[文書名] 日・中・朝3国学術文化交流促進に関する共同声明
【1】
アジアの諸国、とりわけ日本、朝鮮および中国は、悠久数千年にわたる文化交流の伝統を有し、共通の特色をもつ世界に誇るべき文化遺産を互いに保持している。しかし、現状では、日本と朝鮮ならびに中国との間の正常な学術文化交流は、アジアにたいするアメリカ帝国主義の侵略政策によって、いちじるしく妨げられている。
世界各地で軍備拡大と侵略戦争準備に狂奔しているアメリカ帝国主義は、日本においては、沖繩と小笠原を占領し、全国各地に軍事基地網をはりめぐらし、日本全土を原子戦争基地化しつつあり、朝鮮を分断し、18年間にわたって南朝鮮を占領し、朝鮮の自主的平和統一を妨害しており、中国の不可分の領土である台湾を引き続き占領し、こうしてアジア地域で、緊張を激化させている。
ことに最近、アメリカ帝国主義は、日本軍国主義勢力をアジア侵略の「先兵」として押したてつつ、「日韓会談」の妥結を急がせ、侵略的な「東北アジア軍事同盟」の完成をねらい、ケネディのいわゆる「中国封じこめ」政策を実行するため、一層、策動を強めている。
アメリカ帝国主義の庇護のもとに復活した日本軍国主義は、アメリカ帝国主義のアジア侵略に協力しつつ、これに便乗して、みずからもまた侵略的な対外膨張の野望を実現しようとしている。このため、彼らは、日本の核武装をいそぐ一方、南朝鮮にたいして再侵略の道をひらくことに躍起となっている。
アメリカ帝国主義と、これに結びついた日本軍国主義は、このようにして、朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国にたいして引き続き露骨な敵視政策をとり、日本と両国との正常な関係の樹立ならびに自由な往来の実現を求める日本人民の正当な要求をふみにじっている。
【2】
極東で侵略態勢を強化しつつあるアメリカ帝国主義は、学術文化の分野においても、現在悪らつなくわだてをすすめ、日本政府をして日本と朝鮮ならびに中国との間の歴史的伝統を破壊させようとしている。政治的、経済的、文化的にアメリカ帝国主義に追従している日本政府は、このため、日本と朝鮮民主主義人民共和国との学術文化交流を禁止し、また日本と中華人民共和国との学術文化交流の発展を大きく妨げている。
アメリカ帝国主義はまた、日本の学術文化界に対して懐柔の手をさしのべ、新植民地主義の立場からのアジアの研究をおこなわせようとたくらんでいる。このため彼らは、学術研究団体にたいする研究資金の交付その他各種の巧妙な偽瞞的手段よって、日本の学術文化界に浸透し、これを自分の影響下おこうとしている。
「ライシャワー路線」と呼ばれる駐日米大使ラィシャワーを通ずる一連の策動は、日本にたいするアメリカ帝国主義のこのような文化侵略政策の現われである。
さらにアメリカ帝国主義は、1960年秋以来、日本と南朝鮮のカイライおよび蒋介石一味の学者を相互に結びつけ、同一財源から資金を3者に交付し、その研究結果を、みずからの極東支配に役立てようとしている。これはまさに、「東北アジア軍事同盟」の文化版にほかならない。
他方アメリカ帝国主義は、あらゆる陰険な方法と悪どい手段によって、腐敗した反動的文化と、いわゆる「アメリカ式生活様式」をアジアに流布し、人民の健全な思想と闘争意識をまひさせ、アジアにたいする彼らの文化支配体制を確立しようとしている。今日、南朝鮮で強行されている良心的な学者、文化人および真理の探求を熱望している青年、学生にたいする弾圧や、意識的につくりだされている学術文化、芸術の極度の退廃と堕落、社会道徳の腐敗は、その代表的な一例である。
これらの事実は、学術文化の分野においても、アメリカ帝国主義こそが、日、朝、中3国人民の共同の敵であることを示している。日本と朝鮮ならびに中国との間に人為的につくりだされている現在の不正常な関係と、学術文化交流にたいする障害は、もっぱらアメリカ帝国主義とこれに追従する日本政府の反動的政策に起因する。
【3】
