データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 台湾関係法

[場所] 
[年月日] 1979年4月10日
[出典] 日中関係基本資料集,880‐887頁.
[備考] 
[全文]

  略称

 第一条 この法律は「台湾関係法」と略称される。

  諸決定と政策表明

 第二条 A項 大統領が、一九七九年一月一日以前に中華民国として合衆国により承認されていた台湾の統治当局と合衆国との政府関係を停止したことに伴い、議会は以下のためにこの法律の実施を必要と考える。

 (1)、西太平洋における平和、安全および安定の確保に協力し、

 (2)、合衆国人民と台湾人民間の通商、文化その他の諸関係の継続を承認することにより合衆国の外交政策を促進する。

 B項 合衆国の政策は以下の通り。

 (1)、合衆国人民と台湾人民との間および中国大陸人民や西太平洋地区の他のあらゆる人民との間の広範かつ緊密で友好的な通商、文化およびその他の諸関係を維持し、促進する。

 (2)、同地域の平和と安定は、合衆国の政治、安全保障および経済的利益に合致し、国際的な関心事でもあることを宣言する。

 (3)、合衆国の中華人民共和国との外交関係樹立の決定は、台湾の将来が平和的手段によって決定されるとの期待にもとづくものであることを明確に表明する。

 (4)、平和手段以外によって台湾の将来を決定しようとする試みは、ボイコット、封鎖を含むいかなるものであれ、西太平洋地域の平和と安全に対する脅威であり、合衆国の重大関心事と考える。

 (5)、防御的な性格の兵器を台湾に供給する。

 (6)、台湾人民の安全または社会、経済の制度に危害を与えるいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる合衆国の能力を維持する。

 C項 本法律に含まれるいかなる条項も、人権、特に約一千八百万人の台湾全住民の人権に対する合衆国の利益に反してはならない。台湾のすべての人民の人権の維持と向上が、合衆国の目標であることをここに再び宣言する。 

  台湾に関する合衆国の政策

 第三条 A項 本法律の第二条に定められた政策を促進するため、合衆国は、十分な自衛能力の維持を可能ならしめるに必要な数量の防御的な器材および役務を台湾に供与する。

 B項 大統領と議会は、台湾の需要に関するおのおのの判断にのみもとづき、また法の定めた手続きに従って、このような防御的な器材および役務の性格と数量を決定しなければならない。このような台湾の防衛需要に関する決定は、大統領と議会に提出される合衆国軍部当局の勧告によって示される評価を含めなければならない。

 C項 大統領は、台湾人民の安全や社会、経済制度に対するいかなる脅威ならびにこれによって米国の利益に対して引き起こされるいかな危険についても、直ちに議会に通告するよう指示される。大統領と議会は、憲法の定める手続きに従い、この種のいかなる危険にも対抗するため、とるべき適切な行動決定しなけれぱならない。

  法の適用・・国際的協定

 第四条 A項 外交関係と承認がなくても合衆国の法律の台湾への適用には影響を及ぼさず、また合衆国の法律は一九七九年一月一日以前と同様に台湾に適用されなければならない。

 B項 本条A項の適用は、次の各号を含み、かつこれに限定されてはならない。

 (1)、合衆国の法律が外国の国、国家、州、政府および類似の存在に言及し、関係する場合は、必ずその条文は台湾を含み、法律は台湾に適用されなければならない。

 (2)、合衆国の法律により権限を付与され、またはそれに準拠して外国の国、国家、州、政府および類似の存在と計画、通商、その他の関係を推進、実施する際には、常に大統領または合衆国のいかなる政府機関も、本法律の第六条にもとづき、また合衆国の該当する法律にもとづき台湾と同様の計画、通商、その他の関係を推進、実施する権限を付与される(これには台湾の商業法人の契約を通じて合衆国に供与されるサービス業務を含み、またこれのみに限定されない)。

 (3)、a項 台湾について外交関係や承認がないことは、合衆国の法律によって、これまでまたは今後、台湾により獲得されたり台湾に関して定められたいかなる権利や義務(これにはあらゆる契約、債務、財産権に関する権利、義務を含み、それに限定されない)に対して決して廃止、侵害、修改、否定または影響を与えるものではない。

 b項 合衆国のすべての法廷における訴訟事項を含む合衆国の法律にもとづくあらゆる目的のため、中華人民共和国承認が、台湾の統治当局が一九七八年十二月三十一日当日、またはそれ以前に保有または所持し、またはそれ以後に獲得、または入手した有形無形の財産所有権その他の諸権利、または利益ならびにその他の価値ある事物の所有権を決して侵すものではない。

