データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中航空協定調印に際しての大平外務大臣談話

[場所] 
[年月日] 1974年4月20日
[出典] 日中関係基本資料集、470−471頁.
[備考] 
[全文]

 一 本日、日本国と中華人民共和国との間の航空運送協定が北京において小川大使と姫鵬飛外交部長との間で署名された。御承知の通り、本件協定は一九七二年九月二十九日に発出された日中両国政府の共同声明第九項の各種実務協定の一つであり、日中共同声明の具体化として日中友好関係の強化に資するのみならず、ここ数年来、顕著な増大をみせている日中間の人的および物的交流の一層の増進に役立つものと考える。また日中航空協定によって日中間の航空路が開設されることは世界の航空路網に一つの大きな幹線を与えることになり、その国際的意義も少なくないと考える。

 一 同協定は両国の指定航空企業が特定路線上において航空業務を運営する権利の相互許与、航空機の使用する燃料などに関する関税の免除、事故の際の救援措置、証明書の相互承認など技術的事項を取り決めた本文と、路線および地点を取り決めた付属書とからなっており、形式内容面で日本と第三国とが結んでいる航空協定と本質的相違はない。

 一 他方、本協定の締結をめぐって日台路線の取り扱いの問題があったことはご承知の通りである。日本政府としては日台路線を維持することが肝要と考え、このため中華人民共和国の理解を求めることに極力、努力したしだいである。一方、日本政府としては日台路線の維持にあたり、これが新しい日中関係と矛盾しないことが大切であると考えている。日本と台湾との間の航空関係については、かつて存在した航空業務に関する交換公文が一九七二年九月二十九日の日中国交正常化の結果として失効した。日本国政府としては民間取り決めを通じてこれを維持していく方針である。

 一 このことに関連して日本国政府は中華人民共和国に対して表明した見解として次の点を明らかにする。

 一 日本国と中華人民共和国との間の航空運送協定は国家間の協定で、日台間は地域的な民間の航空往来である。日本国政府としては日中両国の共同声明に基づき、同声明発出の日以降、台湾の航空機にある旗の標識をいわゆる国旗を示すものと認めていないし、「中華航空公司(台湾)」を国家を代表する航空会社としては認めていない。

 一 今回の日中航空協定の締結により、新たな日中航空路が開設されることはまことに喜ばしい。同時に日台路線は日台間の交流を維持するため、安定した基礎のうえに将来とも確保していく決意である。