[文書名] 日本とペルー共和国との間の戦略的パートナーシップ強化のためのロードマップ(2024-2033)
柱1:政治・外交
1.世界規模での新たな機会と課題が生じている観点から、新たな協力分野を含め、戦略的パートナーシップの枠組みにおける共同作業の分野を強化、深化、多様化するため、両国間の首脳会談及び閣僚級会談の開催により、最も高いレベルでの二国間政治対話を強化する。
2.外務次官級の日・ペルー政策協議を隔年で開催し、二国間アジェンダの基本的な問題を取り上げ、短期的・中期的な共同目標達成のための行動指針を策定する。これらの会議の開催地は、両国間で交互とする。
3.ハイレベルの政治対話を深化し議会レベルでのグッド・プラクティスの経験を共有するため、両国の友好議員連盟間の定期的な交流を奨励する。
4.二国間関係において特別な関連のある出来事の記念日を記念し、両国間のつながりを強化するための共同活動を実施する。
5.このロードマップのモニタリングに責任を有する作業部会を設置し、コミットメントの履行を確認するために毎年開催する。この作業部会は、両国の外務省及び東京とリマのそれぞれの大使館の代表で構成される。この作業部会が作成した報告書は、政策協議メカニズムの枠組みの中で評価される。
6.二国間関係の将来を見据えたビジョンの醸成を目的として、提言や行動指針を提供する両国の様々なセクターにおける傑出した人物による対話を促進する。
柱2:経済
1.既存の協定をより効果的に活用することにより、二国間貿易の拡大及び多様化を促進するとともに、WTOを中核とする、自由で公正なルールに基づく多角的貿易体制を維持及び強化する。この目的を達成するため、ビジネスの機会を特定するための貿易ミッションの派遣を含む二国間のイベントの開催によりビジネスの機会が特定されることを奨励する。さらに、関連する公的機関は、輸出モデルに関するベストプラクティスを共有し、市場調査やビジネス指導プログラムの共有などに取り組む。
2.日本農林水産省とペルー農業灌漑開発省及びペルー生産省との間での食料安全保障に関する対話を奨励する。この対話は、農産及び水産物の二国間貿易の拡大及び両国の食料供給への貢献を目的とし、また、両国が関心を有する分野における協力が促進され、二国間貿易への新たな機会を生み出すものである。
3.両国間の建設的な関係を推進することを目指して、日本農林水産省の関連当局とペルー国立農業検疫庁及びペルー国立漁業水産養殖衛生安全局との間の情報交換を促進する。
4.違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止、抑止、排除のための関係省庁間の対話を強化する。同様に、洋上養殖の持続可能な発展のための方策の検討を含む養殖の持続可能な発展を達成するために努力する。さらに、漁業、養殖業その他の相互の関心を有するテーマにおけるに知見の交換も、積極的に推進する。
5.貿易、投資、技術・産業開発の分野における協力の促進を目指すとともに、関係公的機関に行動指針の提言を行うことを目的に日本ペルー経済協議会(CEPEJA)の両国間の対話を促進する。
6.民間セクターの生産性向上のためのデジタル技術の活用に関する意見・情報交換を通じて相互理解を促進するとともに、「グローバル・サウス未来志向型共創等事業」などの政府による支援を通じて、社会経済・環境課題に対する革新的な解決策の開発を模索する。
7.両国の官民セクター間の対話と情報交換を促進するため、特に重要鉱物に関する投資機会に重点を置いた鉱業・エネルギー分野における投資機会とビジネス環境に関する駐日ペルー大使館主催年次会合を開催する。さらに、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とペルーのエネルギー鉱業省(MINEM)は、鉱山分野における日
本とペルーとの協力関係を強化するため、情報交換や技術協力(鉱山環境モニタリングのためのリモートセンシング画像解析手法の検討や銅鉱石からの不純物除去に関する共同研究を含む。)を共同で推進する。
8.再生可能エネルギー由来及び低炭素の水素とその派生物に関する取組に特に重点を置いた再生可能エネルギーとエネルギー移行の分野における能力及び知見を発展させる。
9.官民パートナーシップ、アセット・プロジェクト、G2G、その他のスキームを通じたインフラ及び公共サービスへの民間投資の促進に関する年次対話や情報交換を奨励する。特に、衛生、学校建設・補修、工業団地建設、交通・通信、保健、観光、農業、灌漑などの分野への投資を促進する。
10.情報交換や意見交換を通じ、両国の政府機関及びスタートアップ・エコシステムの主要プレーヤー間の相互理解を促進し、ビジネス機会を拡大する。
