データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 民社党訪中代表団と中日友好協会代表団の共同声明

[場所] 
[年月日] 1972年4月13日
[出典] 日中関係基本資料集、404−407頁.
[備考] 
[全文]

 日本民社党中央執行委員長春日一幸を団長とし、中央執行委員、総務局長小平忠を副団長とする日本民社党訪中代表団は、中日友好協会の招きに応じて、一九七二年三月三十一日から四月十五日まで中華人民共和国を訪問した。

 国務院周恩来総理、人民代表大会常務委員会郭沫若副委員長は代表団の全員と会見し、友好的な談話をおこなった。

 日本民社党代表団と、王国権を団長とし王暁雲を副団長とする中日友好協会代表団は会談をおこなった。双方は相互に尊重し、平等に話しあい、相違点をのこして共通点をもとめる精神にもとづいて、中日関係と当面の国際情勢などともに関心をよせている問題について十分に意見を交換した。

    (1)

 双方は一致してつぎのように認めた。中日両国は近隣である。中日友好と両国の国交回復を促進することははばむことのできない歴史の流れであり、これは中日両国人民の願望と利益に合致するばかりでなく、アジアと世界の平和維持にも役だつものである。

 双方は中日関係の歴史と現状を回顧し、討議したあと、一致してつぎのように指摘した。日本政府はアメリカに追随し、中国を敵視する政策を実行し、中華人民共和国が成立したのち、中国人民によってすでにいち早くくつがえされた蒋介石グループといわゆる「平和条約」をむすび、いまなおこれをかたくなに固執している。そのため、中日両国の戦争状態はいまなお終結しておらず、中日両国の国交はいまだに回復できないままになっているが、その責任はすべて日本政府にある。

 民社党側はつぎのように声明した。一日もはやく両国間の戦争状態を終結させ、平和条約を締結し、国交を回復するためには、まずつぎの基本的原則を認めなければならない。

 〔1〕世界には一つの中国しかなく、それは中華人民共和国である。中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法政府である。「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」、「一つの中国、二つの政府」など荒唐無稽な主張にだんこ反対する。〔2〕台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部であり、しかもすでに中国に返還されたものである。台湾問題は純然たる中国の内政問題であり、外国の干渉を許さない。「台湾地位未定」論と「台湾独立」を画策する陰謀にだんこ反対する。〔3〕「日台条約」は不法であり、無効であって、廃棄されなければならない。

 双方は、上記の諸原則は中日国交回復の前提であり、断固として貫徹しなければならないと認めた。

 中国側はつぎのようにきびしく非難した。佐藤政府は日本人民の強い願望を無視し、世界の大勢にさからって、ひきつづき中国敵視政策をおしすすめ、中日国交の回復を妨げている。最近、内外の圧力におされて佐藤政府はもっともらしくとりつくろい、世論を欺瞞しようとしているが、いまなお「台湾地位未定」論を鼓吹し、「台湾独立」の陰謀活動にくわわっている。これは日本反動派の、台湾にたいする野望とあくまで中国人民を敵とする頑迷な立場をあますところなく暴露したものである。

 日本民社党は、日本政府が日中国交回復の基本的原則をすみやかに受けいれ、中国敵視政策を根本的に改めるよう強く要求するものである。日本民社党は、第十六回党大会の日中国交回復についての方針を堅持し、世論を動員し、障害をのり越えて、日中関係の正常化をはばむ反動勢力と対決して闘う決意である。

    (2)

 双方は一致してつぎのように認めた。いま日本は軍国主義の道をあゆむか、それとも独立、民主、平和、中立の道をあゆむかの岐路にたっている。かつて日本軍国主義がおこした侵略戦争は、中国人民とアジア諸国人民にはかりしれない損失をもたらしたばかりでなく、日本人民にもきわめて大きな災をこうむらせた。したがって、日本がいずれの道をあゆむかは、人びとの深く注目するところである。

