[文書名] 日中民間漁業協定(1965年)
協定
日中漁業協議会と中国漁業協会(以下双方「漁協」と称する)からそれぞれ委任を受けた代表団は、平等互恵、友好協力の原則にもとづき、黄海・東海の漁場を合理的に利用し、漁業資源を保護し、双方漁船の操業中の紛争を避け、これによって日中両国漁業界の友好関係を増進するため、協議の結果、次の通り協定した。
第一条
本協定を適用する海域(以下「協定海域」と称する)は、北緯三九度四五分・東経一二四度九分一二秒の点、北緯三七度二〇分・東経一二三度三分の点、北緯三六度四八分一〇秒・東経一二二度四四分三〇秒の点、北緯三五度一一分・東経一二〇度三八分の点、北緯三〇度四四分・東経一二三度二五分の点、北緯二九度・東経一二二度四五分の点、北緯二七度三〇分・東経一二一度三〇分の点、北緯二七度・東経一二一度一〇分の点を順次に連ねて生ずる線の以東、北緯二七度以北の黄海・東海の公海とする。
第二条
一 双方漁協は、協定海域の六つの漁区について、それぞれ一定の期間内、日中双方(以下双方と称する)の機船底曵網漁船(トロール漁船を含む、以下機船と称する)の実際に漁獲に従事する最高の隻数を規定するものとする。その方法は付属書第一号の通りとする。
二 本条項の規定は、協定海域における航行を制限するものではない。
第三条
双方漁協は、漁業資源の保護をはかるため、双方機船について、その使用する底曵網の細目を制限するとともに、漁獲対象魚のうち、重要魚種で、特に保護の必要があると認められるものの幼魚について、その漁獲量を制限するものとする。
その実施については、付属書第二号に規定する。
第四条
双方機船は、機船相互間、または機船と他種漁船との間の海上における操業の安全をはかり、正常な秩序を維持するため、付属書第三号の規定を遵守するものとする。
第五条
一 一方の漁船が、海難その他不可抗力による災害に遭遇し、または乗組員の重傷、急病により、緊急避難もしくは救助の必要ある場合は、他方漁協および漁場にある漁船は、できうる限りその支援と救助に努めるものとする。
二 一方の漁船が緊急事故により、相手側の港に寄港する必要ある場合は、付属書第四号の規定を遵守するものとする。
第六条
双方漁協は、漁業資源を保護し、双方の漁業生産を発展させるため、漁業の調査研究および技術改善に関する資料を交換し、水産に関する科学者および技術者の交流をおこなう用意がある。その方法は付属書第五号の通りとする。
第七条
一 一方の船舶が、相手側の機船の第二条の規定に違反する状況を発見した場合、その所属側の漁協を通じて相手側の漁協にたいし、これを処理するよう通知するものとする。通知を受けた側の漁協は、すみやかに有効適切な処理をおこないその結果を相手側の漁協に通知するものとする。
二 双方の機船相互間、又は機船と他種漁船との間で、衝突あるいは漁具破損等の事故や紛争が発生した場合は、ただちに措置を講じて、被害漁船の安全を保障したうえ、できるかぎり現場において話しあい、事故状況の意見書をおたがいに交換するものとする。このあとそれぞれその所属側の漁協にこの旨を報告し、双方の漁協は実際の状況を調査したのち、協議のうえこれを処理するものとする。
第八条
本協定の付属書は協定本文と同等の効力を有するものとする。
第九条
本協定は双方漁協が責任をもって、これを施行するものとする。
第一〇条
本協定は一九六五年十二月二十三日より効力を発生し、有効期間は二カ年とする。一九六五年十二月十七日北京においてこれに署名する。本協定書は二部あり、それぞれ日本語と中国語により作成される。この二カ国語の協定書は同等の効力を有するものとする。
日中漁業協議会代表団
団長 徳島喜太郎
顧問 江口次作
団員 川上三干雄
小寺確郎
森口厳
井筒喜平
滝栄三郎
川本房好
中村正路
中国漁業協会代表団
団長 李英叔
副団長 王雲祥
顧問 趙安博
団員 耿如雲
韓巨礼
常飛虎
王野雨
陳信
(付属文書)
「第一号」
漁区の呼称、位置、定めた期間および漁船の数に関する規定
本協定第二条にもとづき、六つの漁区の呼称、位置、定めた期間および双方機船の実際に漁獲に従事する隻数を次の通り規定する。