11.日本のTSUBASAプログラム又は両国における他の同様なイニシアティブの枠組みの下で、スタートアップ企業を支援・促進するプロジェクトにおける二国間協力を強化する。
12.ビジネスプロモーション活動の企画・運営に関する知見及び国際ビジネスマッチングツールや各々が運営する商談会に関する情報を共有し、それらの活用を促進するための広報活動を共同で行うことにより、企業の個別商取引の円滑化を図るために、日本貿易振興機構(JETRO)とペルー外務省及びペルー通商観光省との間で、中小企業向けの協力を促進する。
13.中小企業などを含む民間部門において、デジタル・ツールや革新的な戦略を活用することにより生産性や商業活動を向上させることを目的とした経験やベスト・プラクティスの共有を促進するため、関係者間の対話を奨励する。
14.日本とペルーの航空当局間の枠組み作りを含め、観光客の増加を図り、両国間の連結性を強化するための協力を推進する。さらに、両国は航空協定交渉開始の可能性を検討する。
15.両国間の観光客の増加目的とした観光分野における官民機関の経験の共有と二国間協力を促進するための対話を促進する。
16.料理の分野における官民セクター間の共同イニシアティブの発展を奨励及び強化する。
柱3:二国間協力
1.将来の活動分野を特定し優先付けることを目的として、関係機関による過去の二国間協力の成果をレビューする。このレビュー結果は、1年以内にロードマップのフォローアップのための作業部会に提出される報告書に反映され、その後、両国の関係機関間の対話が行われる。
2.持続可能な開発目標の達成に向けた日本とペルー共同の貢献を強化する三角協力プロジェクトの形成の可能性を模索する。
3.両国のデジタル政府システムの構築、近代化及び強化のためのプロジェクトを通じて、両国のデジタル・トランスフォーメーションのプロセスを強化し加速させるために共に取り組む。
4.ICTの利用及び共通の関心分野における共同プロジェクトの策定における協力を深めることを目的とし、日本総務省とペルー運輸通信省との対話を促進する。
5.ペルーが経済協力開発機構(OECD)の設定した加盟基準を満たすための支援を目的として、経験の共有を促進し、ペルーにおける公共行政の現代化の活動を支援する。
6.経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定に従い、科学技術協力小委員会を設置し、大学や専門機関の共同研究プロジェクトの推進、政策・慣行・規制に関する情報交換の促進及びベストプラクティスを共有するための専門家の訪問や交流を調整することにより、二国間協力の強化に向けた対話を開始する。小委員会
は、相互に同意した時期に、日本とペルーで交互に開催される。さらに両国は、日本政府とペルー政府との間で科学技術・イノベーション協力のための枠組協定の交渉を開始する可能性を検討する。
7.相互理解を深め、航空宇宙問題に関する見解を交換するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とペルー航空宇宙研究開発委員会(CONIDA)との対話を奨励する。両機関が宇宙空間の探査及び利用における将来の協力活動について協議することを奨励する。
8.ペルーのアマゾン地域の保護を推進するため、両国間の協力及び対話を強化する。
9.絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)、気候変動政策、流域回復と土壌汚染修復のためのプログラムの設計と実施等に関する技術協力と経験の共有に焦点を当てた対話を促進する。
10.地震、津波及び火山噴火に関連する災害による被害を軽減するため、地球物理学に関する対話と協力を促進する。
11.デジタル技術を通じた気候変動、森林消失及び土壌侵食の影響に対する強じん性強化のために、日本の国立研究機関とペルー国立農業研究所(INIA)との対話と協力を奨励する。
12.海洋資源の管理及び保全における協力を強化するための協力を奨励する。この協力には、知識の移転、共同研究プログラム、学術交流、実践的な研修並びにイノベーション、技術開発及び海洋生態系の持続可能性を促進するための官民コンソーシアムの推進が含まれる。
13.日本の国立極地研究所とペルー外務省との間で署名された南極協力に関する協力覚書の枠内で、南極協力計画を実施する。さらに、両機関は、物資面や運用面での問題を含む南極観測に関する対話と経験の共有を慫慂する。
14.危険物管理、都市救助活動、防火管理に関連する事項について、関連機関の対話を促進する。緊急対応能力の強化、セミナーやフォーラムへの共同参加を促進する。
