データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3次日中民間貿易協定

[場所] 
[年月日] 1955年5月4日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),713−715頁.中共対日重要言論集第2集, 173−80頁.
[備考] 
[全文]

 日本国際貿易促進協会および日中貿易促進議員連盟(一方)と中華人民共和国日本訪問貿易代表団(他方)は,日中両国貿易を発展させ,日中両国人民間の友好を増進させるために,平等互恵の原則にもとづき,協議した結果次のように協定する。

第一条 本協定有効期間内におけるおのおのの側の輸出総額と輸入総額は,それぞれ三千万ポンドとする。

第二条 同類物資交換の原則にもとづき,双方の輸出商品の分類(詳細は別表に掲げる)および総額にたいするそれぞれの百分比はつぎの通りとする。

 日本よりの輸出品      甲類  総額の三五%

               乙類  総額の四〇%

               丙類  総額の二五%

 中華人民共和国よりの輸出品 甲類  総額の三五%

               乙類  総額の四〇%

               丙類  総額の二五%

第三条 本協定は,日本国の商工業者と,中華人民共和国の国営対外貿易公司および私営貿易業者が,具体的な取引契約を締結して実現する。

第四条 双方の取引は,いずれも英ポンドをもつて価格計算の単位とする。

第五条 双方の取引上の支払と清算は,日本銀行と中国人民銀行との間に支払協定を締結し,清算勘定を開設して処理するものとする。両国の国家銀行間に支払協定が締結されるまでは英ポンドによる現金決済とする。

第六条 輸送に関しては,取引契約を締結する際に契約者双方で協議決定する。

第七条 商品検査に関しては,日本の輸出品は契約者双方の同意した日本商品検査機関の品質重量検査証をもつて代金支払の要件とする。中国の輸出品は中国商品検験局の品質重量検査証をもつて代金支払の要件とする。(輸出品の検査費用は売主負担とする。)但し買主は商品が目的港に到着した後に再検査を行う権限をもつ。

 日本の輸入品は契約者双方の同意した日本商品検査機関が再検査にあたり,中国の輸入品は中国商品検験局が再検査にあたる。(再検査の費用は買主とする。)もし品質と重量などが契約に定める条件と符合しないことを発見した場合には,買主は売主にたいして賠償を要求する権限をもつ。但し輸送の途中において生じた品質と重量の自然変化は賠償要求の範囲に入らない。賠償要求の期限は契約者双方が契約の中で個別に規定する。

第八条 契約の履行にさいして生じ,または契約に関連して生じた一切の紛争は,契約者双方の協議により解決する。契約者双方の協議により解決できないときは仲裁にかけることができる。

 仲裁は,契約者双方がそれぞれ日本国および中華人民共和国国籍を有するものより同数の仲裁人を指定し,または派遣し,さらに両方の仲裁人が同意した第三者一名を加え,仲裁委員会を組織して行う。

 この仲裁は被告の居住する国において行う。仲裁の費用は,敗訴者の負担とする。仲裁の方式は,仲裁委員会の定めるところによる。仲裁委員会の審判を最終決定とし,契約者双方は,これに服さなければならない。

 双方は相手側に仲裁事務の執行と要員の往来にあらゆる便宜をあたえること,およびその安全を保障することについて,それぞれ本国政府の同意を得ることとする。

第九条 双方は,互いに見本市を相手国において単独に開催することに同意する。

 日本側の見本市は,一九五六年春に北京および上海において開催し,中国側の見本市は,一九五五年内に東京および大阪において開催することとする。双方は,相手側に見本市開催の事務の執行と要員の往来にあらゆる便宜をあたえること,およびその安全を保障することについて,それぞれ本国政府の同意を得ることとする。

第十条 双方はつぎのことに同意する。

 互いに相手国に常駐の通商代表部をおくこと。日本側の常駐通商代表部は北京におき,中国側の常駐通商代表部は東京におくこと。双方の通商代表部および部員は外交官待遇としての権利があたえられること。

