データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2次日中LT貿易取決め事項

[場所] 北京
[年月日] 1963年9月23日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),482−483頁.「増補改訂 日中関係資料集(一九七一年刊)」,234−6頁.
[備考] 
[全文]

 一九六二年十一月九日,高碕達之助氏と廖承志氏との間に交換された覚え書(以下覚え書という)にもとづき,岡崎嘉平太氏と盧緒章氏は,覚え書第二年(一九六四年)度貿易の実施に関し,協議の結果,つぎのような取りきめをおこなった。

(1) 双方の輸出商品の品目,数量または金額は,つぎのとおりである。

 日本よりの輸出

  塩安          二九万トン

  尿素          二五万トン

  硫安          五〇万トン

  鋼材(特殊鋼材を含む)

            六四〇万英ポンド

  農薬および化学工業原料  

   (契約金額を確定金額とする)

            一四〇万英ポンド

  農業機械およびその他の機械

   (契約金額を確定金額とする)

            一四〇万英ポンド

  プラント      二〇〇万英ポンド

  中国よりの輸出

  大豆          二五万トン

  とうもろこし      一五万トン

  そば           五万トン

  雑豆           三万トン

  塩       四五〜一〇〇万トン

  石炭          一五万トン

  銑鉄        五〜一〇万トン

  鉄鉱石          五万トン

  錫           五〇〇トン

(2) 日本よりのプラント輸出については,第一年度にひき続き,双方とも積極的に推進するものとし,具体的商談の進展については,双方は随時緊密に連絡するものとする。

 第二年度のプラント品目について,中国側は,大日本紡績株式会社のビニロンプラントを輸入することを確定した。日本側はこれを確認し,同品目の契約が一九六三年内に調印されるよう努力するむね表明した。

 双方は,ビニロンプラント契約実行のため,日本倉敷レイヨン株式会社と中国技術進口公司が相互に相手側の国に派遣駐在させる代表にたいし,積極的な協力と配慮を与えることに同意した。

(3) 日本側が中国に輸出する塩安,鋼材,農業機械およびその他の機械の三項目の商品の延払い方式について,つぎのような諒解を見た。

 1. 塩安の代金は,船積み後一年目に一回払いとする。

 2. 鋼材の代金は,船積み後に二〇%支払い,残りの八〇%は船積み後二年内に,六カ月ごとに一回支払い,四回に分割して支払う。

 3. 農業機械およびその他の機械の代金の支払い方式は鋼材と同じとする。

(4) 双方は,覚え書第七項の商品検査と仲裁事項について具体的な取りきめをおこなった。その内容は附属書のとおりであり,同附属書は本取りきめ事項の不可分の一部分である。

(5) 中国側は本取りきめ年度から日本に冷凍豚肉の輸出とニツケル鉱石のスイツチ輸出を希望し,日本側は,関係方面と検討のうえ,中国側に返事することに同意した。

(6) 双方は,双方の当事者が一九六三年十二月三十一日までに北京で,本取りきめ事項による取引きの関係諸契約の調印を終えることに同意した。

(7) 本取りきめ事項は覚え書の不可分の一部分である。双方は本取りきめ事項を公表しないことに同意した。

(8) 本取りきめ事項に規定されていないものは,覚え書ともとの取りきめ事項の規定にもとづいて実行する。

(9) 本取りきめ事項は,一九六三年九月二十三日北京で調印し,日本語と中国語各二部をもって作成され,それぞれ同等の効力を有する。

  岡 崎 嘉平太

  盧  緒  章

付属書

一,商品検査

 日本の輸出品は,日本商品検査機関の品質重量検査証をもって代金支払の要件とする。中国の輸出品は,中国商品検験局の品質重量検査証をもって代金支払の要件とする。輸出品の検査費用は売主負担とする。ただし,買主は商品が目的港に到着した後に,再検査をおこなう権限をもつ。日本の輸入品は,日本商品検査機関が再検査にあたり,中国の輸入品は,中国の商品検験局が再検査にあたる。再検査の費用は買主負担とする。もし品質,重量などが契約に定める条件と符合しないことを発見した場合には,買主は売主にたいして賠償を要求する権限をもつ。ただし,輸送の途中において生じた品質と重量の自然変化は,賠償要求の範囲に入らない。賠償要求の期限は契約者双方が契約の中で個別に規定する。

二,商事仲裁

 契約の履行にさいして生じ,または契約に関連して生じた一切の紛争は契約者双方の協議により解決する。契約者双方の協議により解決できないときは仲裁にかける。

 仲裁は被告の居住する国においておこなう。

 日本においておこなう場合は,日本国際商事仲裁協会が当該協会の仲裁規定により仲裁をおこなう。仲裁人の入選は日本国際商事仲裁協会の仲裁人名簿に限らない。ただし,日本国,中華人民共和国および双方の同意した第三国国籍を有するものに限る。

 中国においておこなう場合は,中国国際貿易促進委員会対外貿易仲裁委員会が当該委員会の仲裁規定により仲裁をおこなう。

 仲裁決定は最終決定とし,契約者双方は,これに服さなければならない。

 双方は,相手側に仲裁事務の執行と要員の往来にあらゆる便宜をあたえ,かつその安全を保障することについて,それぞれ本国政府の同意を得ることとする。