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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中漁業協定(日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定)

[場所] 東京
[年月日] 1975年8月15日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),810−812頁.官報.50.12.22.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及び中華人民共和国は,

 千九百七十二年九月二十九日に北京で発出された両国政府の共同声明に基づき,

 黄海・東海の漁業資源を保存し及び合理的に利用するため並びに海上における正常な操業の秩序を維持するため,

 友好的な協議を経て,

 次のとおり協定した。

    第一条

1 この協定が適用される水域(以下「協定水域」という。)は,次に規定する黄海・東海の水域(領海部分を除く。)とする。

(1)次に掲げる各点を結ぶ直線以東

 (i)北緯三十九度四十五分,東経百二十四度九分十二秒の点

 (ii)北緯三十七度二十分,東経百二十三度三分の点

(2)次に掲げる各点を順次に直線で結ぶ線以東

 (i)北緯三十七度二十分,東経百二十三度三分の点

 (ii)北緯三十六度四十八分十秒,東経百二十二度四十四分三十秒の点

 (iii)北緯三十五度十一分,東経百二十度三十八分の点

 (iv)北緯三十度四十四分,東経百二十三度二十五分の点

 (v)北緯二十九度,東経百二十二度四十五分の点

 (vi)北緯二十七度三十分,東経百二十一度三十分の点

 (vii)北緯二十七度,東経百二十一度十分の点

(3)北緯二十七度の線以北

2 この協定のいかなる規定も,海洋に関する管轄権についての両締約国のそれぞれの立場を害するものとみなしてはならない。

    第二条

 両締約国は,漁業資源を保存し及び合理的に利用するため,協定水域における機船による漁業に関し,この協定の附属書Iに規定する措置をとる。

    第三条

1 いずれの一方の締約国も,自国の機船がこの協定の附属書Iの規定を誠実に遵守することを確保するため及び違反事件の発生を防止するため,自国の機船に対して適切な指導及び監督を行い,並びに違反事件を処理する。

2 いずれの一方の締約国も,他方の締約国に対し,当該地方の締約国の機船がこの協定の附属書Iの規定に違反した事実及び状況を通報することができる。当該他方の締約国は,当該一方の締約国に対し,違反事件の処理の結果を速やかに通報する。

3 協定水域において操業する両締約国の機船は,この協定の実施を確保するため,相互に協力するものとする。

    第四条

 両締約国は,それぞれ,自国の関係漁民及び機船に対し,航行及び操業の安全,正常な操業の秩序の維持並びに海上における事故の円滑かつ迅速な処理のため,指導その他の必要な処置をとる。

    第五条

1 いずれか一方の締約国の漁船が他方の締約国の沿岸において海難その他の緊急事態に遭遇した場合には,当該他方の締約国は,当該漁船及びその乗組員に対し,できる限りの援助及び保護を与えるとともに,最も迅速な方法により,当該一方の締約国の関係当局にこれらに関する状況を通報する。

2 いずれの一方の締約国の漁船も,荒天その他の緊急事態のため避難する必要がある場合には,他方の締約国の関係当局に連絡した後,指定された港等に赴き避難することができる。当該漁船は,この協定の附属書IIの規定に従うとともに,当該他方の締約国の関係法規及び指示に従わなければならない。

    第六条

1 両締約国は,この協定の目的を達成するため,日中漁業共同委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は,両締約国の政府がそれぞれ三人ずつ任命する委員で構成する。

2 委員会のすべての決議,勧告その他の決定は,出席する双方の委員の合意によってのみ行う。

3 委員会は,毎年一回東京又は北京で交互に会合する。委員会は,また,必要に応じ,両締約国の間の合意により臨時に会合することができる。

4 委員会の任務は,次のとおりとする。

(1)この協定の実施状況につき検討する。

(2)必要に応じ,この協定の附属書の修正に関し,両締約国に勧告する。

(3)漁業に関する資料を交換し,及び協定水域における漁業資源の状態につき検討する。

(4)そのほか,必要に応じ,協定水域における漁業資源の保存その他の関連する問題につき検討し,及び両締約国に勧告することができる。

    第七条

1 この協定の附属書(2の規定に従つて修正された後の附属書を含む。)は,この協定を構成する不可分の一部とする。

2 両締約国政府は,前条4(2)の規定に従つて委員会が行つた勧告を受諾する旨の公文の交換によりこの協定の附属書を修正することができる。

    第八条

1 この協定は,その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日に効力を生ずる。この協定は,三年間効力を有するものとし,その後は,2の規定に定めるところによって終了するまで効力を存続する。

2 いずれの一方の締約国も,三箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより,最初の三年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。

 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けて,この協定に署名した。

 千九百七十五年八月十五日に東京で,ひとしく正文である日本語及び中国語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために

   宮澤喜一

 中華人民共和国政府のために

   陳  楚

(編注)附属書I,II,および交換公文は省略した。