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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・ペルー間の戦略的パートナーシップ強化に関する共同声明

[場所] リマ
[年月日] 2024年11月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 日本政府とペルー共和国政府は、ペルー共和国は1873年に中南米諸国で初めて日本と外交関係を樹立した国であり、両国が150年以上の外交関係を有していることを認識し、

 日本とペルー共和国が、民主主義、法の支配の尊重、自由及び人権といった共通の原則と価値に基づき、2016年以来、戦略的パートナーとして互いを認識していることを強調し、

 両国の経済的利益が収れんしてきていることや、アジア太平洋経済協力(APEC)フォーラムにおける協力や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)のメンバーであることが二国間の経済関係を促進していることを考慮し、

 2012年に発効した経済連携協定及び2021年に発効した租税条約を含む、両国間の経済相互補完性及び強固な二国間の法的枠組みを強調し、

 透明性、多様性、安定性、持続可能性、及び信頼性の原則に基づき、重要鉱物を含む重要物資の強じんで信頼性のあるサプライチェーンを構築及び強化するための協力の重要性を再確認し

 WTOを中核とするルールに基づく貿易体制を堅持するという共通のコミットメントを再確認し、

 ペルー共和国には20万人を超える世界第3位の日系人コミュニティがあり、日本のペルー人コミュニティは5万人を超える国内最大のスペイン語圏のコミュニティであり、両国の友好関係の架け橋となってきていることを強調し、

 近年、両国の対話と共同作業の結果として、経済的、商業的、文化的、社会的な交流と協力が強化されてきていることを指摘し、

 両国が、人間の尊厳の保護及び促進が持続可能で包括的な発展の基礎であると考えていることを認識し、

 世界が相互に関連する複数の危機に直面している中、日本とペルー共和国が、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、多国間主義を強化し、民主主義の原則を守り、国際法を堅持し、紛争の平和的解決を促進する国際的なパートナーであることを再確認し、世界のいかなる場所においても、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも反対することを改めて表明し、

 国家主権と領土一体性の尊重、武力行使の禁止を含む国連憲章の原則と目的に従って国際の平和及び安全を維持することの重要性を再確認し、

 この文脈から、ウクライナの包括的、公正かつ永続的な平和を可能な限り早期に実現する必要を強調し、

 ガザ地区の人道状況に深刻な懸念を表明し、即時の停戦、人質の解放、人道支援活動が持続的な形で行われるための環境の確保、国際人道法を含む国際法の遵守を求め、

 国際法に従い、平和、安定、安全並びに航行及び上空飛行の自由を維持することの重要性を再確認し、国連海洋法条約に反映されている普遍的に認められた国際法の諸原則に従い海洋に関する紛争を平和的に解決することの意義を強調し、両国が太平洋の沿岸国であることを踏まえ、アジア太平洋地域の安定及び繁栄を確保するための緊密な協力の必要性を強調し、

 両国は、共通の長期的なビジョンをもって、二国間の戦略的パートナーシップを更に深化させ活性化させることを決定し、両国間の関係における5つの優先分野からなるロードマップ(2024年から2033年)を採択し、次のことにコミットする。

 

 i. 政治・外交の柱:政府のあらゆるレベルにおける連携を促進することの重要性に対する両国の認識に基づき、共通の課題に取り組むために政治対話を強化し、ハイレベル訪問を増やす。

 ii. 経済の柱:鉱業、農業、漁業、インフラ、及び再生可能エネルギー分野における両国の持続可能な発展や、グローバル・バリュー・チェーンにおける両国経済の強化を促進するため、両国経済の補完性に基づき、両国間の貿易、観光、及び投資関係を拡大・深化させる。

 iii. 二国間協力の柱:両国が既に協働している分野における協力を強化し、ジェンダー平等、科学技術、気候変動、環境保全、南極研究、航空宇宙開発、災害リスク低減など、相互の関心がある新たな分野への協力を拡大し、持続可能な開発目標の達成に貢献する三角協力プロジェクトを展開する。

 iv. 社会及び人的交流の柱:文化、社会、学術及びスポーツの交流を通じて両国の国民間の結びつきを強化するとともに、両国が直面する課題の解決策を模索するため、人的交流及び市民の能力開発を促進する。

 v. 防衛及び安全保障の柱:両国間の防衛協力及び交流に関する覚書に基づく相互に関心のある分野において二国間の防衛協力及び交流を推進する。

 前述の優先分野を実施するため、本共同声明の一部として、各分野で推進すべきプロジェクト及びコミットメントを含むロードマップを添付する。

 ロードマップの実施状況のフォローアップは、両国の外務省により設置される作業部会によって実施される。

 2024年11月17日、エルシリア・ボルアルテ・セガラ・ペルー共和国大統領の招待による石破茂日本国総理大臣のペルー共和国公式訪問の機会に、リマ市で、スペイン語、日本語及び英語により発出された。全てのテキストは同等に扱われる。解釈の相違がある場合は、英語版が優先する。