第一漁区
一 漁区の位置は、北緯三八度・東経一二三度二二分の点、北緯三八度・東経一二三度四五分の点、北緯三七度・東経一二三度四五分の点、北緯三七度・東経一二二度五一分三〇秒の点、北緯三七度二〇分・東経一二三度三分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。
二 定めた期間は、三月一日より四月三十日まで、および十一月一日より十二月十五日までとする。
三 漁船の数は、日本漁船四六隻、中国漁船一一二隻とする。
第二漁区
一 漁区の位置は、北緯三七度・東経一二二度五一分三〇秒の点、北緯三七度・東経一二三度四五分の点、北緯三六度一五分・東経一二三度一五分の点、北緯三六度一五分・東経一二二度一分五秒の点、北緯三六度四八分一〇秒・東経一二二度四四分三〇秒の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。
二 定めの期間は、二月一日より三月三十一日まで、および十二月十六日より翌年一月十五日までとする。
三 漁船の数は、日本漁船六〇隻、中国漁船一五〇隻とする。
第三漁区
一 漁区の位置は、北緯三六度・東経一二一度四一分二〇秒の点、北緯三六度・東経一二二度三〇分の点、北緯三五度・東経一二二度三〇分の点、北緯三四度・東経一二一度三〇分の点、北緯三五度五一分一五秒・東経一二一度三〇分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。二 定めた期間は、八月一日より十月三十一日までとする。
三 漁船の数は、日本漁船八○隻、中国漁船八○隻とする。
第四漁区
一 漁区の位置は、北緯三五度五一分一五秒・東経一二一度三〇分の点、北緯三三度四九分三〇秒・東経一二一度三〇分の点、北緯三五度一一分・東経一二〇度三八分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線とする。
二 定めた期間は、四月一日より十月三十一日までとする。
三 漁船の数は、四月一日より九月三十日までは、日本漁船零隻、中国漁船零隻、十月一日より十月三十一日までは、日本漁船五〇隻、中国漁船五〇隻とする。
第五漁区
一 漁区の位置は、北緯三二度・東経一二二度三八分の点、北緯三二度・東経一二三度一五分の点、北緯三〇度四四分・東経一二三度四〇分の点、北緯三〇度四四分・東経一二三度二五分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。
二 定めた期間は、五月一日より七月三十一日まで、および十一月一日より十一月三十日までとする。
三 漁船の数は、日本漁船七〇隻、中国漁船一〇〇隻とする。
第六漁区
一 漁区の位置は、北緯三〇度四四分・東経一二三度二五分の点、北緯三〇度四四分・東経一二三度四〇分の点、北緯二九度・東経一二二度四五分の点を順次に連ねて再び起点に至るまでの線に囲まれた海域とする。
二 定めた期間は、三月一日より四月三十日まで、および十月一日より十一月三十日までとする。
三 漁船の数は、日本漁船七〇隻、中国漁船七〇隻とする。
本規定記載の漁船数は、機船底曳網漁船一隻をもって計算単位とし、トロール漁船一隻を機船底曳網漁船二隻と換算する。
「第二号」
幼魚の保護に関する規定
本協定第三条にもとづき、協定海域で操業する双方の機船は次の規定を遵守するものとする。
一 密集した幼魚を魚獲することを厳禁し、操業中密集した幼魚に遭遇した場合は、漁場を他に転ずるものとする。
二 幼魚の長さについての規定
(1)キグチの幼魚は、口先から尾鰭の末端までの長さが一九〇ミリおよび一九〇ミリ未満のものをいう。
(2)タチウオの幼魚は、口先から肛門までの長さが二三〇ミリおよび二三〇ミリ未満のものをいう。
三 幼魚の占める比率は、一航海の漁獲量の中、同品種魚類の総重量の二〇パーセントをこえないものとする。
四 底曳網の網目の長さは次の規定にしたがう。
