[文書名] 日中両覚書貿易事務所代表の会談コミュニケ
中日双方の覚書貿易事務所代表は一九七一年十二月四日から十二月二十一日まで北京で会談を行ない、中日関係と、双方が共に関心をもつ問題について十分意見を交換した。また、双方は一九七二年度の覚書貿易事項について取決めを行なった。
周恩来総理と李先念副総理、郭沫若副委員長、王国権副会長は、招きに応じて友好訪問にこられた故松村謙三先生のご家族小堀治子と松村進をふくむ日本側代表団全員と会見し、友好的な談話を行なった。
双方は、会談のなかで一致して次のように認めた。国際情勢のめざましい発展は、この数年来双方が発表した会談コミュニケがまったく正しいことをさらに立証した。これまでのコミュニケが明らかにしてきた、中日関係の政治原則と日本軍国主義復活、米日反動派の「沖縄返還」の欺瞞、日米軍事結託などの問題に関する見解は、ますます広範な支持をえている。いま、日本国内では、日中友好と日中国交回復を促進する新しい高まりが盛りあがっている。これは日中友好を真に切望するすべての勢力に対する大きな励ましとなっている。これとは逆に、佐藤政府は時代の流れに逆らい、世論を無視して、中国敵視政策をかたくなにおしすすめ、「一つの中国、一つの台湾」をつくる陰謀活動に拍車をかけ、その結果、自らをますます孤立させている。
日本側は、佐藤政府が第二十六回国連総会で、国民多数の反対にもかかわらず、逆重要事項決議案などの共同提案国を務めたことに深く遺憾の意を表するとともに、次のように指摘した。中国の合法的権利を回復し、蒋介石集団を追放する決議が圧倒的多数で可決されたあとも、佐藤政府は依然として、「台湾帰属未定」論を固執し、「台湾独立」の画策を強めている。これは実際には、引続き「二つの中国」をつくりあげることにほかならず、絶対に許せないことである。佐藤政府のこれらの行動からみれば、その言うところの「日中関係改善」はいささかの誠意もないのであり、まったく苦境をのがれるためのごまかしであることを示している。
中国側は次のように重ねて強調した。台湾省は中華人民共和国の神聖な領土の不可分の一部であり、台湾人民は中国人民の血を分けた同胞である。台湾はかつて五十年のながきにわたって日本軍国主義に侵略占領されたが、第二次大戦後、カイロ宣言とポツダム宣言に基づいて、すでに一九四五年十月二十五日中国に返還された。いわゆる「台湾帰属未定」というのはまったく荒唐無稽な謬論である。ひとにぎりの「台湾独立」分子をあやつり、台湾を中国から切離そうとする米日反動派の陰謀は必ず失敗するにちがいない。中国人民は必ず台湾を解放する。
日本側は中国側の上記の厳正な立場に全面的な賛意を表明するとともに、次のように確認した。世界には一つの中国しかなく、それは中華人民共和国であり、中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法政府である。台湾省は中華人民共和国の領土の不可分の一部であり、しかもすでに中国に返還されている。いわゆる「日蒋条約」はまったく不法であり、無効であって、廃棄されなければならない。
双方は一致して次のように表明した。上に述べた中日関係についての政治原則はいずれも確固不動のものであって、交渉のなかで解決するような問題ではまったくない。双方は中日関係正常化の促進を志す友人がみな上記の原則を堅持して、最後まで闘い抜くものと確信する。
中国側は、故松村謙三先生が晩年各方面の妨害をものともせず、日中友好のために尽力された献身的な精神を高く評価し、日中覚書貿易関係の友人が松村先生の遺志をうけつぎ、双方の会談コミュニケの精神を守るために払った積極的な努力に支持の意を表わした。日本側は今後いっそう広範な勢力と団結し、日本政府の設けた障害を排除し、松村先生のなしとげられなかった事業を完成するために努力する決意を表明した。
双方は一致して次のように表明した。今度の会談は相互の理解をさらに深め、厳粛かつ真剣に行なわれ、円満な成果をおさめた。双方はこれまでの基礎の上に不屈の努力を重ね、中日友好の輝かしい未来を迎える決意である。
中国側からは劉希文、徐明、呉曙東、林波、丁民、王效賢、石志毅、江培柱が会談に参加した。
日本側からは岡崎嘉平太、古井喜実、田川誠一、松本俊一、笹山茂太郎、吉崎鴻造、河合良一、渡辺弥栄司、大久保任晴、安田佳三、姫野瑛一、井上宣時、嶋倉民生、大久保勲、小林二郎、松村進、石黒豊、金光貞治が会談に参加した。
中国中日備忘録貿易弁事処代表
劉希文
徐明
呉曙東
日本日中覚書貿易事務所代表
岡崎嘉平太
古井喜実
田川誠一
松本俊一
一九七一年十二月二十一日 北京にて
(一九七一・十二月二十二日、人民日報)