 (4)、合衆国の法律の適用が、台湾において現に適用されまたは過去に適用された法律、またはこれに準ずるものに依拠する場合には、常に台湾の人民によって適用される法律がその目的に適合する法律と見なされなければならない。

 (5)、本法律のいかなる条項も、また大統領の中華人民共和国に対して外交的承認を与える行為も、台湾の人民と合衆国との間に外交関係が存在せず、合衆国による承認が欠けていること、およびそれに伴う状況をもって、合衆国政府の機関、委員会、省庁などが行政または司法手続きにおいて一九五四年度原子力エネルギー法や、一九七八年度核拡散防止法にもとづく事実認定や法的裁定を行い、台湾に対する輸出許可申請を却下したり、すでに与えられた原子力関係の輸出許可を取り消したりする根拠と解釈するようなことがあってはならない。

 (6)、移民および国籍に関する法律の諸目的に照らして、台湾は同法の第二〇二条b項の最初の文言の規定の通りに取り扱うことができる。

 (7)、台湾が合衆国の法廷において、合衆国の法律にのっとって行われる訴訟の原告または被告となる資格は、外交関係や承認がないことによって廃止、侵害、修改、否定またはその他の形で影響を受けるようなことは決してあってはならない。

 (8)、外交関係の維持または承認に関する合衆国の法律は、明記または暗示のいずれを問わず、いかなる条件をも台湾に適用すべきではない。

 C項 合衆国のすべての法廷における訴訟を含むすべての目的のために、議会は、一九七九年一月一日以前に合衆国と、中華民国として合衆国によって承認されていた台湾の統治当局の間で締結され、また一九七八年十二月三十一日に両者の間で有効であった一切の条約および国際協定は多国間協定を含めて、法律に従って終止しない限り、その時まで引き続き有効と認める。

 D項 本法律のいかなる条項も、台湾をいかなる国際金融機構またはその他の国際組織における継続的加盟権からの排斥または放逐を支持する根拠と解釈されてはならない。

  海外民間投資協会

  第五条 A項 本法律の発効後三年間は、一九六一年度対外援助法第二三一条第二項第二号に規定される一人当り国民所得一千ドルの制限が台湾における投資計画に対する保険、再保険、借款または保証を供与すべきかどうかを判定する海外民間投資協会の活動を制約するものとなってはならない。

 B項 本条A項に規定する台湾における投資計画に対する保険、再保険、借款または保証のほか、海外民間投資協会は、世界各地で適用しているのと同一基準を適用しなければならない。

  米国在台協会

 第六条 A項 大統領また合衆国政府のいずれの機関により管理または実施される台湾に関する計画、通商およびその他の関係は、大統領の指示する方式と範囲において、次の機構により、またはこれを通じて管理・実施されなければならない。

 (1)、米国在台協会ーコロンビア特別区の法律にもとづいて設立された非営利法人。

 (2)、大統領の指定する類似の非政府的継承機関(以下本法律では「協会」と呼ぶ)。

 B項 大統領または合衆国のいかなる機関が、合衆国の法律による権限付与、要求または規定の下で、台湾に関係する協定または取り決めを締結し、履行し、推進し、実施するときは、このような協定や取り決めは常に大統領の指示する方式と範囲において、協会により、またはこれを通じて締結、履行、推進されなければならない。

 C項 協会が設立され業務を行っているコロンビア特別区またはいずれかの州またはその下級行政機構の法律、法令、規則、条例などが、本法律にもとづく協会の活動や機能を阻害し、干渉する場合には、本法律がこのような法律、法令、規則、条例より優先されなければならない。

  協会の在台米人に対する業務

 第七条 A項 協会はその在台職員に次の権限を付与することができる。

 (1)、いかなる人についても、宣誓、無宣誓供述、宣誓供述書、宣誓証書の供与についてこれを監督し、要求しうる。また合衆国内で法律によって公証人に要請され、授権されている公証行為を行うことができる。

 (2)、死亡した合衆国公民の私有財産の臨時管財人としての行為。

 (3)、大統領が指定する合衆国の法律にもとづき、合衆国外で領事目的で執行するよう授権された他の行為により合衆国公民の利益を援助し、保護する。

 B項 本条にもとづき協会が授権した職員の行った行為は、合衆国の法律の下で授権された他の人々の行為と同様に有効であり、合衆国内においても同等の効力を有する。

  協会の免税地位

 第八条 A項 協会の財産と収入は、現在または今後、合衆国あるいは合衆国のいかなる州または地方税当局が規定するすべての税金の納付から免除される(ただし本法第一一条A項(3)が言及する一九五四年国税法第二一条にもとづく連邦保険法の規定する課税を除く)。