 中国側はつぎのように指摘した。日本軍国主義の復活はすでにかなり重大な段階にまできている。日本反動派は軍備拡張に拍車をかけ、ふたたび対外拡張と侵略の道をあゆもうとしている。こうした現実の危険は中国人民とアジア諸国人民の高い警戒心と強い反対をひきおこしている。中国人民は日本軍国主義の復活に反対し、独立、民主、平和、中立をめざす日本人民の正義の闘争をだんこ支持する。

 日本側はつぎのように指摘した。日本には、一部の軍国主義勢力が存在しており、かれらは日本を軍国主義化するさまざまな策謀活動をおこなっている。しかし日ましにめざめている日本国民はかれらのこうした策謀の実現を許すはずはない。民社党は日本軍国主義の復活を阻止するため、国民の意志と力を結集し、全力をあげて闘い、民主、自由、平等、福祉、平和の国家の建設に努力する決意である。

    (3)

 双方は一致してつぎのように指摘した。当面、国際情勢は激しくゆれ動き、変化しており、ひきつづき世界諸国人民にとって有利な方向へ発展している。武力を背景とした二つの超大国はいたるところで強権政治と覇権主義をおしすすめ、勢力範囲を争奪しているが、これは諸国人民のいっそう強い抵抗にあっている。

 双方は一致してつぎのように主張した。国家は大小をとわず、一律に平等でなければならず、各国は社会制度のいかんをとわず、平和共存の五原則にもとづいて、相互間の関係を処理しなければならない。各国のことがらは諸国人民がみずから解決すべきである。外国におけるすべての軍事基地はのこらず撤去されなければならない。すべての外国軍隊は自国にひきあげなければならない。

    (4)

 中国側はつぎのように指摘した。核兵器の全面禁止と完全廃棄は全世界すべての国家の平和と安全にかかわるものである。中国の核兵器の開発は、まったく防御のためのものであり、超大国の核独占、核威かくおよび核恐喝を打破するためのものであり、最終的に核兵器と核戦争をなくすためのものである。日本側はこれにたいして理解の意をしめした。中国政府が一再ならず声明してきたように、中国はいつ、いかなる情況のもとでも、さきに核兵器を使用しない、また、世界各国首脳会議をひらいて核兵器の全面禁止と完全廃棄の問題を討議し、その第一歩としてまず核兵器の不使用について取り決めをむすぶよう提案することをかさねてあきらかにした。

 日本側は中国のこの立場を支持し、二つの超大国もすべての国家にたいし、さきに核兵器を使用しない義務をおうべきであり、また外国からその核兵器を撤去すべきであると認める。日本民社党は非核武装の立場を堅持する見地から、日本が核武装を実行することにあくまで反対する。

 双方は、核兵器の全面禁止と完全廃棄をかちとり、世界の平和を確保するため、奮闘することを表明する。

    (5)

 中国側は、第十五回党大会いらい、日本民社党が積極的に日中友好と両国の国交回復の促進を主張し、そのために有益な活動をすすめていることによろこびを感じている。中国側は民社党のこの努力が良き成果をかちとるものと信じている。

 双方は日本民社党代表団の初めての訪中がおさめた成果に満足の意を示した。双方はこんごもひきつづき友好的な接触を保つとともに、両国の民間の人事往来、文化交流のいっそうの拡大と平等互恵の基礎にたつ貿易の発展などの面で、それぞれ貢献するつもりである。

 中国側からは中日友好協会代表団のメンバー蕭向前、陳抗、林波、金蘇城、李孟競、江培柱、唐家●{おうへんに旋}がこの会談に出席した。

 なお、日本側からは民社党代表団のメンバー大内啓伍、麻生良方、内海清、西田八郎、藤井恒男、栗林卓司、竹林喬、安井延がこの会談に出席した。

中国中日友好協会代表団 団長 王国権(署名)

副団長 王暁雲(署名)

日本民社党訪中代表団 団長 春日一幸(署名)

副団長 小平忠(署名)

一九七二年四月十三日 北京にて

{〔1〕は原文ではマル1