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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中国の禁漁区設置に関する近藤晋一情文局長談話,中共の禁漁区に関する補充規定公布に関する報道について

[場所] 
[年月日] 1957年8月19日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),818頁.外務省情報文化局「外務省発表集」第6号,34−5頁.
[備考] 近藤晋一外務省情報文化局長談
[全文]

一,八月十六日の北京放送は,中共の国務院が七月二十六日渤海,黄海及び東海における機船底曳網漁業の禁漁区に関する命令の補充規定を公布し,公海たる東海の一部海域に新たに禁漁区を迫加設定した旨報道したところ,本件に関し八月十日中共の民間団体たる漁業協会からわが国の民間団体たる日中漁業協議会に発送されたと伝えられる通知は未だ到着していない趣きであるので,今回の中共側措置の内容は,なお不明確であり,従つて具体的且つ確定的な意見を述べることは出来ない。

二,しかしながら一国がその軍事上の必要によると,漁業保護等の理由によるとを問わず,公海上に,他国船舶の航行又は漁業に対する制限乃至禁止区域を一方的に設定し,これを強行し得ざることは,公海自由に関する国際法の原則から見て,当然且つ自明の理であり,中共側の従来規定したこの種法令も,すべてそれ自体としては,直接には,自国民のみに適用出来るものである。

三,さきに,わが国民間の日中漁業協議会代表は,一九五五年六月以降,日本漁船が中共側の設定したいわゆる軍事航行禁止区域,軍事警戒区域及び機船底曳網漁業禁止区域における操業は自制することとすべき旨並びにいわゆる軍事作戦区域に関する勧告の趣旨を諒とする旨中共の民間の漁業協会の代表に対して回答した事実がある。この種民間の話合は,現在の事情の下における現実的な話合としての意味はあろうが,右は,わが民間業界の自制的の措置であり,前述せる公海自由の原則に関するわが国の基本的立場はこれによつて何等影響されるものでないことは勿論である。