こうした情勢のもとで、日、朝、中3国の学術文化交流を発展させ、共通の特色をもつ文化遺産を守り、その土台の上に新らたな文化を創造するために、当面、もっとも必要なことは、アメリカ帝国主義にたいする断固たるたたかいを展開することである。なかんづく、日、朝、中3国の学者、研究者、知識人が共同の敵とたたかって共通の目的を達成するために、連帯性を一層強化し、力を結集することが重要である。共同の敵アメリカ帝国主義に反対する日、朝、中人民間の戦闘的友誼に基礎をおいたこのような3国の学者、研究者、知識人の密接な連携と共同闘争は、アジア諸民族の独立と平和および友好のために大きく寄与するであろう。
今日、日本の学者、研究者、知識人は、米日反動勢力の侵略的文化攻勢に反対し、学問の純潔を守るために頑強にたたかっている。これもきわめて正しい。
かつて日本帝国主義は、長期にわたって朝鮮と中国を侵略し、朝鮮と中国の学術文化の発展を阻害したのみならず、日本自身の学術文化をも歪めてきた。日本の学術文化における帝国主義的、植民地主義的方法、観点、態度は、いまなお、完全に払拭されたとは言いがたい。日本の心ある学者、研究者、知識人は、この歴史的事実を深く反省し、再びこのようなことを繰り返してはならないと固く決意している。
今日朝鮮人民と中国人民は、アメリカ帝国主義の侵略に断固反対し、そのいつわりの「平和」政策と帝国主義の本質を徹底的に暴露しつつ、科学と民族文化、芸術をめざましく開花発展させている。このような態度は、日本の心ある学者、研究者、知識人がいま展開しているいわゆる「ライシャワー路線」反対のたたかいと、密接な共通性を有するものである。
【4】
このような共通のたたかいを、より一層有効に組織するためには、今後、日本、朝鮮、中国3国の学者、研究者、知識人が相互理解をさらに深め、共通の目標にむかって、緊密な協力のもとに研究活動をおこなう必要がある。
学術文化交流は互恵平等の原則に基いて進められるべきものである。これは、それぞれの国の人民の独自の要求を満すと同時に、相手方の利益と要求にも合致するものでなければならない。
学術文献の相互交換、学者、研究者、知識人の自由な相互往来、留学生の相互派遣、そして、共通の主題に関する共同研究などは、当面、3国の関係者が提携してたたかいとるべき課題である。
日本と朝、中両国との正常な関係が樹立されるまでの過渡期においても、3国の学術文化界の協力はきわめて必要である。共同の努力で、あらゆる方法と手段によって、正常な交流を実現するための条件をひとつひとつ、かちとってゆくべきである。とくに日本の学者、研究者、知識人は団結を固め、朝鮮および中国との学術文化交流の障害をつくりだしているアメリカ帝国主義の策動と日本政府の反動的政策とたたかわねばならない。また、3国人民間の友好と平和のための崇高なたたかいと密接に結合した、健全な学問研究の土台を築くために格段の努力を払わねばならない。
日本側のこのたたかいにとって、朝鮮人民の千里馬運動と自力更生の革命精神、ならびに中国の総路線、大躍進、人民公社の3本の赤旗を貫く精神は、大きな教訓であり、かつ限りない激励である。同時に、朝鮮、中国側は、アメリカ帝国主義の複雑巧妙な偽瞞、術策にまどわされることなく、断固としてこれに反対し、「安保」闘争以来、アメリカ原子力潜水艦の日本「寄港」、「日韓会談」等に反対する大衆闘争の戦列に積極的に参加している日本の学者、研究者、知識人に敬意を表し、これを支持激励する。
日本、朝鮮、中国の学者、研究者、知識人が学術文化交流の正常な発展に努め、その障害を除去するために断固たたかうならば、それは、それぞれの学術交化の独自な発展に大きく寄与するのみならず、アメリカ帝国主義の侵略に反対する人民大衆の全般的な闘争と、世界平和のために、とくにアジアの平和と安全のために多大な貢献をなすであろう。
われわれは日本、朝鮮、中国3国の学術文化界の共同闘争がかならずや広範な人民の支持をうけ、かつ、かならずや輝かしい成果をあげるであろうことを確信する。
1963年8月31日
北京にて
日本朝鮮研究所理事長
日本中国友好協会顧問 古屋貞雄
中国研究所理事
日本朝鮮研究所副所長 安藤彦太郎
教授、工学博士
朝鮮民主主義人民共和国科学院院士 李升基
教授、歴史学博士
朝鮮民主主義人民共和国科学院
社会科学部門委員会委員長 金錫亨
中国科学院哲学社会科学部学部委員 陳翰笙