(1)袋網および返し網の網目は五四ミリ未満であってはならず、その袋網の長さは二〇〇目をこえないものとする。
(2)その他の部分の網目は六五ミリ未満であってはならない。
(3)網目の長さは、実際に使用する網を水に浸し、収縮したのちの内径を基準として測定する。
五 本付属書の規定の正しい実施を保証するため、双方、「漁協」は、自国の漁船が本付属書の規定を厳格に実施するよう促進するため、それぞれ責任をもって、自国の具体的条件にもとづき、監督を保証する上での効果的な措置をとるものとする。一方の漁船が相手側の港に入港した場合、港の所在国の漁協は、当該漁船の本付属書の規定の実施状況について、人を派遣して検査をすることができ、本付属書の規定にたいする違反事項を発見した場合は、相手側の漁協にこれを通知するものとする。
付則
一 本付属書の規定「二」、「三」の幼魚の基準および幼魚の漁獲量に関する制限は、一九六六年四月一日より実施する。
二 本付属書の規定「四」の網目の規格に関する制限は、協定発効の日より実施し、上述の規定にそわない網は、できるかぎり速やかにとりかえ、おそくとも一年以内にとりかえを全部終えるものとする。
「第三号」
漁船の操業秩序維持に関する規定
本協定第四条にもとづき、双方機船相互間または機船と他種漁船との間の海上における操業の安全をはかり、正常な秩序を維持するため、双方漁船はその本国政府のみとめた国際航行に関する一般慣例をそれぞれ遵守するほか、次の規定に従うものとする。
一 標識および信号
(1)双方機船は、船橋の両側の外壁に船名または根拠地番号(漁船登録番号)を、船首両舷に船名を、船尾には根拠地名、船名をできうる限り大きく明確に見えやすく記すものとする。
(2)船橋外壁を、日本機船は黄銅色に、中国機船は灰色に塗装するものとする。
(3)機船の曳網中の標識は、中国機船にあっては、昼間はその見えやすい場所に「かご」一個をかかげ、夜間は三色灯、白灯および船尾灯をかかげるものとする。日本機船にあっては、昼間はその見えやすい場所に二個の円錐形をその頂点で上・下に結合させた形の黒色形象物一個をかかげ、夜間は上に緑灯下に白灯および舷灯、船尾灯をかかげるものとする。
(4)双方機船が、漁撈中、漁具が岩礁その他の障害物にからみついた場合、昼間は曳網の標識を下し、船上の見えやすい場所に直径○・六メートル以上の黒球一個をかかげるものとし、夜間は停泊灯をかかげるものとする。
(5)双方機船の夜間識別信号は船橋灯をもっておこない、日本機船にあっては長光二回を、中国機船にあっては短光三回を点滅するものとする。
(6)双方機船の針路汽笛信号は次の通りとする。
短音一回は、針路を右に転じている時。
短音二回は、針路を左に転じている時。
短音三回は、機関を後進にかけている時。
(7)漁場において投錨中の双方機船は、船上の見えやすい場所に、昼間は黒球一個をかかげ、夜間は停泊灯をかかげるものとする。
(8)漁撈中の帆船(機関を有するも現に使用していないものを合む、以下同じ)は、昼間は船上の見えやすい場所に「かご」一個をかかげ、機船が近づくのを見かけた場合は適当な信号で、漁具の延伸方向を示し、流網を延ばしている場合は、右の規定のほか、流網の末端の浮漂に赤旗一旗をかかげるものとする。夜間は船尾の見えやすい場所に白灯一個をかかげ、機船が近づくのを見かけた場合は、更に白光を発し、漁具の延伸方向を示すものとする。
二 操業中の遵守事項
(1)双方機船は、曳網中の機船の正船首前方において投網、投錨または該機船の操業を妨害する行為をしてはならない。
(2)曳網中の双方機船は、前方を曳網中の機船を追い越してその正船首前方で曳網し、該機船の操業を妨げてはならない。
(3)曳網中の機船の正後方および千メートルは、その漁具の延伸区とし、他の機船はこの範囲内において、投網または投錨もしくは該機船の正常曳網を妨げる行為をしてはならない。
(4)二組(組とは、一統の網を操する機船二隻をいう、以下同じ)の機船が並航して曳網する際は、相互にその間隔三百メートル以上を保持するものとする。
