データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 石橋湛山元総理と周恩来総理との共同声明

[場所] 
[年月日] 1959年9月20日
[出典] 日中関係基本資料集、165‐166頁.
[備考] 
[全文]

 日本前首相石橋湛山先生は、中国周恩来首相の招請により、一九五九年九月九日から九月二十日まで、中華人民共和国の首都北京を訪問した。滞在中、石橋先生は、周首相、陳毅副首相と友好的なふんいきの中で率直に意見の交換を行った。双方は、両国民が手を携えて極東と世界の平和に貢献すべきであると認めた。

 上述の目的を実現するため、日中両国民は、領土主権の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和的共存の五原則と、バンドン会議の十原則に基き、両国民の友好の促進に努力し、国民の相互信頼を深め、両国の現在の関係を改善し、また一日も早く両国の関係を回復するよう協力すべきである。周首相は、このため日本が外来の干渉を振り切り、中国敵視政策を排除し、二つの中国をつくる陰謀に参加すべきでないと指摘した。石橋先生はこれに対し良識ある日本人士はかかる思想や行動を容認したことなく、今後も容認しないと表明した。

 石橋先生は、日中両国の政治、経済、文化の交流と発展は、実情に応じて努力すべきものであると語った。周首相は、これに同意すると表明し、そして日中両国の政治、経済の関係の発展は必ず結合して行うべきで、切離すことはできないと指摘した。これに対し、石橋先生も同意を表明した。

 石橋先生は、以上に関連して、日本の現状と現存の国際関係には満足することのできない点があり、最大の努力を尽して一日も早く改めるとともに、その実現を逐次促進すべきであると表明した。周首相は、これに対して歓迎の意を表するとともに、われわれは日本が一日も早く上述の希望を達成することを望み、中国人民は、この目標の実現のためになされる日本国民の努力を大いに支持し、日本の国民の独立、自由、民主、平和と中立の願望に心から同情を寄せるものであると述べた。

 石橋先生は、日中両国の政治家および各界人士の接触をふやし、率直に意見を交換することによって、相互の理解と友好を増進すべきであると提案した。周首相は、石橋先生のご来訪が相互間の理解を深めるために有益であったと語った。中国政府と中国人民は、過去と同様に日中友好に誠意のある日本の政治家と各界人士が中国を訪問されることを歓迎すると述べた。

一九五九年九月二十日

周恩来

石橋湛山