 双方はまた,上記のことを速かに実現するよう努力することに同意する。

第十一条 双方はそれぞれの本国政府に要請して,速かに日中貿易問題について両国政府間で商議を行い,協定を締結させるように努力する。

第十二条 本協定は調印の日より効力を発生し,有効期間は一年とする。

 本協定は双方が協議し同意した場合には,これを延長または改訂することができる。

第十三条 本協定は一九五五年五月四日東京で締結し,中国語および日本語をもつて書かれた協定書を二通作成する。両国語の文書は同等の効力をもつ。

  日本国際貿易促進協会 

   会  長 村 田 省 蔵

       山本熊一,田島正雄,加納久朗,豊田雅孝,鈴木一雄

  日中貿易促進議員連盟

   代表理事 池 田 正 之 輔

       宇田耕一,長島銀蔵,帆足計,中村高一,木村禧八郎,須藤五郎

  中華人民共和国日本訪問貿易代表団

   団  長 雷 任 民

       李燭塵,盧緒章,謝筱廼,孫平化,張紀明,李範如,倪蔚庭,商広文,馮鉄城,李景唐,辛毅,●{危のたれに言}武,張致遠

  中日貿易協定商品分類付表

日本国よりの輸出

 甲類・・・銅塊,アルミニウム材料,鋼板,鋼管,ブリキ板,薄鉄板,建築用鋼材,ドラム罐用鉄板,鉄道器材,各種大型機器,発電設備,船舶。

 乙類・・・化学肥料,医薬品およびその原料,化学工業原料,染料中間体,各種化学繊維,高級印刷用インキおよびその原料,各種鉄合金,紡織・捺染機械およびその部分品,各種機械,トラック,自動車およびその部分品,電気工業および通信器材,無線器材,モーターバイク,精密儀器,光学儀器,医療器械,切削工具およびその原料,その他。

 丙類・・・理化学儀器,計算機,タイプライター,モノタイプ,自転車,ミシン,家庭用電気器具,録音機,時計,写真器材,各種工具,漁撈工具,綿織物,毛織物,紙類,寒天,海産物,乳牛,雑貨,映画,その他。

中華人民共和国よりの輸出

 甲類・・・鉄鉱石,マンガン鉱,銑鉄,石炭,大豆。

 乙類・・・米,塩,菜種および油脂原料,桐油,雑豆,マグネサイト,マグネシア・クリンカー,礬土頁岩,焦宝石,重晶石,耐火粘土,螢石,燐灰石,石綿,アンチモニー,豚毛,羊毛,カシミヤ,葉煙草,麻類,膠,各種皮革,その他。

 丙類・・・滑石,石墨,石膏,雄黄,豚皮,絨氈,生漆,落綿,柞蚕糸,各種屑糸,桐材,麦稈真田,ふすま,松脂,五倍子,植物薬材,肉桂皮,麝香,八角,海産物,雑貨,映画,その他。

 第3次日中民間貿易協定に関する往復書簡

  日本側書簡

 貴我双方の間に一九五五年五月四日東京において締結された日中貿易協定にたいしてわが国政府が支持と協力を与える問題に関し,日中貿易促進議員連盟の代表が一九五五年四月二十七日鳩山内閣総理大臣に会見した際,鳩山内閣総理大臣はこれにたいして,支持と協力をあたえる旨明言いたしました。

 右御通知いたします。

  一九五五年五月四日

   日本国際貿易促進協会

      会  長  村 田 省 蔵

   日中貿易促進議員連盟

      代表理事  池 田 正 之 輔

   中華人民共和国日本訪問貿易代表団

      団  長  雷 任 民 先 生

  中国側返信

 一九五五年五月四日付左の内容をもつ貴書簡を受領いたしました。

 (日本側書簡省略)

 右御返答申しあげます。

  一九五五年五月四日

   中華人民共和国日本訪問貿易代表団

        団  長  雷 任 民

 日本国際貿易促進協会

    会  長  村田省蔵先生

 日中貿易促進議員連盟

    代表理事  池田正之輔先生