことは周知の通りであります。最近では、音楽、スポーツ、観光をはじめ、ブラジルは我々を引きつける新しいイメージをなげかけており、我が国にとって希望と未来の大地として最も親近感が持たれている国の一つとなっております。
折しも本年は戦後五十周年の節目にあたり、我が国は平和国家として国際社会が直面する諸問題の解決に一層積極的な役割を果たす決意を新たにしたところであります。ブラジルはカルドーゾ大統領の下で国内政治の安定と経済の活性化において大きな成果を上げるとともに、国連の改革、PKO活動をはじめ国際社会においても積極的な貢献を続けられております。我が国としては中南米の指導的国家であるブラジルとの関係を重視しており、冷戦終結後の新たな国際秩序の構築のためブラジルとの協力関係を一層強化したいと考えております。
本年の修好百周年が両国の友好関係の一層の深化を促すとともに、両国が二十一世紀に向けて平和で繁栄する国際社会の実現のために互いに協力しあう新たな関係の出発点となることを願ってお祝いの私の挨拶と致します。