(5)機船の比較的集中している漁場における双方機船の曳網は、少数機船は多数機船の曳網方向に注意し、多数機船の曳網に困難または損害をあたえる行為をしてはならない。
(6)機船の比較的集中している漁場においては、双方機船は曳網方向を一定に保持するものとする。風圧または潮流により、これに従う事ができない時は、汽笛信号を送り、転針を示すものとする。
三 避行に関する事項
(1)曳網中の機船が真向に行き会った場合は、相互の距離五百メートル以上のところにおいて、それぞれ右に転針するものとする。ほとんど真向の場合は、五百メートル以上のところで、相互に針路をゆずりやすい方向にゆずり、同時に汽笛信号を発声するものとする。
(2)二組の機船が互いに針路を横切る時、相手船を右舷に見る方の機船は、相互の距離五百メートル以上のところで、暫時曳網を停止するか、減速曳網をおこなうか、または右に針路を転じ、相手船の通過後五百メートル以上になるまで継続するものとする。
(3)曳網中の機船は、揚網または投錨中の機船を避けなければならない。曳網中の機船は、揚網中の機船との距離五百メートル以上のところで、曳網針路を転じ、避航しなければならない。曳網中の機船は、投錨中の機船の後方を通過しなければならない。やむを得ずその前方を航行する時は、千メートル以上の距離を保持するものとする。
(4)曳網中の機船は、その前方に漁具を喪失して捜索中の機船を発見したときは、適宜針路を転じ、捜索機船に便宜をあたえるものとする。
(5)曳網中の機船は、その前方に故障(ロープ切れ、漁具がかり、その他)により揚網中の機船を発見したときは、曳網針路を転じてこれを避けるほか、該機船の信号に注意し、相互の漁具のからまぬように行動をとるものとする。
(6)双方機船は、漁撈中の帆船およびその漁具を避けるようにするものとする。
(7)航行中の機船は、漁撈中(投網曳網または揚網中)の機船の針路を避け、その近くを高速航行して相手の作業に困難をきたしてはならない。
(8)航行中の機船は、投錨中の機船の後方を航行するものとする。やむを得ずその前方を航行する時は、百メートル以上の距離を保持するものとする。
四 双方機船は、漁場において投錨する場合、相互に他の組との距離間隔それぞれ千メートル以上を保持するものとする。
五 双方機船は、以上各項の規定のほか、切迫した状況の場合、衝突または漁具のからみを避けるため、臨機応変の措置をとり、不測の事故の発生を防止するものとする。
六 双方機船および他種漁船は、操業の安全をはかるため、航行または漁撈中の当直見張りおよび慣習上の予防措置を怠ってはならない。
「第四号」
漁船が緊急事故により寄港する際および海難救助後の処理方法に関する規定
本協定第五条にもとづき、双方の漁船が緊急事故により、相手側の港に寄港する揚合、および海難救助後の処理方法を次の通り定める。
一 双方漁船は、次のいずれかの緊急事由により、帰港ができないかあるいはまに合わない場合は、相手側の指定した港に寄港することができるものとする。
(1)船体に重大な破損もしくは機船に重大な故障が生じ、船舶の安全にいちじるしい危険がある場合。
(2)颱風あるいは悪天候のため、緊急寄港以外の方法ではその危険が避けられない場合。
(3)乗員が速やかに医療をうけなければならない重傷病(伝染病はこれに含まれない)にかかった場合。
(4)救助された遭難者または船舶などを引き渡すため、相手国の港湾に入らなければならない場合。
二 中国側の指定する日本漁船の寄港できる港は連雲港、呉淞港とし、同時に寄港しうる最高限度は、呉淞港五〇隻、連雲港三〇隻とする。日本側の指定する中国漁船の寄港できる港は、長崎港、五島列島の玉の浦港、鹿児島県山川港とする。
三 双方漁船は、破損が甚だしいため、まったく航行能力を失いまた相手側の指定した港まで、これを曳航する他船のない場合は、もよりの相手側の港に直接入港することができる。ただし、到着後は直ちに当該地の関係機関にこれを報告しなければならない。
四 双方漁船は、相手側の指定した港に寄港しようとする場合は、先ず寄港地の港務管理機関にたいして申請をしなければならず、その許可をえて初めて寄港することができる。寄港許可申請の方法は次の通りである。
