データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第二次日中民間貿易協定

[場所] 
[年月日] 1953年10月29日
[出典] 日中関係基本資料集、57−59頁.
[備考] 
[全文]

 中国国際貿易促進委員会(略称甲方)と日本「日中貿易促進議員連盟」代表団(略称乙方)は日中両国間の貿易を促進し、日中両国人民の友誼を深めるため、平等互恵の原則に基づき、かつ一九五二年六月一日北京で締結した日中貿易協定の基礎の上に、双方協議した結果つぎのように協定する。

第一条 双方は、本協定有効期間内における各々の側の輸出と輸入の総額をそれぞれ三千万英ポンドとすることに同意する。

第二条 同類物資交換の原則に基づき双方の輸出品の分類(詳細は別表に掲げる)およびその総額にたいする百分比はつぎの通りとする。

  中国よりの輸出 甲類 総額の三五%

          乙類 総額の四〇%

          丙類 総額の二五%

  日本よりの輸出 甲類 総額の三五%

          乙類 総額の四〇%

          丙類 総額の二五%

第三条 双方の貿易は物物交換の基礎の上に行うものとし、ただ価格計算のみ英ポンドをもってする。

第四条 本協定は中国進出口公司またはその他の中国国営対外貿易公司と日本商品工業者が各項の具体的契約について相互に協議調印し、これを実行にうつす。契約の中には輸出入物資の数量、規格、取引方法、価格および引渡しの期日、場所などを規定するものとする。

第五条 輸送と支払方式に関しては具体的な取引契約を締結する際に双方で協議し、これを決定する。

第六条 中国の輸出品は中国商品検験局の品質重量検査証をもって代金支払の要件とす。日本の輸出品は日本商品検査機関の品質重量検査をもって代金支払の要件とす。(輸出品の検査費用は売主負担とす。)ただし買主は荷揚港で再検査を行う権限を有する。中国の輸出品は中国商品検験局が再検査にあたり、日本の輸入品は日本商品検査機関が再検査にあたる。もし品質と重量などが契約に定むる条件と符合しないことを発見した場合には、売主に対して賠償を要求することができる。輸送の途中において生じた品質と重量の自然変化は賠償要求の範囲に入らない。賠償要求の期限は具体的な契約の中で個別的にこれを規定する。再検査の費用は買手の負担とする。

第七条 契約の履行に際して発生した、或は契約に関連する一切の紛議については、双方の協議によってこれが解決を行う。もし双方の協議によって解決できない場合には、双方で仲裁委員会を組織して仲裁を行う。その仲裁は本協定有効期間中においては中国の国内において行うものとする。

第八条 本協定の有効期間は、調印の日より一九五四年十二月三十一日までとする。もし右の期限までに本貿易協定に定むる総額に達しない場合には、双方の同意を得て状況に応じ期限を延長することができる。

第九条 本協定は、一九五三年十月二十九日北京で締結し、正本は中国語および日本語をもっておのおの二通を作成し、双方は中日両国語の正本を各々一通ずつ保持する。両国語の文書は同等の効力を有する。

 別表 商品分類明細表

中国よりの輸出

 甲類 鉄鉱石、マンガン鉱、大豆、石炭  

 乙類 マグネシアクリンカー、塩、マグネサイト、バン土、頁炭、焦宝石、耐火粘土、螢石、燐灰石、石綿、アンチモニー、豚毛、羊毛、カシミヤ毛、羽毛、桐油、雑豆、油種原料、柞蚕糸その他

 丙類 滑石、石墨膏、硫黄、豚皮、絨毯、生漆、落綿、屑糸、麦稗真田、フスマ、油粕、松脂、五倍子、甘草、薬草、桂皮、麝香、八角、その他

日本よりの輸出

 甲類 銅、アルミニウム・インゴット、鋼板、鋼管、ブリキ板、黒鉄板、亜鉛引鉄板、ドラム罐用鉄板、建築鋼材、鉄道器材、各種大型機械、遠洋航海用船舶、冷凍船

 乙類 紡績機械及び同部分品、起重機、ベアリング、その他機械、無線電気機器材、トラック、自動車及び同部分品電気材料、モーターバイク、オートバイ及びスクーター、光学儀器、医療機械、薬品及び薬品原料、抗生薬品、スルフォン剤、殺虫剤、化学工業原料、化学肥料(硫安、過燐酸石灰、石灰窒素)、各種化学合成繊維、高級インク、染料、その他

 丙類 農業機械、理化学機器、タイプライター、自転車、ミシン、時計、家庭用ラジオ及び受像受信機、家庭用電気器具、蓄音機、拡声機、写真機材、漁網、水産品、昆布、綿布、綿糸、雑紙、その他

 日中貿易協定附属文書

   覚書

一、双方は決済方法として、両国間において、各本国貨幣による直接決済の方法をできるだけ速かに実現することに同意する。(その方法は即ち英ポンドを以って価格計算の単位とし、実際の支払は各々その本国の銀行を指定して支払と清算の責任を負うこととする。その差額は双方の指定銀行の同意を得た第三国の貨幣をもってこれを清算する。)右に関する具体的方法は、双方の指定銀行が別に協議してこれを定めることにする。

二、本協定の第六条に規定された日本側の商品検査については、必ず契約締結者双方の同意を得るべきである。

三、双方は互に貿易代表機関を置くことに同意する。中国が日本に常駐の貿易代表機関を置くことが実現するときは、日本も又中国に常駐の貿易代表機関を置くものとする。

 調印者

  日本「日中貿易促進議員連盟」代表団

   団長 池田正之輔

   副団長 江藤夏雄、帆足計、中村高一

   団員 長島銀蔵、中村三之丞、喜多壮一郎、田中稔男、松前重義、松田竹千代、風見章、木村禮八郎、須藤五郎、宇田耕一、川勝伝、谷口藤一郎、弓削靖、村山佐太郎、平野清、大島善吉、桜沢秀次郎、菊池善隆、中野徹夫

  中国国際貿易促進委員会

   主席 南漢宸

   代表 盧緒章、馬一民、高尚能、鄒●{其に斤}頤、張政、馮鉄城、倪蔚庭、舒自清、●{危のたれに八に言}武、劉今生、商広文