[文書名] 日中国交回復促進議員連盟連盟総会宣言
総 会 宣 言
中国をめぐる最近の情勢の変化は重大であり,日本政府が漫然と従来の政策を続けることはもはや許されない。
カナダ,イタリアが相ついで,北京政府を中国の唯一の合法政府として承認し,国連においては,台湾政府に代わつて北京政府に中国代表権を与えるというアルバニア案が過半数の賛成を得た。しかし相変わらず重要事項指定方式が可決せられ,中国の国連加盟は本年も阻止されたが,賛否の票差は予想以上に接近し,中国の国際社会への復帰は強い現実性をもつてきている。
七億の国民を代表して国連に入つて来る中国大陸の政府と日本が国交をもつていないとすれば,日本にとつて多くの困難が予想されるのは当然である。日中国交回復は,日本の政治にとつて緊急の課題となつてきたが,政府は依然として台湾政府を唯一の中国の合法政府とすることに固執している。それは時代錯誤であり日本国民の現在及び将来の利益に反する。
台湾政府が大陸に復帰する可能性が全く存在しない以上,日華平和条約が大陸に適用されることはあり得ない。とすれば,同条約第一条の「両国間の戦争状態はこの条約が効力を生ずる日に終了する」という規定も大陸に適用されることはあり得ず,日中両国間には依然として法的戦争状態が存続し,かつ継続するものと見なければならない。
中国のごとき隣接する大国との間に,法的戦争状態が継続することは,日本の平和と安全にとつてきわめて有害であることは論をまたない。又,大陸の中国人が長い侵略戦争の犠牲を記憶しているに反し,われわれがそれを忘れ,最大の戦後処理を怠ることの危険も指摘しなければならない。
アメリカの軍事占領下及びその直後の時期においては,国交回復は不可能であつたが故に,日中貿易の促進も意味があつた。現在は,貿易の促進すら正常な国交なしには不可能になつてきた。法的な戦争状態を継続したままの不正常な関係によつて日中の友好を発展せしむることはもはや甚しく困難であり,友好関係の土台として国交回復を真剣に考えねばならぬ時となつた。
われわれ衆参両院の有志議員は,党派やイデオロギーの別を超えた全国民的課題として,日中間の法的な戦争状態に終止符をうち,平和共存,内政不干渉の原則の下に国交を回復するため,力を合わせて進むことの合意に達した。われわれはそれ故,日中貿易促進議員連盟を日中国交回復促進議員連盟と改めた。
アメリカ軍事力のアジアからの引き上げは希望すると否とにかかわらず,漸くテンポをはやめつつあり,その点から見ても,日中間に平和な国交関係を樹立することは,焦眉の急務である。われわれは,政府に万難を排する決断を迫らなければならない。
国交回復への方途及び活動方針については,各党有志の合意を忍耐強く求め,大目的を一つにする団結が維持されるよう努める。
われわれは,各党有志による超党派の合意によつて,日中関係の停滞を打開し,アジアの平和とアジアの諸民族の交歓を回復して,国民の胸に新しい希望の火を点ずるため,たゆまざる努力を行うことを誓う。
右宣言する。
昭和四十五年十二月九日
日中国交回復促進議員連盟第一回総会