(1)寄港許可申請の連絡方法
(A)日本漁船が中国側の指定した港に寄港する場合は、次の二つの方法のうちいずれか一つをもって連絡するものとする。
(イ)上海海岸局を通じての連絡
イ 五〇〇KCをもって、上海海岸局を呼び出し、その応答をまって、国際的に通用している水上行動業務無線通信周波数、即ち四二五、四五四、四六八、四八〇KCのうち、いずれか一種によって発信し、同時に、上海海岸局の常用周波数四五八KCによる応答を聴取し、連絡がとれたのち、発信するものとする。
口 もし中波による通信に困難が生じた場合は、上海海岸局と連絡し、その同意を得た上で、短波にきりかえて通信することができる。この場合、漁船の呼び出し周波数は八三五四〜八三七四KC(八三六四KCを中心とする)としなければならない。上海海岸局の常用周波数八五〇二KCである。
ハ 六、七、八、九、十月の五カ月間において、黄海・東海に颱風警報が発令された場合、日本漁船は二〇九一KCをもって上海海岸局と連絡することができる。この場合の漁船の呼び出し周波数および通信周波数は共に二九〇一KCとする。
二 上海海岸局の呼び出し符号はXSG。
ホ 上海海岸局の一括呼び出し時間は、北京時間(グリニッジ標準時プラス八時間)を標準とし、毎時第三十分より開始する。
へ 直接上海海岸局と連絡することのできない漁船は他の漁船または漁業に関係のある船舶に依頼して連絡することができるものとする。
口 国際電報による連絡
国際電報をもって連絡する場合は、日中漁業協議会または同会の支部を通じ直接寄港地の港務管理機関に連絡するものとする。国際電報の電文は、中国電報記号または英文を用いなければならない。連雲港の港務管理機関の電信略号は「9666 LIENYUNKONG」、呉昇淞港の港務管理機関の電信略号は「3966 SHANGHAI」である。
(B)中国漁船が日本側の指定した港に寄港する場合は、次の三つの方法のうち、いずれか一つをもって連絡するものとする。
(イ)長崎無線電報局を通じての連絡
イ 五〇〇KCをもって、長崎無線電報局を呼び出し、その応答をまって、国際的に通用している水上行動業務無線通信周波数、即ち四二五、四六八、四八〇KCのうち、いずれか一種によって発信し、同時に長崎無線電報局の常用周波数四八三KCによる応答を聴収し、連絡がとれたのち、発信するものとする。
口 もし、中波による通信に困難が生じた揚合は、長崎無線電報局と連絡し、その同意を得た上で、短波にきりかえて通信することができる。この場合、漁船の呼び出し周波数は八三五四〜八三七四KCとしなければならない。長崎無線電報局の常用周波数は八七〇六KCである。
ハ 長崎無線電報局の呼び出し符号はJOS。
ニ 長崎無線電報局の一括呼び出し時間は、日本時間(グリニッジ標準時プラス九時間)を標準とし、毎偶数時の第五分より開始する。
(ロ)漁業無線局を通じての連絡
イ 長崎無線電報局との連絡が困難な場合は、下関、戸畑、福岡、長崎の漁業無線局を通じて連絡することができる。この場合、漁船の呼び出し周波数および通信周波数は共に二〇九一KCとする。
ロ 漁業無線局の呼び出し符号および発信は次の通りである。
下関 JFK 常時
戸畑 JFN 常時
福岡 JFO 常時
長崎 JFR 常暗
ハ 直接、長崎無線電報局あるいは漁業無線局と連絡することのできない漁船は、他の漁船または漁業に関係ある船舶に依頼して連絡することができるものとする。
(ハ)国際電報による連絡
国際電報をもって連絡する場合は、中国漁業協会または同会の分会を通じ、日中漁業協議会を経由して、寄港地の港務管理機関に連絡するものとする。国際電報の電文は、ローマ字つづりによる日本文の平文としなければならない。日中漁業協議会の電信略号は「NICHUKYOGIKAI TOKYO」である。
(2)双方の指定した海岸局、無線電報局または漁業無線局と連絡する場合の電文用語は、英文による平文とし、電報発信時に使用する電信符号は国際モールス信号とする。