 B項 一九五四年国税法において、協会は以下の各条項に述べられている機構とみなされる。一七〇条b項(1)A、同条c項、第二〇五五条a項、第二一〇六条a項(2)A、第二五二二条a項および第二五二二条b項。

 協会に与えられる財産とサービスおよび協会から得られるサービス

 第九条 A項 いずれの合衆国政府機関も大統領が規定する約定と条件の下で、協会に対し、財産(利子を含む)を売却、貸借、賃貸し、その業務に対して行政的、技術的支援またはサービスを提供する権限を持つ。本項の規定にもとづく各機関への償還は、関係機関が現に使用できる経費の中に組み入れられなければならない。

 B項 いずれの合衆国政府機関も大統領が規定する約定と条件の下で、協会の提供するサービスを受け入れる権利を与えられている。大統領が本法律の目的を助成するものと判断した時はいつでも、これらの機関は協会からのサービス供与について、通常このような場合に適用される合衆国法律のこれらの機関が受け入れるサービスについての規定を顧慮する必要がない。これについては大統領が行政命令により指定することができる。

 C項 本法にもとづいて協会に資金を供与するいずれの合衆国政府機関も、協会と取り決めを行い、合衆国会計検査局が協会の帳簿と記録を検査し、協会の業務を監督する段取りを整えなければならない。

  台湾の機構

 第十条 A項 大統領または合衆国政府のいずれかの機関が、合衆国の法律にもとづき、台湾に何らかの行動、通信、保証、担保、その他の行為を提供し、供与し、または台湾から受け取り、受容した場合には、常にこのような行為は、大統領の指示する方式と範囲において、台湾が設立した機構に対しても提供し、供与され、また受け取り、受容されなければならない。なお台湾のこの機構について大統領は、これが台湾人民に適用される法律にもとづいて台湾を代表して本法律の求める保証や他の行動を提供するに必要な権限を持っていることを確認しなければならない。

 B項 大統領は台湾によって設立される機関に対して、一九七九年一月一日以前に中華民国として承認されていた台湾の統治当局が合衆国内で保有していたと同数の事務所および職員定数を認めるよう要求される。

 C項 台湾が協会とその正規職員に付与する特権と免責権にもとづき、大統領は台湾の機構とその正規職員に対しても、機能が有効に発揮されるのに必要な相対応する特権と免責権(適宜な条件と義務を伴う)を付与する権限を有する。

  協会での雇用のための政府職員の分離

 第十一条 A項 (1)、大統領の指示する契約と条件に従い、合衆国政府各機関は、協会における職務を受け入れた職員または雇員に対して、一定期間政府の職務からの離任を認めなければならない。

 (2)、協会における職務に関する本条第一項の規定により政府機関を離任した職員または雇員は、協会での雇用終了後、当該機関(または引き継ぎ部門)に再雇用または役職復帰の権利を有する。その場合大統領の指示する期間、その他の条件によりこれら職員と雇員は、彼または彼女が協会に出向しなかった場合に得られ、獲得したと思われる付随的な権利、特権および利益をもって適切な役職に復帰するものとする。

 (3)、本条第二項の規定により、再雇用または役職復帰の権利を有する職員、雇員は、協会での雇用期間中、中断することなく、前任機関で加入したあらゆる福利計画に継続加入でき、これには公務による死亡、負傷、疾病の補償、健康および生命の保険、年次休暇、病気休暇およびその他の法定休暇および合衆国の法律によって定められたすべての引退計画が含まれる。ただし協会での雇用がこのような福利計画への加入の根拠となるのは、協会での雇用期間中、こうした計画加入のために必要とされる支払いが、被雇用者の給与からの控除または雇用主の分担金としてその計画または制度の基金や金庫に納入されている程度による。認可を受けて協会在職中および元部門に復帰前の死亡、引退は、公職在任中の死亡、引退とみなされ、本人またはその家族は合衆国政府機関への服務を理由として得られる待遇を受けられる。

 (4)、合衆国政府機関の職員または雇員で、本法制定前に、許可を得て休暇をとり、協会に勤務し、俸給をまだ受けていないものはすべてその勤労期間中、本条の定める諸利益を受けることができる。