15.両国当局間の定期的な対話を促進し、包括的な研修プログラム、共同プロジェクト及び技術移転を通じ、防災分野における協力を強化する。緊急事態や災害の監視・管理を強化するため、航空・衛星データ共有のための協力を促進する。さらに、防災管理に関する研修及び共同研究を促進し、災害後の復旧・復興活動における協力を促進する。
16.インフラ、病院管理、設備及び関連分野における二国間協力を強化するための2年毎の作業計画を策定するため、保健当局、専門機関及び保健分野関連の研究機関間の対話を促進する。
17.労働問題や尊厳ある衡平な雇用の促進に関する能力強化のための共同プログラムや計画策定のため、労働当局間の対話を促進する。
18.ジェンダー問題と社会的弱者のニーズに関する経験、専門知識及び技術支援の知見の共有を促進する。これには、指導的・意思決定的役割への女性の参画を促進し、高齢者及び障害者の社会的・生産的・政治的関与を強化することが含まれる。
19.治安問題における協力を強化するため、警察機関同士の対話と協力を促進する。
20.相互の関心分野において協力するため、日本国土交通省とペルー住宅・建設・衛生省との間で年次対話を創設する。相互の関心分野には、住宅建設の品質基準、都市計画及び持続可能な建設並びに衛生システムを強化するための技術移転が含まれる。
21.ベストプラクティスの共有、共同研修の実施、能力構築及び共同プロジェクト策定のため、輸送分野における年次対話を促進する。これには、鉄道輸送、水上輸送、海上旅客輸送、道路インフラの安全性、交通管理と交通安全、連結性格差への対応などが含まれる。
柱4:社会及び人的交流
1.ペルーの一般旅券(IC旅券)所持者に対する査証免除措置の実施に協力する。
2.観光、文化及び・芸術及びユース・モビリティ・スキームを含む人的交流の再活性化のために協力する。この点に関して、両国は、ペルーの一般旅券(IC旅券)所持者に対する査証免除措置が完全に再開された後、ワーキング・ホリデー制度導入の可能性を検討する。
3.領事事項における重要課題に共同で取り組むため、両国当局間の対話及び協力を促進する。
4.研修及び交流プログラムを通じ、人材育成に関する協力を促進する。
5.経験の共有、学習機会の探求及び能力開発等に取り組むため、日本文部科学省とペルー教育省との対話を促進する。
6.より緊密な関係を構築し、学術協力交流協定に関する文書の署名や奨学金制度の締結を促進することにより、日本とペルーの大学間の学術協力を支援する。さらに、ペルーで開催される日本の大学による学部課程及び大学院課程への留学機会に関する情報発信イベント等の協力を通じ、双方の大学間の関係強化を促進する。
7.2023年に調印された「日本スポーツ庁とペルースポーツ協会との間のスポーツ分野における協力覚書」の枠組みにおけるスポーツ協力を強化し、2027年にリマで開催される第20回パンアメリカン競技大会などの主要イベントの開催に向けた経験の共有を促進する。
8.文化管理に関する見解の共有を促進し、文化交流を奨励し、及び無形文化遺産保護のための公共政策の分野における経験を共有するため、関係文化団体間の対話を促進する。
9.両国の文化遺産振興のためのプラットフォームにおいて多様な文化表現を体現するコミュニティの代表者の参加を促進する。さらに、工芸、音楽、舞踊及び伝統料理に従事する人々の間の知識、経験及びベストプラクティスの共有を奨励する。
柱5:防衛及び安全保障
1.両国間の防衛協力及び交流に関する覚書に基づく相互に関心を有する分野において二国間の防衛協力及び交流を推進する。
2.二国間対話を強化するために、ハイレベルを含む両国の防衛当局間の訪問を促進する。
3.両国の防衛当局間の対話を推進し、相互に関心のある分野における情報及び経験を交換する。
4.両国間の代表団の相互訪問を奨励するとともに、両国の防衛当局が主催又は支援する訓練課程、セミナー及び会議への参加を奨励する。
5.日本にとって適切と判断される時期に、在ペルー日本国大使館への防衛駐在官の配置についての協議を促進する。
6.合同演習を通じて海上自衛隊とペルー海軍との協力関係の強化及び相互運用性の向上を奨励する。
7.日本及びペルーにおける防衛産業の発展を促進するため、能力構築や技術移転を含む共同事業についての対話を奨励する。
8.ジェンダーの視点に立ち、平和維持行動への軍人たちの関与、軽減・管理を含む災害救援、女性・児童の保護などに焦点を当てた対話や協力を推進する。さらに、脆弱な状況にある移民女性を支援する公的機関や民間団体との対話を促進する。これらの取組は、国連の「女性・平和・安全保障アジェンダ(WPS)」の枠組みの中で実施される。
9.海事問題、海洋環境の保護、水中文化遺産の保護及び海上捜索救助活動における対応能力の強化に焦点を当てた省庁間対話を強化する。