データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中貿易協定(日本国と中華人民共和国との間の貿易に関する協定)

[場所] 
[年月日] 1974年1月5日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),664−665頁.官報,49.6.15.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及び中華人民共和国政府は,

 千九百七十二年九月二十五日に北京で発出された両国政府の共同声明に基づいて,

 従来の民間の貿易関係によつて積み上げられてきた成果を尊重し,

 両国間の貿易を平等互恵の原則の基礎の上に一層発展させ,両国間の経済関係を強化することを希望し,

 友好的な協議を経て,

 次のとおり協定した。

    第一条

1 両締約国は,輸出入物品に関するすべての種類の関税,内国税その他の課徴金及びこれらの税その他の課徴金の徴収の方法並びに通関に関連する規則及び手続について,相互に最恵国待遇を与える。

2 lの規定を適用する場合の物品に関する要件は,各締約国が第三国に最恵国待遇を与える場合の要件と同一のものとする。

3 1の規定は,いずれか一方の締約国が国境貿易を容易にするため隣接国に与える特別の利益には適用しない。

    第二条

 各締約国は,一時的にその領域に持ち込まれ,かつ,その領域から持ち出される他方の締約国の次の物品に対し,関係国内法令に従い,関税,内国税その他の課徴金の免除に関して最恵国待遇を与える。

 (1)商品見本(ただし,貿易慣例上一般に商品見本として通用する数量に限る。)

 (2)試験用及び実験用の物品

 (3)展覧会,見本市及び共進会に出品される物品

 (4)組立工が設備の組立て及び取付けに用いる器具

 (5)加工され又は修理される物品及び加工又は修理に必要な材料

 (6)輸出され又は輸入される貨物の容器

    第三条

 いずれの一方の締約国も,他方の締約国の物品が当該一方の締約国の領域を通過して第三国の領域に運送される際,通過に関連するすべての種類の関税,内国税その他の課徴金並びに規則及び手続に関し,当該運送中の物品に対し,最恵国待遇を与える。

    第四条

1 両締約国間のすべての支払は,それぞれの締約国の外国為替菅理に関する法律,規則及び命令に従い,日本円,人民幣又は両国において認められている交換可能な通貨で行うものとする。

2 両締約国は,1に規定する日本円又は人民幣による支払が行われる際,両国の関係銀行間の決済業務に関する取極が,それぞれの締約国の関係法令に従つて,有効に運用されることを歓迎する。

3 いずれの一方の締約国の法人(外国貿易機構を含む。)及び自然人も,両締約国の領域の間における支払,送金及び資金又は金銭証券の移転に関して,並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払,送金及び資金又は金銭証券の移転に関して,いかなる第三国の法人(外国貿易機構を含む。)及び自然人に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

    第五条

 両締約国間の貿易は,日本国の法令に基づき外国貿易を行うことができる法人又は自然人と中華人民共和国の法令に基づき外国貿易を行うことができる外国貿易機構との間で平等互恵の原則に従い,かつ,適正な国際市場価格を基礎として締結される契約に基づいて行われるものとする。

    第六条

 両締約国は,両国間の経済貿易関係を一層発展させるため,平等互恵の原則に従い,産業に関する技術交流を積極的に促進する。

    第七条

 両締約国は,両国の間で相互に貿易に関連する展覧会が開催されることを奨励する。各締約国は,自国におけるそれらの展覧会の開催につき,関係国内法令に従い,できる限りの支持を与える。

    第八条

1 両締約国は,日本国の法人又は自然人と中華人民共和国の外国貿易機構との間に締結された商事契約から又はこれに関連して生ずる紛争については,まず当事者間で友好的な協議によつて解決するよう奨励するものとする。

2 紛争を協議によつて解決することができない場合には,当事者は,仲裁条項に基づき,仲裁に付することができる。仲裁条項は,契約の双方の当事者により,契約自体に又は契約に関連する別個の約定に規定される。

3 両締約国は,当事者による両国の仲裁機関の利用をあらゆる可能な方法によつて奨励するものとする。

4 両締約国は,仲裁判断について,その執行が求められる国の法律が定める条件に従い,関係機関によつて,これを執行する義務を負う。

    第九条

 両締約国は,この協定の実施状況及び両国間の貿易に関連する問題の検討(両国間の貿易関係の見通しについての意見交換を含む。)を行うこと及び,必要な場合には,両締約国の政府に対し適当な勧告を行うことを目的として,両締約国の政府の代表から成る混合委員会を設置する。混合委員会は,少なくとも毎年一回,東京又は北京で交互に会合する。

    第十条

l この協定は,その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日から三十日目の日に効力を生ずる。この協定は,三年間効力を有するものとし,その後は,2の規定に定めるところによつて終了するまて効力を存続する。

2 いずれの一方の締約国も,三箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより,最初の三年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。

 千九百七十四年一月五日に北京で,ひとしく正文である日本語及ぴ中国語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために

   大平正芳

 中華人民共和国政府のために

   姫鵬飛