[文書名] 日本赤十字社等と中国紅十字会との天津会議コミュニケ
下記日本赤十字社、日本中国友好協会及び日本平和連絡会の各代表と中国紅十字会の代表とは、一九五六年二月十四日より二十八日まで、天津において会議を開いた結果、次のとおり決定をみた。
一、中国紅十字会は、中華人民共和国最高人民検察院が起訴を免除した日本人戦争犯罪人三百三十五名及び遺骨七体、並びに遺品を日本赤十字社、日本中国友好協会及び日本平和連絡会の代表に引渡した。今後釈放される日本人戦争犯罪人の引渡しについては、その都度日本赤十字社、日本中国友好協会及び日本平和連絡会に通告するが、そのうち第二回分の引渡は七月下旬頃行われる予定であるのでその頃に興安丸を天津に派遣することとする。
二、日本人戦争犯罪人の家族が戦争犯罪人を見舞うため中国に赴くことについては、中国紅十字会は、必要な便宜と援助を与える。
第一回目に中国に赴く家族は七月下旬に、第二回目の起訴を免除される戦争犯罪人を輸送する興安丸に乗って中国に来ることができる。
三、日本中国友好協会及び日本平和連絡会と中国紅十字会とは、日本と中国との間の相互の居留民の自由往来の道が開かれるよう努力することを約束する。日本赤十字社は、この問題につき意見を保留する。
四、日本赤十字社、日本中国友好協会及び日本平和連絡会と中国紅十字会とは、人道上の立場から、次のことを認める。
中国に居て中国人と結婚している日本婦人でもし希望する場合は、正規の手続きを経て、日本に赴き親類を訪問し、再び中国へ帰って来ることができる。又、彼女の日本に居る家族が、もし希望する場合は、正規の手続きを経て、中国人と結婚している日本婦人を訪問し、再び日本へ帰って来ることができる。
五、在日中国人の送還については、従来どおり行う。
六、日本にある殉難中国人遺骨の送還については、適当な方法で引続き行う。
七、中国にある日本人の遺骨で、日本側に資料を提供し中国紅十字会で発見できるものであれば、中国紅十字会はその送還を援助することができる。
八、帰国を申請する日本居留民の帰国については、中国紅十字会は引続き援助する。
九、中国紅十字会は、調査の結果判明した日本人死亡者の別添名簿及び資料を、日本赤十字社、日本中国友好協会及び日本平和連絡会の代表に交付した。
一九五六年六月二十八日天津に於て
日本赤十字社代表 井上益太郎
日本中国友好協会代表 長野重右衛門
日本平和連絡会代表 阿部行蔵
中国紅十字会代表 趙安博 彭炎 倪斐君 紀鋒