[文書名] 大平総理大臣の中国訪問に関する共同新聞発表
1.大平正芳日本国総理大臣は,華国鋒中華人民共和国国務院総理の招請に応じて,夫人とともに1979年12月5日から9日までの予定で中華人民共和国を公式訪問中である。大平総理大臣には,大来佐武郎外務大臣他が随行している。大平総理大臣一行は,中国滞在中西安を訪問する。
2.大平総理大臣は,12月5日と6日の両日,華総理と会談し,日中両国が共通の関心を有する広範な問題につき率直かつ建設的な意見交換を行つた。
会談には,日本側から大来外務大臣他,中国側から谷牧副総理,黄華外交部長他が同席した。これらの会談は,極めて友好的な雰囲気の下に行われた。両国首脳は,これらの会談が日中両国間の平和友好関係を更に増進する上で大きな貢献をしたことに対し満足の意を表明した。
3.大平総理大臣は,また,12月6日●{トウ}小平副総理と会談した。
4.両国首脳は,国際情勢,なかんずくアジア太平洋地域の情勢につき率直かつ真剣な意見交換を行い,これらの地域における平和と安定の維持・確保に対する深い関心を確認し,日中両国がそれぞれの立場からアジア及び世界の平和と安定の維持・確保のため引き続き努力することを確認した。
5.両国首脳は,日中関係全般に関し意見交換を行つた。両国首脳は,1972年秋の国交正常化以来,両国間の平和友好関係が日中共同声明の原則と精神に則り順調に発展してきたことに対し深い満足の意を表した。両国首脳は昨年両国が締結した平和友好条約が両国の共通の利益であるのみならず,アジア及び世界の平和と安定に資するものであることを認め,両国が日中共同声明及び日中平和友好条約に基づき永きにわたる平和友好関係を堅実に維持し発展させていくことを確認した。
6.両国首脳は,日中両国国民の間の相互理解と相互信頼を一層深めるため両国間の体制の相違にもかかわらず,今後とも両国間の交流をあらゆるレベルで一層促進することの必要性を強調した。
7.華総理は,大平総理大臣に対し,中国の経済建設の方針を説明し,この経済建設を促進するため日本及びその他の諸国との経済協力を強めたい旨希望を表明した。
大平総理大臣は,華総理に対し,中国が経済建設を進めるに当たつて諸外国との協力を強めることに歓迎の意を表した。更に,大平総理大臣は,日本の経済協力の基本方針を説明し,日本政府としては,中国の希望に応え,積極的に協力を行う用意がある旨表明した。
8.大平総理大臣は,中国が近代化建設において高い優先度を与えている「石臼所港建設計画」,「●州・石臼所間鉄道建設計画」,「北京・秦皇島間鉄道拡充計画」,「広州・衡陽間鉄道拡充計画」,「秦皇島港拡充計画」及び「五強溪水力発電所建設計画」に対し,日本国政府としてできる限り協力を行う意図がある旨述べるとともに,1979年度分として500億円までの円借款が供与されるよう協力する意図がある旨述べた。
両国首脳は,1980年度以降の本件協力については,両国政府が実務者間の会議を毎年1回開催し,プロジェクトの調査,計画等の進歩状況,日本の財政事情等を勘案のうえ協議することにつき意見の一致をみた。
大平総理大臣は,北京市近代病院建設計画に対しても,日本国政府が積極的に協力を行う意図がある旨述べるとともに,そのために必要な調査と協議を早急に行うこととする旨述べた。
華総理は,日本側の積極的姿勢を高く評価する旨述べた。
9.両国首脳は,大平総理大臣の中国滞在中に日中文化交流協定が署名されたことに満足の意を表するとともに,更に,科学技術協力協定を締結するため明年の出来るだけ早い時期に交渉を開始することに合意した。
大平総理大臣は,国造りの基礎は人造りにあるとの認識から中国の留学生の日本への受入れを始めとする文化面における協力及び技術協力を積極的に進める旨述べるとともに,特に文化面における協力の一環として,中国における日本語学習を促進するため明年度以降具体的な形で協力する意向を明らかにした。
10.両国首脳は,貿易をはじめとする両国間の経済交流が近年著しく緊密化したことに満足の意をもつて留意し,今後とも平等及び互恵の原則の基礎の上に引続きこのような交流拡大を図ることが両国にとつて共通の利益となることに意見の一致をみた。
大平総理大臣は,中国政府からの要請に応え,日本国政府が開発途上国に対する特恵関税制度を,所要の調整をも加えた上で,1980年4月から中国に対しても適用する方針のもとに国内手続を進めている旨を明らかにした。
11.両国首脳は,両国の資源,エネルギーをめぐる問題に関し意見交換を行い,この分野において日中両国の協力が更に進められることが望ましい旨意見の一致をみるとともに,これに関連し,渤海石油共同開発の交渉が基本的合意に達したことを高く評価した。
12.両国首脳は,政府レベルにおける間断のない接触が両国間の諸般の重要問題の円満なかつ早期の解決に貢献していることを想起し,今後とも両国政府間の対話を強化することに意見の一致をみた。このための方途として両国外相間の随時の協議の他,両国の外交事務当局によるハイレベルの定期協議が毎年1回それぞれの首都において交互に開催されることとなつた。
13.華総理は,日本国政府の招請に応え,1980年5月に日本を公式訪問する。具体的日取りは,今後外交ルートを通じ協議することとする。
14.中国側は,大平総理大臣の訪中が,日中両国間の友好協力関係を進める上に大きな成果を収めたことを高く評価した。
日本側は,大平総理大臣一行の滞在中示された中国側の心からの歓迎と暖かいもてなしに対し深い感謝の意を表明した。