(3)寄港の許可申請の連絡をする場合は、寄港しようとする漁船の所属会社名、船名、根拠地名、トン数、船長氏名、乗組員数、寄港しようとする港名、到着予定日時および寄港の理由を相手側に通知するものとする。
(4)寄港の許可をうけて寄港地に入港しようとする漁船は、入港に先だち、港外の錨地に停泊し、信号をもって当該地の港務管理機関に、あらためて入港の許可を要請しなければならず、その許可を得たのち、はじめてその指定する地点に入って寄港することができるものとする。
港務管理機関にたいする信号方法は、昼間は国際信号旗をかかげ、夜間は発光信号を用いるものとする。
五 漁船の寄港の期限は、颱風、悪天侯、もしくは漁船修理の期間などに必要な寄港期間のみとする。もし当該地で修理ができない場合は、寄港している漁船の所属する側の漁協が責任をもって十日以内に方法を講じて、寄港している漁船を本国に曳航するものとする。
在泊中は、次の事項を守らなければならない。
(1)相手国政府の関係法規を守り、当該地の関係機関の指示に従うとともにその訊問と検査をうけること。
(2)相手国側の漁業禁止区および領域を通過するときは、寄港する港に出入する上に必要な航路のみを通るものとし、迂回針路をとってはならないこと。
(3)入港した後は、寄港した港の関係機関に関係書類を提出し、入港の理由を説明すること。
(4)測量、写図、撮影、偵察、気象記録、水深記録その他寄港と無関係の記録をしてはならないこと。
(5)無線発信機、無線電話機、レーダー、方向探知機、音響深測機、発火信号、発焔信号、信号砲などを使用してはならないこと。
(6)当該地の港務機関の同意なくして、随意に港内を航行したり、停泊地点を移動してはならないこと。
(7)相手側の関係機関の許可がない限り、すべての乗組員は随意に上陸してはならないこと。
七 寄港している漁船が、食料品、飲料水、医療用品その他の必需品の補充を要する場合は、寄港地の漁協またはその他の関係団体は最善の配慮をあたえ協力するものとする。
八 一方の漁船が、相手側の漁船を救助したときは、直ちに救助された漁船の所属会社名、船名、救助した日時、位置などを自国側漁協に報告すると共に、遭難船とその乗組員を現場において相手側の漁船に引き渡すものとする、もし引き渡しが不可能な場合は、双方漁協が連絡をとり、その協議の結果によって、自国側漁協の指示に従い処置するものとする。
九 本規定「一」、「三」の事由によらず、相手国の港に入港した漁船、または「六」の各項の規定を守らなかった漁船は相手国の関係法規に照らして処置され、その責任は当該漁船自らが負わなければならない。
十 本規定を実行するうえで、上海海岸局、長崎無線電報局および漁業無線局が漁船と連絡をとり、漁船が負担すべき電報料は、中華人民共和国郵電部上海郵電管理局と日本の国際電信電話株式会社とが国際電報料決済方法により決済する。その他の支出に要した経費は、双方漁協がそれぞれたて替えて毎年の上半期分については八月に、下半期分については翌年の二月に決済する。
「第五号」
漁業資料の交換および技術の交流に関する規定
本協定第六条にもとづき、双方の漁協は、漁業資料の交換と技術の交流に関する事項を次の通り規定する。
一 漁業資源について
(1)相互に黄海・東海の漁業資源の調査研究および統計に関する資料を交換するものとする。
(2)相互に試験研究機関の施行する魚類標識放流業務に協力するものとする。
二 相互に漁撈の設備、技術および漁船機関の操作経験に関する資料を交換するものとする。
三 相互に水産加工技術に関する資料および加工見本を交換するものとする。
四 相互に水産養殖の試験研究および技術経験に関する資料を交換するものとする。
五 相互に水産に関する科学者および技術者の交流をおこなうものとする。
往復書簡
中国漁業協会代表団より日中漁業協議会代表団あて
中国漁業協会代表団は、中華人民共和国政府の指示にもとづき、ここに、日中漁業協議会代表団に、次の事項を通知いたします。
一 中華人民共和国政府は、国防の安全と軍事上の必要により中国沿岸一帯の海域について、次のように規定しました。
