データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1次日中民間貿易協定

[場所] 
[年月日] 1952年6月1日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),518−519頁.日中関係基本資料集,43−4頁.
[備考] 
[全文]

 中国国際貿易促進委員会主席 南漢宸(これを甲と称する)と,国際経済会議日本代表 高良とみ,日本中日貿易促進会代表 帆足計,中日貿易促進議員連盟理事長 宮腰喜助(これを乙と称する)は,中日人民間の貿易を促進するために,双方で協議したのち,平等互恵の原則の上に下記のごとく協定する。

第一条 双方の輸出及び輸入金額は各三千万英ポンドとする。

第二条 双方の同意のもとに同類に属する商品を相互に交換するものとする。

 双方の輸出商品の分類(詳細は別表に掲ぐ)および各類の総額に対する百分比はそれぞれ次のとおりとする。

 中国よりの輸出

   甲類 総額の四〇%

   乙類 総額の三〇%

   丙類 総額の三〇%

 日本よりの輸出

   甲類 総額の四〇%

   乙類 総額の三〇%

   丙類 総額の三〇%

第三条 双方の貿易取引は,商品の物物交換をもつて原則とし,一部は英ポンドをもつて計算する。

第四条 本協定の具体的な実行を促進するために,輸出入商品の数量,規格,取引期日および場所等に関しては,乙方が代表を派遣して,甲方と交渉するものとする。乙方代表は日本の商工業界正式代表であることを要し,かつ貿易の交渉に限るものとする。

第五条 輸送ならびに支払方法に関しては,具体的契約を締結するときにあらためて,双方で協議する。

第六条 双方が契約を実行するに際して,紛争が発生した場合には,双方よりなる仲裁委員会を設ける。その仲裁は,中国国内において行うものとする。

第七条 本協定は,一九五二年十二月三十一日以前に実行すべきものとし,同期限までに貿易総額が協定額に達しない場合は,双方の同意を得て,事情に応じて,期限を延長し討議する。

第八条 本協定は,中国語および日本語をもつておのおの二通を作成し,両国語の文書は同等の効力をもつ。

 国際経済会議日本代表    高良 とみ

 中日貿易促進会代表     帆足  計

 中日貿易促進議員連盟理事長 宮腰 喜助

 中国国際貿易促進委員会主席 南 漢 宸 

 日中貿易協定(附属別表)

商品分類明細表

中国よりの輸出

 甲類 石炭,大豆,マンガン鉱,鉄鉱石,豚毛

 乙類 塩,雑豆,落花生実,桐油,マグネサイト,ボーキサイト,螢石,耐火粘土(東北産ボーキサイト),胡麻,焦宝石(山東産ーキイト),燐灰石,羽毛,石綿,綿花,羊毛

 丙類 綿実カス,豚皮,滑石,石墨,石膏,雄黄,五倍子,松香,甘草,薬草,生漆,落綿,ヒマシ実

日本よりの輸出

 甲類 紫銅,鋼板,鋼管,建築鋼材,鉄道鋼材,馬口鉄(ブリキ),黒鉄皮(薄鉄板),白鉄(亜鉛塗鉄板),ドラム罐用鉄板,アルミニウム塊

 乙類 紡績機械および同部品,船舶(冷蔵船),小型機関車,殺虫剤,ズルフォニアダイアジン,硝塩剤,苛性ソーダ,石灰酸,硼砂,高級インク,起重機,無線電信機および同部分品,貨物自動車(重量),電気機械

 丙類 農業機械,自転車,自動車部分品,タイプライター,計算機,顕微鏡,測量機具,ボールベアリング,超短波医療機械,ソーダ灰,化学肥料(硫安,過燐酸石灰,石灰窒素),人絹糸,綿布,綿糸,染料,写真機および写真機械,理化学用機械器具,昆布,雑紙類,録音機,拡声機

 原則上同類物資をもつて,相互に交換すること。具体的にどうのような物資がどのような物資と交換するかということは契約の交渉の際,双方協議の上でこれを決定すること。

 国際経済会議日本代表    高良 とみ

 中日貿易促進会代表     帆足  計

 中日貿易促進議員連盟理事長 宮腰 喜助

 中国国際貿易促進委員会主席 南 漢 宸