[文書名] クレティエン首相主催晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶
クレティエン首相、令夫人、並びにご列席の皆様
本夕、ここに、私どものためにかくも盛大な晩餐会を開催いただき、心温まる歓迎のお言葉をいただいたことに対し、心からお礼申し上げます。
日本とカナダは、アジア太平洋地域の繁栄及び安定を維持することに共通の利益を有しています。カナダ政府は、この地域の重要性を認識し、本年を「アジア太平洋の年」と位置づけ、国内各地でアジア太平洋諸国との協力を深める各種行事を開催されておられると承知しています。私は、このような年に、貴国を公式訪問できたことを光栄に存じます。
日加両国は長い友好の歴史を有しています。今から百二十年前、日本からの移住者が初めてカナダ西岸に移り、ほぼ同じ時期に、カナダから渡来された宣教師の方々が、我が国の近代教育促進のため活動されました。カナダ人宣教師が設立に貢献された教育施設の中には、私の出身校の麻布中学、妻の出身校の東洋英和女学院があります。
このような長い交流の歴史を基盤として、日本とカナダの太平洋を越えたパートナーシップは、これまでになく緊密かっ重要になっています。両国は、二国間であるいは主要国首脳会議、国連等の国際場裏で、世界の平和と繁栄に関わる問題について協力しており、特に最近では、途上国支援、PKOや軍備管理・軍縮の分野での協力関係が進んでいます。
私は日加関係の未来を考える時、青年交流の重要性を痛感します。これまでの十年間でおよそ三千名のカナダの青年がJETプログラムを通じ、日本での生活を体験し、ワーキング・ホリデー制度を利用して、これまで約四万人の青年の相互交流が行われています。私は、こうした交流を通じ、友情が生まれ、その輪が広がっていくことに大きな期待を寄せています。また、私の出身の岡山県の和気市とアルバータ州ハンナ市、作東町とケベック州サン・バランタン市を含め、日加間で六十一に及ぶ姉妹都市関係が結ばれていることも喜ばしいことです。
スポーツ分野においても、カナダの国技であるアイスホッケーについては、本年十月、ナショナル・ホッケー・リーグが日本で初めて公式戦を行い、人気を集めました。長野オリンピックでの貴国チームの活躍を期待しています。また、明年六月には、バンクーバーで大相撲の公演が予定されています。
クレティエン首相は過去四年、この広く美しい国の指導者として、国際場裏でその手腕を発揮されたのみならず、国内でも行財政改革に成果をおさめてこられました。先のAPECバンクーバー会合もクレティエン首相の見事な采配ぶりで成功に導かれました。
それでは、クレティエン首相、令夫人、及びご列席の皆様のご健康、カナダの繁栄、そして日加両国の末永い友好と協力を祈って、ここに杯を挙げたいと存じます。