(1)北緯三十九度四十五分・東経百二十四度九分十二秒、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分の二点を連ねて生ずる線の以西の海域は軍事警戒区域であり、中国政府の関係部門の許可がなければ、日本漁船はこの区域に入ることはできません。
(2)北緯三十一度・東経百二十二度、北緯三十度五十五分・東経百二十三度、北緯三十度・東経百二十三度、北緯二十九度三十分・東経百二十二度三十分、北緯二十九度三十分・東経百二十二度の五つの点を連ねて生ずる線に囲まれた海域は、軍事航行禁止区域であり、日本漁船がこの区域内に立ち入ることは禁じられています。
二 北緯二十七度以南、台湾の周辺を含む中国大陸沿岸以東の海域は、今なお軍事作戦の行動がおこなわれている状況のもとにあるので、日本船がこの海域に入って漁撈しないよう特に勧告いたします。さもなければ、そこで生ずる一切の結果については、当該漁船自らが責任を負わなければなりません。
三 中華人民共和国政府は、中国沿海の漁業資源を保護するため、ここに、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分、北緯三十六度四十八分十秒・東経百二十二度四十四分三十秒、北緯三十五度十一分・東経百二十度三十八分、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十五分、北緯二十九度・東経百二十二度四十五分、北緯二十七度三十分・東経百二十一度三十分、北緯二十七度・東経百二十一度十分の七つの点を連ねて生ずる線以西の海域を機船底曳網漁業禁止区域と規定しており、中国の機船底曳網漁船がこの区域で漁撈することは禁止されています。同時に、日本の機船底曳網漁船も、この区域に入って漁撈することはできません。従って、中国漁業協会代表団は、ここに、日中漁業協議会代表団に対し、上述の通知事項についてもっとも十分な注意を払い、すべての日本の漁船が上述の規定を守るよう保証するため、日中漁業協議会が効果的な措置をとるよう促すことを希望します。
日中漁業協議会代表団
団長 徳島喜太郎殿
中国漁業協会代表団
団長 李英叔
副団長 王雲祥
一九六五年十二月十七日
日中漁業協議会代表団より中国漁業協会代表団あて
日中漁業協議会代表団は一九六五年十二月十七日北京において締結された「日中漁業協議会と中国漁業協会との黄海・東海の漁業に関する協定」に付随して発せられた、一九六五年十二月十七日付の貴翰に対し、次のごとく回答致します。
一 次の三つの軍事区域について、我が代表団は、貴国政府の措置が、国籍の如何に拘らず総ての船舶に対し適用され、特に日本漁船のみを対象とするものではないとの理解のもとに、
(1)北緯三十九度四十五分・東経百二十四度九分十二秒、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分の二点を連ねて生ずる線の以西の軍事警戒区域については、貴国政府の関係部門の承認なくしては、日本漁船は入らぬこととします。
(2)北緯三十一度・東経百二十二度、北緯三十度五十五分・東経百二十三度、北緯三十度・東経百二十三度、北緯二十九度三十分・東経百二十二度三十分、北緯二十九度三十分・東経百二十二度の五つの点を連ねて生ずる線に囲まれた軍事航行禁止区域については、日本漁船は、立入らぬこととします。
(3)北緯二十七度以南の軍事作戦区域については、貴代表団の勧告の趣旨を諒とし、その旨を日本漁船に周知徹底させます。
二 貴国政府が、中国沿海の資源を保護する目的を以て、北緯三十七度二十分・東経百二十三度三分、北緯三十六度四十八分十秒。東経百二十二度四十四分三十秒、北緯三十五度十一分・東経百二十度三十八分、北緯三十度四十四分・東経百二十三度二十五分、北緯二十九度・東経百二十二度四十五分、北緯二十七度三十分・東経百二十一度三十分、北緯二十七度・東経百二十一度十分の七つの点を連ねて生ずる線以西の機船底曳網漁業禁止区域については、我が代表団は一国の国内法が、公海において、直ちに他国氏{前1文字ママ}を拘束することはできないものであると理解するものであるが、貴国政府が機船底曳網禁止区域を設定した趣旨に注意を払い、日本機船底曳網漁船が、上記禁止区域において操業しないよう、自主的に制止することを約束します。
