データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「断固我が国の大陸棚の主権権利を守る」と題する人民日報評論員論評要旨

[場所] 
[年月日] 1980年5月8日
[出典] 日中関係基本資料集、547‐548頁.
[備考] 
[全文]

 日本政府は中国政府の幾度もの厳正な声明を無視して、南朝鮮当局とともに五月初めいわゆる「日韓大陸棚共同開発協定」で一方的に画定した「共同開発区」第五区と第七区で石油ボーリング、試掘を始めると決定した。これはいわゆる「日韓大陸棚共同開発協定」「発効」後開発段階に進む実際的な歩みであり、一歩公然と中国の主権を侵犯する重大な行為である。これに対し中国政府は再度声明を発表し断固たる反対の意を表明した。

 いわゆる「日韓大陸棚共同開発協定」は、一九七四年一月日本政府が国内と国際世論および中国政府の激しい反対を顧ず、一方的に南朝鮮当局と調印したものである。一九七七年六月、日本国会はこの「協定」を批准し、一九七八年六月、日本と南朝鮮当局が批准書を相互に交換しこれを「発効」させた。これに対し、中国政府はこれまでたびたび大陸棚は大陸の自然延長部分であるとの原則に基づき、中国は東海大陸棚に対し侵犯を許さぬ主権権利を有すと声明し、再三にわたり、東海大陸棚がその他の国家におよぶ部分の区分問題は、当然中国政府と関係国家の間で共同で協議し確定すべきであると指摘した。しかし、日本政府は、あくまでも一方的な行動をとり、一九七九年三月には一歩進めて南朝鮮当局と「共同開発区」の探査と開発経営方法について「協定」に達し、具体的に実際の開発に突入した。これは中国人民の極めて大きな憤慨を引き起こさないわけにはいかない。

 日本政府はいわゆる「共同開発区」が東海の「中間線」を越えていないことを理由として、中国の主権への侵犯を弁護しているが、これは全く根拠のないことである。周知のごとく、「中間線」は決して海域区分公認の国際法の原則ではない。国際法は、国家間の海域区分問題は協定を結ぶ以前の臨時的措置を含めて関係方面の協議を通じて解決しなければならないと要求している。日本側のいう「中間線」が完全に一方的に画定されたものであり、いかなる法理の根拠も持たないことはいまさらいうにおよばない。日本政府のこのような弁解は、中国の主権侵犯の実質を覆い隠すことの助けにはならない。

 中国政府の七日声明は再度次のように指摘している。中国政府はわが国の主権と重要な利益を侵犯する行動を黙視するわけにはいかない。いかなる国家および私人も同「協定」が一方的に画定したいわゆる「共同開発区」内で開発活動を勝手に、あるいは共同で進めるなら、これによって生ずる一切の結果について責任を負わねばならない。中国政府は同区域に対する一切の当然の権利を留保する。

 これは中国人民の国家主権と海洋権益を守る断固たる決意を表している。

 中日両国は一衣帯水の友好善隣国である。両国政府は一九七二年中日国交正常化を実現し、続いて一九七八年には平和友好条約を締結し、両国間に広範な分野で友好協力の洋々たる道を開いた。東海大陸棚開発という国家主権に関する重大問題については、日本政府は当然中国と十分に協議を行うべきで、一方的に事を進めるべきではない。このような中国の主権を損なう行為は、両国人民の根本的な利益にも合致しない。われわれは日本政府と関係方面が中国政府声明の厳正な立場に対して、真剣に対処し慎重に考慮し両国の友好関係に不利となることをしないよう要求する。