 B項 合衆国政府のいずれの機関も、台湾で雇用している外国人について、その当人に付随する手当、年金および諸権利と共に協会に転勤させることができる。その際、合衆国の法律によって設立され、当該外国人が協会に転勤される以前に加入していた被雇用者の引退のためのすべての制度への継続的加入を含め、引退および他の年金を目的とする服務期間に断絶がないよう取り扱う。ただし協会による雇用が引退制度に有効なのは、被雇用者の給与からの控除や雇用者による分担金が協会での雇用期間中こうした制度への加入に必要なだけ、制度の基金や金庫に納入されている程度による。

 C項 協会の雇員は合衆国の雇員ではなく、協会を代表するに際して、合衆国法典第十八条二〇七項の約束を免除される。

 D項 (1)、一九五四年国税法第九一一、九一三条の規定により、協会が雇員に支給する給与は営利所得とはみなさない。協会雇員が受領した給与は所得総額に含めず、その額が合衆国政府の文官や雇員が同法第九一二条に規定する免税額として認められる手当や福利の最高額を越えない限りは課税を免除される。

 (2)、本条A項(3)に規定する範囲を除き、協会雇用期間の勤務は、同法第二十一条および社会保障法第二条の規定する雇用とは扱われない。

 第十二条 A項 国務長官は協会が一方の当事者となったあらゆる協定の全文を議会に送付しなければならない。ただしこれらの協定を直ちに公表することは、合衆国の安全保障に有害であると大統領が認めた場合には、そのように議会に送付してはならず、大統領からの然るべき通告を待って初めて解除されるとの適切な機密保持の勧告付きで上院外交委員会および下院国際関係委員会にのみ送付されなければならない。

 B項 A項にいう「協定」とは以下のものを含む。

 (1)、協会と台湾統治当局、あるいは台湾が設置した機構との間に締結されたすべての協定。

 (2)、協会と合衆国政府のいずれかの機関が締結したすべての協定。

 C項 協会が行い、または行おうとし、あるいは協会を経由して行われる協定や契約は、これらが協会によって合衆国政府機関を代行して行われるものと同一視され、議会による通告、検討、承認という要件と手続きを踏まなければならない。

 D項 本法の発効日から二年間、国務長官は六カ月ごとに合衆国と台湾の経済関係を叙述し、検討した報告書を下院議長および上院外交委員会に送付し、通常の通商関係に関するいかなる干渉についても明らかにしなければならない。

  規則と規定

 第十三条 大統領は本法律の施行に適当と認められる規則と規定を定める権限を与えられる。本法律の発効後三年間に、これら規則と規定は速やかに下院議長および上院外交委員会に送付されなければならない。しかしこれらの行為は、本法によって協会に課せられた各種の責任を解除するものではない。

  議会による監督

 第十四条 A項 下院国際関係委員会、上院外交委員会および議会の他の適切な各委員会は以下の事項につき監督しなければならない。

 (1)、本法律の各条項の施行。

 (2)、協会の業務と手続き。

 (3)、合衆国と台湾の継続的関係の法的、技術的諸側面。

 (4)、合衆国の東アジアにおける安全保障と協力に関する政策の実施。

 B項 上述の各委員会は適宜その監督結果をそれぞれの所属する上・下院に報告しなければならない。

  定義 

 第十五条 本法律においては各種用語を以下のように定義する。

 (1)、「合衆国の法律」とは、あらゆる成文法、法令、規則、条例、命令または合衆国および政治的下部機構の司法判例を含む。

 (2)、「台湾」とは文脈により、台湾本島および澎湖島、これら島嶼上の人民、これら島嶼に適用される各種法律によって設立または組織された法人その他の実体や団体および一九七九年一月一日以前に合衆国が中華民国として承認していた台湾の統治当局およびその統治当局の継承者(これには政治的下部機構、機関、実体組織などを含む)。

  支出権限の承認 

 第十六条 本法律の条項を実施するために利用できる他の資金に加えて、一九八○会計年度内において、これらの条項を実施する上で必要な経費の支出権限を国務長官に付与する。これらの経費は実際に使用されるまで利用可能の権限を付与されている。

  条項の分離性 

 第十七条 本法律のいずれかの条項またはその一定の個人または状況に対する適用が無効と認められた場合でも、本法律の残余の部分および当該条項の他の個人または状況に対する適用は、それによって影響を被ってはならない。

  発効日

 第十八条 本法律は一九七九年一月一日付けで発効する。

一九七九年四月十日 承認