我が代表団が貴代表団の勧告にもとづき、上記の措置を表明したのは、黄海・東海漁場における日中双方漁船の平和共存を保障し日中友好の増進を念願するためであります。
中国漁業協会代表団
団長 李英叔殿
副団長 王雲祥殿
日中漁業協議会代表団
団長 徳島喜太郎
一九六五年十二月十七日
北京において
備忘録
中国漁業協会代表団より日中漁業協議会代表団あて
黄海中部における北緯三十四度・東経百二十三度の点、北緯三十四度・東経百二十四度の点、北緯三十三度・東経百二十三度の点を連ねて生ずる線に囲まれた海域は、魚類の密集する場所であり、毎年十月、十一月と翌年一月、二月の四カ月間には中国も日本も多くの漁船がこの漁場で操業しています。魚類資源の衰退の状況がはなはだしく、無制限な漁獲を継続するならば、資源枯渇の危険をきたすことにかんがみ、中国漁業協会代表団は、漁類資源の継続的減衰を防止し、中日両国漁業生産の長期の利益に役立つよう、中日双方の漁協が、上述の海域と期間においてそれぞれ自国の漁船数を八十隻以内に制限し、この制限をこえてはならないことを提案します。
日中漁業協議会代表団
徳島喜太郎 団長
中国漁業協会代表団
団長 李英叔
副団長 王雲祥
一九六五年十二月十七日
日中漁業協議会代表団より中国漁業協会代表団あて
黄海中部における北緯三十四度・東経百二十三度の点、北緯三十四度・東経百二十四度の点、北緯三十三度・東経百二十三度の点を連ねて生ずる線に囲まれた海域は、魚類の密集する場所であり、毎年十月、十一月と翌年一月、二月の四カ月間には、日本も中国も多くの漁船がこの漁場で操業しています。魚類資源の衰退の状況がはなはだしく、無制限な漁獲を継続するならば、資源枯渇の危険をきたすことにかんがみ、日中漁業協議会代表団は、魚類資源の継続的減衰を防止し、日中両国漁業生産の長期の利益に役立つよう、日中双方の漁協が、上述の海域と期間においてそれぞれ自国の漁船数を八十隻以内に制限する旨の中国漁業協会の提案に同意し、適切な措置をとります。
中国漁業協会代表団
李英叔団長
王雲祥副団長
日中漁業協議会代表団
団長 徳島喜太郎
一九六五年十二月十七日
共同声明
日中漁業協議会代表団と中国漁業協会代表団は、一九六五年十一月二十七日から十二月十六日にかけ、日中両国の民間漁業協定の修正について北京で会談をおこない、一九六五年末から一九六七年末にかけての日中両国の黄海・東海に関する民間漁業協定を締結した。
双方は、日中間の国交がまだ回復されていない状況の下で、これまで双方の間で締結された民間漁業協定が、黄海・東海の漁業資源の保護、海上における操業秩序の維持、両国の人民と漁業界の友好協力の増進等の面で、積極的な役割をはたしてきたことを一致してみとめた。
現在、アメリカ帝国主義がベトナムでおこした侵略戦争のいっそうの拡大により、アジアの平和と黄海・東海の安全は重大な脅威をうけている。また「日韓条約」の締結により、さらに緊迫の度を加えた。双方はこれにたいし、断固反対するものである。
双方は、両国人民と両国漁業界の友好協力および共同の利益をまもるために帝国主義とその追随者の破壊活動に乗せられないよう、このたび締結された日中民間漁業協定を厳格に遵守すべきであると考える。
双方は、日中両国人民間の友好関係の増進は、両国人民と両国漁業界の共同の利益であり、共同の願いであることを確認した。したがって、双方は友好協力をいっそう強めるため努力するものである。
日中漁業協議会代表団
団長 徳島喜太郎
顧問 江口次作
団員 川上三千雄
小寺確郎
森口厳
井筒喜平
滝栄三郎
川本房好
中村正路
中国漁業協会代表団
団長 李英叔
副団長 王雲祥
顧問 趙安博
団員 耿如雲
韓巨礼
常飛虎
王野雨
邵再●{傷の右側の中がメ}
陳信
一九六五年十二月十七日
北京において