[文書名] セディージョ・メキシコ大統領歓迎晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶
エルネスト・セディージョ・ポンセ・デ・レオン大統領閣下及び令夫人
一行随員の皆様
ご列席の皆様
日本人のメキシコ移住百周年にあたる記念すべきこの年に、友邦メキシコ合衆国よりセディージョ大統領ご夫妻ご一行をお迎えし、ここに晩餐会を催すことができますことは私の大きな喜びであります。日本国政府および国民を代表し、大統領閣下ご一行のご来訪を心から歓迎申し上げます。
昨年八月、妻と共に貴国を訪問した際、貴大統領ご夫妻をはじめメキシコ官民の方々より心のこもった温かいおもてなしを受けたことに対し、改めて謝意を表します。国立近代美術館に大統領自らご案内いただいたことや、チャプルテペック城での午餐会にお招きいただいたことなどを、家内ともども懐かしく思い出しております。また、地震防災センターを視察した際には、地震国である日墨両国がそれぞれの経験を生かし、同じく地震地帯に位置する中米・カリブ諸国にも同センターが活用されるような協力ができれば素晴らしいと感じましたのも、つい昨日のような気がいたします。
さて本年は、一八九七年五月十日に三十五名の榎本殖民団が貴国チアパス州に上陸してから、百周年の佳節にあたっております。この榎本殖民の記念碑がチアパス州アカコヤグア村のはずれにあります。その裏には、ちょうど日墨の交流が始まる約四百年前の我が国の著名な俳人、芭蕉による「夏草やつわ者共が夢の跡」の句が刻まれていると聞いておりますが、この句に、当時の移住者たちの思いが偲ばれる気がいたします。と同時に、我々はこの移住百周年を単なる祝賀に留めるべきではなく、二十一世紀に向けたより幅広い日墨関係の構築への機会としなければならないと思います。
大統領閣下
日本とメキシコの社会人、学生が一年間、相手国で学ぶ日墨交流計画も本年二十五周年を迎えます。この間の交換留学生数は、双方合わせて三千名近くの多数にのぼっており、日墨友好協力関係にとり、かけがえのない財産となっております。また、一九七七年に開校された日墨学院は、国際人教育を念頭に、我が国進出企業関係者や在留邦人の子弟が、メキシコ人子弟と同じ敷地内で一緒に勉学しているユニークな学校でありますが、早今年二十周年を迎えます。同校は、すでにメキシコの名門私立校の一つとなっていると伺っております。
昨年七月には、斉藤参議院議長一行がメキシコ上院議長のお招きを受けて公式訪問し、大統領にもお会いいただいた通り、両国間の議員交流もますます活発化しております。日墨間の人物交流は、年々活発化しておりますが、移住百周年を契機に一層拡充されることを希望いたします。
経済面では、経済政策に極めて精通されている貴大統領の的確な指導の下、メキシコは九四年末に発生した金融危機以降の経済停滞から見事に立ち直られ、日墨経済関係も、貿易・投資の面でますます密接になってきております。五月にメキシコ市で三年半振りに開催される日墨経済協議会の場で、メキシコにおける経済回復を背景に、両国経済界首脳が有益な意見交換を通じ、友情を深めていかれることを期待してやみません。
今日、大統領は、その政治理念に従い、民主主義に立脚した公正な社会の実現に努力されておられます。日墨両国で手をたずさえて、今後、日墨関係並びに日本と中南米間の「新時代のパートナーシップ」構築という大きな目標に向かって、更なる努力を傾注しようではありませんか。ここに、セディージョ大統領及び令夫人のますますのご活躍と貴国メキシコの更なる発展と繁栄を祈念し、また、我々の後の世代が今後とも更なる友情と尊敬をもって再び杯を交わすことを祈りつつ、杯を挙げたいと思います。
サルー(乾杯)!